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結膜炎の東洋医学解説

結膜炎

結膜は、気輪とも呼ばれ、肺の臓との関連が深い。
肺は五行でいえば金に配当されるが
金の色は白がよいとされ、
金に属する気輪の色は白く光沢があるものが正常とされている。



結膜炎の代表的な症状である、
・目の充血
・目の乾燥
・目の痒み
を中心に記載していく。

【目の充血】
目赤(モクセキ)、火眼(カガン)、紅眼(コウガン)ともいわれる。

古典によると
“目不因火則不病,白輪變赤,火乘肺也。”

訳:
目は火によらざればすなわち病まず、
白輪の赤に変ずるは、火は肺に乗ずるなり

《銀海指南(ギンカイシナン)より
著者:顧錫(コセキ)(清時代の人)》

とある。

【目の痒み】
中医学では目痒(モクヨウ)と称し、
軽症では痒みが遊走性であるが、
重症では虫がはうような強い痒みは
痒如虫行(ヨウジョチュウギョウ)と称される。

古典によると
“痒有 因風 因火 因血虚而痒者”

訳:
痒は風により、火により、血虚によるものあり

《審視瑶函(シンシヨウカン)より
著:傳仁宇(デンジンウ/生没年不詳(明時代(1368年~1644年)の人)》
とある。


【目の乾燥】

古典では、
“目之白珠肺也,燥則眵干作癢”

訳:
目の白珠は、肺なり、燥けばすなわち眵(シ:目やに)乾き痒を作す

《銀海指南(ギンカイシナン)より
著者:顧錫(コセキ)(清時代の人)》

また、
審視瑶函(シンシヨウカン)には、
白渋症(ハクジュウショウ)という記載があり
“不腫不赤,爽快不得,沙渋昏朦,
名曰白渋,気分伏隠,脾肺湿熱。”


訳:
腫れず赤ならず、爽快は得ず、
沙渋昏朦(サジュウコンモウ)す、名づけて白渋という。
気分伏隠、脾肺湿熱す。

とある。

両目が乾燥してざらざらした異物感があり、
目の疲れを伴うことをいう。

・目乾渋(モクカンジュウ)
・乾渋昏花(カンジュウコンカ)
ともいわれる。

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【中医学的な見解】

風熱(フウネツ)
風熱の邪が肝胆の経脈に入ったり、
それらが経絡をつたって上にのぼり目を犯すことで発生する。

症状:両目の強い痒み、光を見ると眩しい、流涙、充血など

治法:疎風清熱(ソフウセイネツ:風を通し、熱を冷ます)

風寒(フウカン)
風寒の邪が肺肝の経脈に侵入することで発生する。
目に冷風が当たると症状が増悪する。

症状:両目の痒み、流涙、稀薄な目やに、など

治法:祛風散寒(キョフウサンカン:風をはらい、寒を散らす)

燥熱(ソウネツ)
燥熱の邪によって津液が消耗することで発生する。

症状:両目の乾燥・熱感・痒み、口や鼻の乾燥、口渇など

治法:清熱潤燥(セイネツジュンソウ:熱を冷まし、燥を潤す)

実火(ジッカ)
七情(シチジョウ:喜、怒、憂、思、悲、恐、驚という7種類の情志活動)
が乱れることで、肝鬱化火(カンウツカカ:肝経の気が鬱滞して熱と化した状態)し、
火熱が肝胆の経絡にそって目に入り生じる。

症状:両目の充血・痛み、口の苦味、喉の乾燥など

治法:清熱瀉火(セイネツシャカ:熱を冷まし、火を散らす)

血虚(ケッキョ)
肝腎が共に虚すると、
精血(セイケツ・精は血を化生し、
血は精が不足すると精に変化して精を補充する。
これらの関係を「精血同源」とよぶ)が
不足して目を栄養出来ず、
さらに虚火が上炎するために発生する。

症状:目の充血・乾燥・疲れ、異物感など

治法:養血活血(ヨウケツカッケツ:血を養い、血の流れをよくする)

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西洋医学における結膜炎

【結膜とは】
結膜は目の表面をおおう薄い透明な粘膜で、
黒目(角膜)かくまくのまわりの白目の表面と、
まぶたの裏をおおうピンクの部分からなっている。
目の表面の粘膜には、目に入ってきた異物や
病原体が目の中に侵入するのを防ぐはたらきがある。

【症状】
結膜炎になると白目が充血して赤くなり、
「めやに」がでたり、涙がでる。まぶたがはれることもある。
黒目(角膜)や茶目(虹彩)の炎症では黒目のまわりから赤くなるが、
結膜炎では、まず目もとや目じりに近い白目が充血する。

その原因には細菌、ウイルス、クラミジアなどの病原体や、
花粉やハウスダストによるアレルギーがあげられる。

【種類】
ウイルス性結膜炎
細菌よりも小さい微生物であるウイルスに感染することで起こる。
原因ウイルスと症状によって、下記にの種類に分かれる。

・流行性角結膜炎
主にアデノウイルス(8型、19型、37型、54型など)によって起こり、
通称“はやり目”と呼ばれている。
ウイルス性結膜炎のなかでも症状が強く、
充血や目やに、涙、まぶたの腫れ、痛みなどが生じる。
一般的には10日ほどで治まるが、
治りかけのころに黒目(角膜)に点状のにごりが出ることがあり、
瞳にかかってしまうと消えるまで視力が低下することがある。

治療には、副腎皮質ステロイド薬の目薬を使うことがある。

・咽頭結膜熱
アデノウイルス(3型、4型、7型)などによって起こる。
子どもがプールの水を介して感染することが多いことから、
別名“プール熱”とも呼ばれている。
充血や目やになどの他に、喉の痛みや発熱、
下痢など、風邪と似たような症状が現れることも特徴である。
発症後、およそ10日でよくなることが多い。
アデノウイルスを根本的に治療する薬はないため、
のどの痛みには鎮痛薬、高熱には解熱薬など、
それぞれの症状を抑えるような薬が処方される。

・急性出血性結膜炎
エンテロウイルス70型や
コクサッキーウイルスA24型によって起こる。
結膜下出血を起こして目が真っ赤になることと、
強い感染力があることが特徴。
潜伏期間は1日と短く、発症後は1~3週間ほどでよくなっていく。
根本的な治療法はないが、細菌の二次感染を防ぐ目的で、
抗菌薬などが用いられるが、
流水下で手指を石けんで十分に洗うことや、
タオルなどの共有をさけるといったことを
徹底するといった感染予防を行うことが重要とされている。

細菌性結膜炎
特徴的な症状は、黄色っぽい目やにと白目の充血である。
この症状を引き起こす細菌を「原因菌」というが、
この「原因菌」には多くの種類がある。

具待機的には、インフルエンザ菌、肺炎球菌、
黄色ブドウ球菌、クラミジア菌及び淋菌が挙げられる。
感染の可能性はまれだが、
体力の落ちている人や乳幼児に感染のリスクがある。
治療に関してはウイルス性と違い
有効な目薬(抗生物質)があるので、
きちんと使用すれば短期間で完治する。

アレルギー性結膜炎
花粉やハウスダストなど、
アレルギーを引き起こす特定の物質により引き起こされる。
アレルギー源は体質によりさまざまで、
特徴的な症状に、まぶたのかゆみと白っぽい目やに、
白目の充血があげられる。

治療には、
抗アレルギー点眼薬(抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエータ遊離抑制薬)が、
主に使われる。

重症の場合には、
ステロイド点眼薬や免疫抑制点眼薬などを使用する場合がある。

クラミジア結膜炎
クラミジア・トラコマティスが原因で起こる病気には、
トラコーマという結膜の炎症を起こす眼病がある。
結膜に炎症を起こすトラコーマは、
悪化すると失明する可能性がある症状の重い病気だが、
その多くは衛生環境が整っていない発展途上国で発症している。

治療には抗生物質を含んだ点眼薬や眼軟膏を使用する。

[記事:新川]
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参考文献:
『和訳 審視瑤函 (巻上)』六然社
『中医弁証学』
『黄帝内経 素問』
『黄帝内経 霊枢』
『中医病因病機学』
『[標準]中医内科学』
『中医基本用語辞典』
『やさしい中医学入門』
『いかに弁証論治するか』 東洋学術出版社
『基礎中医学』
『症状による中医診断と治療』 燎原書店

 

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