膀胱炎 (淋証)の東洋医学解説
〜膀胱炎(東洋医学における淋証) について~
淋証
中医学の病名で、淋は排尿時の痛みをはじめとする
頻尿、残尿感、排尿困難を言い、
膀胱炎、腎孟腎炎、泌尿器系の結石などがこれに当たる。
鍼灸治療にて十分な効果があります。
1)膀胱湿熱による淋証
膀胱は古来から「州都の官」と呼ばれ、
水液の集まるところとされてきた。
膀胱は下部にあり、すべての水液が集まってくるのである。
外部より湿熱という邪気
(例えば、熱くてじめじめした所にいたりや、
飲食の偏りによって、体に湿熱がたまる。)
或いは、内熱体質(体質的に熱だということ)により、
膀胱に湿熱がたまると、膀胱の能力が低下し、淋証が現れる。
また、この膀胱湿熱では次のような種類の淋証が出る。
〇熱淋
頻尿(尿の色は濃い)、尿がしたたり、
すっきり出ない。(小便淋レキ)
排尿痛、(湿熱が邪魔している)腰痛、便秘を伴いやすい。
治療:清熱利湿、通淋
〇血淋
熱淋の後期に現れるので、熱淋の症状に加え、血尿が出る。
治療:清熱通淋、涼血止血
後に紹介する、腎気の弱りによる淋証でもこの血淋が出現します。
〇石淋
湿熱の邪が下焦(生命の下部を表す)で集まり、
熱が強いために蒸され、固まり、石や砂を形成する。
砂石が下部に堆積すると、下腹部の痛みや排尿痛が、
上部に集まると、腰痛が出る。
治療:通淋俳石
〇膏淋
小便が混濁して米のとぎ汁のようになる淋証を指す。
尿濁:湿濁の停滞によって起こる湿邪は粘着性があり、
邪魔をして尿が出にくくなる(排尿不暢)
治療:分清化濁、利湿通淋
後に紹介する、腎気の弱りによる淋証でもこの膏淋が出現します。
2)肝気鬱血による淋証
憂鬱であったり、怒ったり、イライラしていると、
肝の臓の働きが悪くなり(肝の疎泄機能が失調する)
熱が体内で生じる(気は滞ると熱化する性質がある)。
この気滞と熱が下焦に(体の下部)集中して、
膀胱の気化機能に影響すると、
排尿困難、腹部脹満などの症状が出る。
このパターンを気淋と呼ぶ。
気の欝滞が、二次元的に、淋証を誘発するためである。
臍(へそ)の下や下腹部の脹りが出ることが多い。
また、ストレスがたまったり怒ると悪化する傾向がある。
3)腎気の弱り(腎気虚損)
腎は膀胱と表裏関係にあるので
(東洋医学では腎と膀胱を表と裏という関係で表している)
淋証と深いつながりがある。
腎気虚損とは、腎の弱りのことで、
性生活の不節制、頭を使いすぎて足元から弱る、出産、
夜更かしなどの原因により起こる。
腎には固摂機能というものがあり、
体に有用なものを、留めておく能力である。
これが弱ると、ひもが緩んだように力が抜け、
体から汗や、尿が漏れてしまうようになる。
腎気の弱りで起こる淋証を以下にあげる。
〇労淋
疲労時に淋証が出る。(腎の弱りが疲労時にすすむため)
また、腎の弱りのため、腰のだるさや腰痛、頻尿を伴いやすい。
治療:補腎
〇血淋
腎陰が虚すと虚火が盛んになり、血熱が進行しておこる。
熱淋の後期に現れるので、熱淋の症状に加え、血尿が出る。
治療:清熱通淋、涼血止血
〇膏淋
小便が混濁して米のとぎ汁のようになる淋証を指す。
尿濁:膀胱湿熱の尿濁と違い、
腎気の固摂能力が落ちるため体に有用な精微が漏れる。
湿邪は粘着性があり、邪魔をして尿が出にくくなる(排尿不暢)
治療:分清化濁、利湿通淋
また、東洋学術出版社の李 世珍『臨床経穴学』には、
この淋証に対して、鍼灸(針灸)では
主に中極や、気海を使っているようです。
また、血淋に対して中極に通里を加える事で、導赤散を。
石淋に対して中極に陰陵泉を加えて八正散を鍼灸で表現しています。
労淋に対しては中極に、陰陵泉、太谿や腎兪を加えて
脾胃を補益して、佐として通淋し、
気淋に対しては、気海を用いているようです。