汗が出てとまらないもの ~汗証(多汗症)~ 汗は四季に応じたかき方というものがあり、 夏は、腠理(毛穴)が開いていて、比較的汗がよく出て、 冬は腠理が閉まっているため、汗は比較的かきにくいのが 自然の摂理というものである。 汗は本来しっとりとかくものであって、汗の出ないもの、 汗の出て止まらないものは、異常があると考えられ、 汗は津液(体に有用な水分)の一部であり、 心に属すと古来から言われている。 「汗は心液なり」「汗血同源」と呼ばれる通り、 汗も血も体に有用な水分の変化したものであり、 その水分を津液と言う。 汗は陰に属するが、汗を効率よく扇動するのは 陽気の気化作用を必要とするので、 「陰陽、加わりて汗を為す」と言われ、 陰陽が調和してはじめて人は良い汗のかき方をするのである。 したがって、治療には陰陽の調和に大事を置き、 同時に、陰陽の調和の崩れがよく 汗の異常を引き起こすことを述べておく。 東洋医学による汗の分類は次の通りである。 自汗 昼間でも出る汗。しきりに汗が出る。 体の陰陽のうち、陽気が弱ると起こると考えられています。 盗汗 夜間に出る汗。 寝ている間に出て、起きると止まっている。 こちらは、逆に陰分が弱ると起こると考えられています。 つまり、体の津液(有用な水分)が枯れて体が渇いている状態です。 脱汗 大量の汗。あぶら汗や冷や汗。 手足の冷えや、呼吸が弱くなる。 これが進み、危篤状態に出てくる汗を「絶汗」という。 戦汗 外感病にみられ、悪寒のあとに突然出る汗。 黄汗 黄疸にともなって出ることの多い黄色い汗。 東洋医学で考えるその原因をここで挙げてみようと思います。 1)肺の弱りによっておこる汗証(肺気不足) 肺は体の表面を守るバリアのような衛気という気を主っています。 これがあるからこそ、人は外邪から身を守ることが出来るのです。 外気の寒さ、湿気、乾燥の気、暑さなどから身を守る能力、 これが衛気の力であり、肺気の力だと言えます。 これが弱ると毛穴が開き、汗が漏れるのです。 症状 〇自汗 肺気が弱ると出るので、 疲労すると余計に肺気が疲れて発汗も出やすくなります。 〇悪風、カゼをひきやすくなる 毛穴が開き、外邪から身を守れないので、 風邪(ふうじゃ)が侵入し易くなります。 治療:益気固表 湯液:玉屏風散、牡蠣散、補中益気湯、人参養栄湯など 2)営衛不和 飲食物から、人は気血を生成しますが、 体の作り出す気のうち、虚弱な人が外邪を受けると この営衛のバランスが崩れて汗がもれるとされています。 肺気の弱りとかなり似かよっていますが、 弱りが肺に限局されず、一身の弱りがために営衛そのものの バランスがおかしくなったということでしょうか。 ということは、 ①では営衛の生成はうまくいっているが、 肺気の弱りでうまく散布出来ないと考えられる。 ここは、もう少し研究の余地がありそうです。 症状は、 〇汗が出る、悪風する 汗が出て、風に当たるのを嫌がる 〇半身に汗が出る 患側に発汗することが多いようです。 〇半身不随の後遺症にこれが多い。 湯液で言えば桂枝湯証にあたるでしょうか。 治療:調和営衛 湯液:桂枝湯、桂枝加竜骨牡蠣湯 (桂枝湯証に安神作用を加える。 実際、半身不随で営衛不和を起こすものは、 経験上、肝や心気が大きく関わることが多いです。) 3)一身の陰分(有用な水分)が 弱るために起こる汗証(陰虚火旺) 体の陰分が弱ると、相対的に陽が亢進して体に熱がこもる。 これを虚火という。 この虚火が強いと、火が津液(体の水分)を外におし出すため汗が出る。 人体の衛気は陽性であり(営は陰の性質)、 昼間は体表をめぐり、夜間は体内をめるので、 夜間に内部の熱と衛気の陽性が相まって(両陽相得という) 火の性質が強くなり、「盗汗」が出る。 症状 〇盗汗 夜間に出る発汗。起きると止まっている。 〇五心煩熱、微熱が出る 五心煩熱とは手足の裏、胸中が熱く感じる。 虚火が強くなると夕方に微熱が出る。 〇口渇、便秘を伴いやすい 陰の消耗によって体の水分が減少する。 治療:滋陰清熱 湯液:知バク地黄丸 4)湿熱の邪が体内でこもって蒸される(湿熱鬱蒸) 飲食の不節制(酒、油、肉、甘いものの過食)や、 外から湿邪が侵入することによって湿が体内にこもり、 熱をはらむとこの湿熱になる。 湿があれば汗となって漏れる性質がある。 症状は、 〇手足に汗をかきやすい。 熱とともに上昇すると頭部に汗をかき、 午後や夕方に余計に発汗しやすい という特徴がある。 治療:清熱利湿 湯液:竜胆瀉肝湯、茵陳五苓散 |
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