東洋医学の見解
副鼻腔炎・蓄膿症は中医学では鼻淵・脳漏、脳滲と呼ばれる。
古人は鼻の奥深いところを脳とみており、
脳漏・脳滲は脳から濃い鼻汁が流れでてくるものと考えていた。
①肺気虚(はいききょ)
『諸病源候論』(しょびょうげんこうろん)鼻齆候
「若風冷傷於臓腑、而邪気乗於太陰之経、
其気蘊積於鼻者、則津液壅塞、鼻気不宣調、
故不知香臭、而為齆也。」
和訓:
もし臓腑が風冷し傷つけば、邪気太陰経に乗り、鼻に蘊積する者、
津液も塞がり、鼻の気が通じず、匂いを嗅ぐことができない、
齆(鼻づまり)の為なり。
『諸病源候論』(しょびょうげんこうろん)鼻窒塞氣息不通候
「肺氣通於鼻。其臟為冷風所傷、
故鼻氣不宣利、壅塞成齆。」
和訓:
肺気は鼻に通じる。その臓冷風に傷めば、鼻の気は通じて利さず、
塞がり齆(鼻づまり)に成る。
『景岳全書』(けいがくぜんしょ)鼻証
「凡由風寒而鼻塞者、以寒閉腠理、
則経絡壅塞而多鼽嚏、此証多在太陽経、
宜用辛散解表自愈。」
和訓:
およそ風寒に由りて鼻塞する者は、寒により腠理が閉じ、
経絡塞がり鼽嚏多く、この証は太陽経に多くあり、
辛散を用いて解表し宣ずれば自ら愈える。
・特徴
肺に寒邪があるため、透明な鼻水が出る。
肺気虚が進むことによって、鼻の機能が衰える。
・治療原則
温補肺気(肺気を温め補うこと)
固表散寒(体表にある寒邪を追い出し表を守ること)
②肝胆湿熱(かんたんしつねつ)
『黄帝内経素問』(こうていだいけい そもん) 気厥論篇 第三十七
「…膽移熱於腦、則辛頞鼻淵。
鼻淵者濁涕下不止也。…」
和訓:
胆 熱を脳に移せば、則ち辛頞にして鼻淵たり。
鼻淵なる者は、濁涕下りて止まざるなり。
『張氏医通』(ちょうしいつう)七竅門下
「痛久服薬不応。時痛劇。時向安。
或兼両颧紫赤。此為湿熱瘀滞。」
和訓:
痛み久しく服薬に応じず、時に劇痛し、時に安きに向い、
或いは両頬が紫赤に兼ねる。これ湿熱瘀滞のためなり。
・特徴
肝胆の熱が上昇したために口が乾燥する。
熱が心神を乱すと煩燥する。
胆汁が一緒に上に昇ると口が苦くなる。
熱が津液を灼熱するため鼻水が黄色く変化する。
・治療原則
清泄胆熱(胆熱を清泄し火迫を緩めること)
利湿通竅(湿邪を利し竅(人体にある穴・ここでは鼻の穴を指す)を通すこと)
③脾胃湿熱(ひいしつねつ)
『東垣十書』(とうえんじっしょ)
「若因飢飽勞役、損脾胃、生發之氣既弱、
其營運之氣不能上升。
邪塞孔竅、故鼻不利而不聞香臭矣。」
和訓:
もし飢飽労役により、脾胃を損じ、生発の氣すでに弱れば、
その営運の氣は上升すること能わず。
邪は孔竅を塞ぐ、故に鼻は利せずして香臭を聞かず。
『景岳全書』(けいがくぜんしょ)鼻証
「鼻淵証、総由太陽、督脉之火、
甚者上連于脳、而津津不已、故又名為脳漏。
此証多因酒醴肥甘、或久用熱物、或火由寒鬱、
以致湿熱上熏、津汁溶溢而下、离经腐败、
有作臭者、有大臭不堪聞者。」
和訓:
鼻淵証は総じて太陽、督脈の火に由りて
甚だしき者脳に上連なり、津津してやめない、
故にまた名づけて脳漏となす。
この証の多くは酒醴肥甘、あるいは久しく熱物を用い、
あるいは火は寒により鬱するにより、
もっと湿熱上熏を致し、津液は溶溢して下り、
経を離れて腐敗し臭をなす者あり、
大臭の聞くに堪えざる者あり。
・特徴
湿邪の停滞が多いため鼻水も多くなり、
鼻の粘膜が腫れ、肺気の流れを塞ぎ鼻詰まりをおこす。
湿邪は粘って動きが少ないため、頭重・倦怠感をおこす。
痰が鬱滞し、気の流れを塞ぐことにより胸悶する。
脾胃の運化機能が失調し食欲不振になる。
・治療原則
清熱利湿(湿邪を利して熱を冷ますこと)