一鍼堂(いっしんどう) 大阪心斎橋本院

疾患別解説

酒さ鼻の東洋医学解説


頬と鼻の皮膚が紅潮し、
自覚的にチクチクとした痛みを生じる。
皮膚は赤く腫れたように見え、
小さな吹き出物や膿が出ることもある皮膚疾患である。


◎東洋医学における酒さ鼻


◉概要
東洋医学では「紅鼻(こうび)」と記し、
時代によっては「皶(さ)」「酒皶鼻(しゅさび)」や「赤鼻」と記す。

◉古典に見る酒さ鼻
歴代の医家達は、
この病をどの様に考えていたのかを見てみましょう。

・『黄帝内経 素問(こうていだいけい そもん)
生気通天論(せいきつうてんろん)
「労汗当風、寒薄為皶、鬱之痤。」

(「労働で汗が出て風に当たると、
寒気が皮膚に迫り、しばし丘疹を発症させる。
この鬱積が長期になると、*癤癰(せつよう)となる。」)

*癤(せつ):体表部に発生する、6㎝以下に範囲が限定された化膿性疾患。
 癰(よう):邪気が滞ることで経脈・気血を塞ぎ、
      その結果局部に腐乱・化膿が起こる疾患。

巣 元方(そう げんぽう)諸病源候論(しょびょうげんこうろん)
「此由飲酒、熱勢衛面、而遇風冷之気相打所生、
故令鼻面生皶、赤疱匝匝然也。」

(「これは飲酒によるものであり、熱勢は面を衝き、
風冷の気に遇って生じる。
それが故に鼻面に丘疹を生じ、赤い疱を多く出す。」)

祁坤(きこん)外科大成(げかたいせい)
「酒皶鼻者、先由肺経血熱内蒸、次遇風寒外束、血瘀凝滞而成。」

(「酒皶鼻は、先ず肺経で血熱が内を蒸し、その上風寒の邪が表を束縛し、
その結果血が滞り凝結し発生する。」)

・『医宗金鑑(いそうきんかん)
「胃火薫肺外受寒血凝、初紅久紫黒」

(「胃火が肺を蒸し、外は寒を受け血が凝滞する。初めは紅く長引くと紫黒を呈す。」)

◉現代の東洋医学(現代中医学)での原因と治療方法

肺胃積熱(はいいせきねつ)
普段から過度の飲酒や辛い物の食べ過ぎが原因で
胃に熱が蓄積し、その熱が肺を蒸し、
東洋医学で肺の門戸として考える鼻に発症する。

【症状の特徴】
鼻先の紅潮や充血・口や鼻の乾燥・便秘等

【治法】
清熱涼血(せいねつりょうけつ:寒涼薬を用いて、火熱を除く治療。)

温熱蘊結(うんねつうんけつ)
肺胃積熱同様、
肺胃に熱が蓄積し、そこに温邪(うんじゃ)を受けたもの。

【症状の特徴】
鼻先の紅潮や痛み・膿が出る・鼻周囲に発赤や痛み・鼻の熱感等

【治法】
清熱涼血・解毒
(せいねつりょうけつ・げどく:寒涼薬を用いて火熱を除き、
 同時に温邪も取り除く。)

気滞血瘀(きたいけつお)
飲食不摂生や過度のストレス、睡眠不足等で
臓腑(ぞうふ:内臓)に熱が籠もり、
尚且つその体の状況で寒邪(かんじゃ)を受けてしまい、
気血の流れが凝滞し発生したもの。

【症状の特徴】
鼻先が暗紅色・腫れが肥大化・結節(けっせつ:塊)が増える等

【治法】
活血化瘀(かっけつかお:血を活発にして瘀血を除く。)



◎西洋医学における酒さ鼻

◉概要
鼻や頬の毛細血管が拡張して赤く見える皮膚疾患であり、
俗に「赤ら顔」や「赤鼻」と呼ばれている。
鼻が赤くなるものから、
鼻に丘疹ができ痛みを伴う、膿がでる等があり、
症状により第Ⅰ~3度に分類されている。

一般的に白人に多いとされるが、
日本人でも中高年の人に多くはみられる。

・1度
鼻先が赤くなる程度で、
患者によっては頬も赤く光沢を帯びてくるが、
赤みが消える事もある。

・2度
丘疹ができ、ニキビのようなブツブツが出てくる。

・3度
腫瘤ができ、2度でみられるブツブツがコブの様になる。

◉原因
未だハッキリとした原因は解明されていない。
ただ白人に多くみられるということから日光の影響(紫外線)や、
・皮膚表面の免疫異常
・毛穴に生息するダニ
・過度の飲酒、辛い物の食べ過ぎ
・ストレス
これらが原因しているのではと指摘されている。

◉治療方法
原因がハッキリしていないこともあるが、
基本的には
・塗り薬
・服薬
・レーザー治療
というものとなる。
最近では、
漢方治療を行う医療機関も増えてきているようである。

〔記事〕下野
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[参考文献]
『中医弁証学』
『中医学の基礎』
『中医病因病機学』
『中医基本用語辞典』
『現代語訳◉黄帝内経素問 上巻』 東洋学術出版社

『校釈 諸病源候論』 緑書房

『基礎中医学』
『症状による 中医診断と治療』 燎原書店

『素問考注(附四時経考注)上』 学苑出版

『中国医学事典 基礎篇』 たにぐち書店

『最新 医学大事典』 医歯薬出版株式会社

『専門医でも聞きたい皮膚科診療100の質問 』 メディカルレビュー社

 

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