がんの東洋医学解説はじめに
西洋医学のがんの解釈として
正常な細胞が遺伝子レベルで損傷を受け、その修復がなされずに、
異常な状態のまま増殖し続けたものが「がん細胞」となります。
人間の身体には、
増えすぎた細胞や不要になった細胞、修復が困難な細胞に対して、
自然に消滅へと導く作用があります。
その作用が正常に働いている場合は、
がん細胞などの異常な細胞の増殖を抑えることが出来ると考えられています。
何度も遺伝子が損傷し、不完全な状態のままで、
さらに増殖を繰り返していくと「がん細胞」になり、
またそれらが塊りとなり腫瘍となると
周りの組織へ浸潤し、血管を通して他の臓器や部位に転移していきます。
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東洋医学的解説がんの存在は、古典の中にも見ることができます。
「治卒暴症、腹中有物如石、痛如刺、昼夜啼呼、不治之百日死」 和訳:急に発病し、腹の中に石のようなものがあり、
刺すように痛み、昼夜叫ぶ。これは不治の病で百日すると絶命する
『肘後備急方』より
『肘後備急方(チュウゴビキュウホウ)』とは中国、晋時代(西暦265~420年)の医書。全8巻からなり、葛洪(カツコウ)の選とされています。古来より、
体内にできる堅硬なしこりを『
岩(嵒)』、
また体表にできる腫れ物を『
瘤』と表現していました。
それらの異物(がん)が生み出される要因を以下に説明していきます。
●気滞血瘀(キタイ ケツオ)情志(感情の変動を指し、
喜・怒・憂・思・悲・恐・驚を七情という)が、
強烈な刺激を受けたり、
長期間にわたって刺激を受け続けることにより、
臓腑がバランスを崩し、気の流れが滞り、
脈絡が阻害され血が順調に巡らなくなると、
気血が凝滞して、脈絡が閉塞し、塊りとなります。
【主な所見】
・疼痛
気が滞ることで、血の運行も悪くなり、
局部に瘀血(オケツ:「瘀」は流通しないとい意味。血が凝滞することで、生み出されたもの)が停滞すると、
その部分に痛みが生じる「不通則通」という状態になります。
・顔面の黒ずみ
特に顔面の皮膚につやがない時は、
瘀血、もしくは血の滋潤作用(ジジュンサヨウ:身体の各所に対して栄養や潤いを与える作用を指す。)
が低下していることが考えられます。
・しこり
瘀血が長期化することで、有形のしこりとなります。
気の流れが停滞し瘀血が形成されることで、
さらに気の流れを妨げるといった二者の間での悪循環に陥ることがあります。
●湿痰(シッタン)過度の疲労、飲食の不節制、情志の失調
外邪(風・寒・暑・湿・燥・火の6種類があり六淫ともいう)、
などにより
脾の運化作用が滞り、
水や湿が停滞する と起こる。
脾胃を損傷すると、飲食を停滞し、
痰濁を生み出します。
その痰濁が体内の気血の流れを阻止し、
痰と血が争い、閉塞し結びつくことで、
塊りを形成する要因となります。
【主な所見】
・全身の重だるさ
脾の運化作用が失調すると、末端部分である手足に充分な栄養が供給されないので、
倦怠感や無力感を感じるようになります。
・しこり
こちらも脾の運化ができなくなると、体内で湿痰が生じ、
停滞したものがしこりとなります。
・食欲不振
湿痰が脾胃の動きを邪魔し、またそのことで湿が停滞しやすくなると起こります。
●正気の弱り邪があつまる所の正気は虚弱していきます。
正気に衰退がみられると、
抵抗力が弱くなり、病邪が侵入し やすくなりますが、
特に
脾胃の弱り、損傷が激しくなると、
飲食すること自体が難しくなっていきます。
【主な所見】
・痩せる
正気が不足すると栄養機能の強い「血」が不足しやすくなるために起こります。
特に脾胃の気が大きく損傷し、食事が取れにくくなる、
または取れても消化しにくくなるためますます助長されます。
・かぜをひきやすくなる
体の表面を守っているバリアー(衛気)がうまく作れず、防御機能が低下し、
外邪が侵入しやすくなってしまいます。
・顔色が白い
気や血が消耗することで、体を温める作用が弱り、
また血の潤いも不足することで起こります。
《結びとして》正気の損傷が顕著でない場合は、
気滞や瘀血などの邪実を散らしていく事を進めていきますが 、
それらの邪実が正気を傷つけるようになってくると、
邪実を散らしつつも、正気を補うようにという配慮が必要となります。
最終的に正気の弱りが顕著になった際は、
正気を傷つけないように処置していくことが重要となります。
[記事]新川
参考文献:
『臨床医学各論』
『最新医学大辞典』医歯薬出版株式会社
『中医学の基礎』
『中医弁証学』
『中医病因病機学』
『[標準]中医内科学』
『いかに弁証論治するか[続編]』
『中医基本用語辞典』東洋学術出版社
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