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「丹田」を充実させるには? その4

こんにちは、大原です。 古くから伝えられている、 いわゆる不老不死、アンチエイジングとしての術、 「丹田」を充実させるには? のシリーズですが、前回からだいぶ期間があいてしまいました。 前回までの記事を読んで頂いて 流れをおさらいしましょう。 以前までの記事一覧: 「丹田」とは何か? 「丹田」を充実させるには? その1 「丹田」を充実させるには? その2 「丹田」を充実させるには? その3 さて、今回は、内丹術の具体的な方法についてです。 丹薬という薬を用いて丹田の充実をはかるのが「外丹」ですが、 薬を用いずに 外丹と同じことをやってしまうのが「内丹」であるということでした。 つまり、身体の中で、 丹薬と同じものと作ってしまおうという考え方です。 ・・・そんなこと本当にできるのか!? という、かなり怪しい世界ですが、 不老不死になれるということを 本気で考え求めていたのでしょう。 さて、11世紀頃の成立と考えられる 『霊宝畢法』(れいほうひっぽう)という書物に、 内丹術の実践マニュアルとして位置づけられる内容の記述が あるようです。 さっそくその内容をみてみましょう。 ------------------------------------------------------ 『霊宝畢法』より、内丹術の実践について ①匹配(ひっぱい)陰陽 第1章 第一段階である。 体内の陰陽の気が交合する環境を整える。 そのために、人の身体と天地とが相似関係にあると捉え、 体内の気の変化を天地自然の陰陽の変化に順応させて整える。 心を天になぞらえ、腎を地になぞらえ、肝を陽の位とし、肺を陰の位とする。 ・・・ 気は陽になぞらえて、液は陰になぞらえる。 呼吸の仕方について。 気が旺盛になる時、すなわち一日のうちでは卯の刻に修練する。 気については取り入れるのを多くし吐き出すのを少なくして、 努めて腹の中に留め置くようにする。 このとき、下から昇ってくるもの(体内の元気)は外に出さないようにし、 外から入ってくるもの(天地自然の元気)はしばらく体内に留め置けば、 内外の二つの元気が融合し、蓄積されると五臓の液が生じる。 気が旺盛な時は、内外の元気を充分に溜め込んで、 気と液の循環を活発にすることが大切である。 ②聚散水火 第2章 第1章は、気の旺盛な時は元気を取り込んで蓄積するという修練であったが、 第2章は気が旺盛でない時に、元気を養う方法、 元気を散らさないように集める方法が記されている。 丑寅の刻には衣を羽織って静座して気を養い、 意念を断ち情欲を忘れ、軽く身体を動かしながら呼吸を行う。 手足を交互に伸縮させることを数回、四肢の気を一斉に生じさせて内に保つようにする。 そうすれば元気が上昇して心に向かうようになる。 あるいは唾液を一口二口飲み込み、 顔から頭にかけてさすること二三十回、口を大きく開けてハァーと息を吐いて 一晩の間に溜め込まれた悪濁の気を排出する。 この修練を長く続けると色つやがよくなって、皮膚がみずみずしくなる。 ここまでが陰陽の気を整えて充実させる段階であり、 このあと陰陽の二気を交わらせる段階に入っていく。 ③ 交媾(こうこう)龍虎 第3章 腎の中に気が生じ、気の中には真水がある。 心の中に液が生じ、液の中には真気がある。 真水と真気は真龍と真虎である。 午の刻に腎気が心に至る。 そのときに意識を安定させ、鼻で呼吸をして少し取り込んでゆっくりと送り出す。 その呼吸を長らく続けていくと、唾液が口に充満してくるが、 それを吐き出したり飲み込んだりしないでいると、 自然に腎気が心気と融合し、極まると液が生じる。 子の刻に心液が腎に至る。 そのときに心液が腎水に接触すると、自然に心液が腎水と融合し、極まると気が生じる。 このあと、「真水と真気は互いに引き合う性質を備えているので、自ずと交じり合って下丹田に降りる。」と続く。 すなわち、これを養っていけば、やがて丹になるということである。 ④ 焼煉丹薬 第4章 第3章で真水と真気が交わったが、次はそれを加熱していく過程になる。 意念を内側の丹田に集中させ、鼻からの呼吸を連綿と続けて、腹部をやや緊張させる。 臍のあたりが甚だ熱くなるのを感じたら、軽く(腹部を)緩めたり緊張させたりする。 臍のあたりが熱くならなければ、力を込めて緊張させる。次第に暖かくなってきたら、 力を抜いて常と変わらぬようにし、集中していた意念を解き払って、煉丹の場を充実させる。 これを「陽関を勒(ろく)して(腹部を緊張させて)丹薬を煉(ね)る」という。 ここまでの4段階がひとつの区切りとされ、 この4段階が「小乗法」といい、 ここまで到達すれば寿命を延ばすことができるという。 以下、次のように続く。 ⑤肘後(ちゅうご)飛金晶(きんしょう) 第5章 → 第4章で煉られた真気・真水を、 丹田から背骨沿い頭部まで上昇させる。 ⑥玉液還丹 第6章 → 第5章で頭部まで上昇した気は、 液となって下丹田に戻ることになる。 ⑦金液還丹 第7章 → 通常、第5章で説かれるルートによって真気・真水は上昇するが、そのルートを外れて肺へ上昇する「金液」がある。この金液を、下丹田に戻った後、改めて第5章、6章のルートにのせる。 ここまでの3段階は「中乗法」と呼ばれる。 ⑧朝元(ちょうげん) 第8章 → 根源の一気に還ること(五臓の気を泥丸に集めることをされる)を意味する。 五臓の気を一つに集めるため、陽神と呼ばれるものが現れるとされる。 ⑨内観 第9章 → 大いなる道との合一を目指す修練となる。 ⑩超脱 第10章 → 内丹修練の最終段階であり、第8章で現れた陽神を鍛えて成熟させる。 ここまでの3段階は「大乗法」と呼ばれる。 ------------------------------------------------------------------ 長くなりましたが ここまでになります。 参考文献に興味がおありの方は、ぜひご一読ください。 ▪️参考文献 『道教の生命観と身体論』 『道教と中国思想』 雄山閣出版 『気 流れる身体』 『道教と不老長寿の医学』 平河出版社 『煉丹術の世界』 あじあブックス

丹田を充実させるには? その3

こんにちは、大原です。 前回は「外丹」についての概要を見てみました。 以前までの記事一覧: 「丹田」とは何か? 「丹田」を充実させるには? その1 「丹田」を充実させるには? その2 「外丹」とは、丹薬と呼ばれる薬を生成して それを服用することによって 丹田を充実させ、精を補い、 不老不死や、いわゆるアンチエイジングを はかっていくというものでした。 ところで、中国では、古くから 万物に存在する「気」の存在が伝えられてきました。 「気」というエネルギーが存在することで、 あらゆる物は変化していくという考え方になります。 (逆に、自然界を観察していくと、 あらゆるもの・事象は必ず変化をしていくことから、 その変化の源のようなエネルギー源(「気」)があるのでは? という考え方になっていったとする見方もあります。) ちなみに、この万物の変化を 抽象的に表すものが「易」になります。 さて、このような「気」の思想も一つの背景となって、 外丹術において 生成の難しい丹薬をわざわざ服用しなくても、 別の方法で丹田を充実させて 精を補うことができれば、同じことなのでは? という考え方ができてきたようです。 すなわち、丹薬を服薬する代わりに、 人体を流れる「気」をコントロールすることによって 丹田を充実させようということです。 これが「内丹」と呼ばれるもので、 「外丹」は外から取り入れる方法であり、 それに対して 「内丹」は外から取り入れるのではなく 自身の中の気をコントロールすることによる方法 ということになります。 内丹の歴史も古く、多くの書籍が存在するようです。 続きます。 参考文献 『道教の生命観と身体論』 『道教と中国思想』 雄山閣出版 『気 流れる身体』 『道教と不老長寿の医学』 平河出版社 『煉丹術の世界』 あじあブックス 興味がおありの方は、ぜひご一読ください。

「丹田」を充実させるには? その2

こんにちは、大原です。 前回の、丹田についての記事 「丹田」を充実させるには? その1 の続きです。 以前までの記事一覧: 「丹田」とは何か? 「丹田」を充実させるには? その1 丹田を充実させる考え方には、大きく分けて 「外丹(がいたん)」と「内丹(ないたん)」があります。 「外丹」とは、 口から摂取する薬としての 丹(=これを「丹薬(たんやく)」と言います)を作ることであり、 「内丹」とは、 体内において丹に見立てた何かを作り出すことを言います。 この二つを比べると、 歴史的には、「外丹」がまず先にあり、 中国の六朝時代(西暦222年〜589年)には 外丹が盛んに行われていたようです。 その中で瞑想法や呼吸法・房中術など 多くの長生法が実践されていき、 それらが「内丹」の先駆けとなっていたようです。 では、先に始まったとされる「外丹」とは どのようなものだったのでしょう? 「外丹」とは丹薬(たんやく)と呼ばれる薬を作ることですが、 その薬の主となる原料は丹砂(たんさ)と呼ばれる鉱物です。 作り方を大まかにまとめると、 ①まずは丹砂を用意する。 ※丹砂の写真で 不適切な使用がございました。 深くお詫び致します。 申し訳ございませんでした。 コロナウイルスの関係で周辺が通常時と 同じように運営されておりません故、 しかるべき対応を順次が出来次第、 進めさせて頂こうと存じます。 ②丹砂の周りを様々な薬物で囲い、 これに熱を加えて、丹砂に含まれる陰の気を取り去る。 →これを、丹薬の煉成(れんせい)と言うそうです。 ③その後、「火毒」を取り除いて出来上がり。 鉱物の丹砂は、 その赤い色が人にとって必要不可欠である血液の色を想起させ、 これを摂取すれば 根本的なエネルギーである精を補え、 ひいては丹田を充実させることができる と考えられたようです。 ですが、鉱物である以上、 人体によって有害であることは 現代においては想像に難しくなく、 その成分は硫化水銀(化学式:HgS)であり、やはり猛毒です。 外丹術が盛んだった頃は この丹薬を服用することで、本当に寿命が伸びたり いわゆるアンチエイジングの効果があると考えられていました。 当時、寿命を延ばすはずの丹薬を服用すると、 病気になったり亡くなったりする人が やはり多くいたそうで、 これは「丹薬の作り方に問題があるのでは?」と考えられました。 具体的には 丹砂を強く火にかけた時に「火毒」というものができ、 これが人に害を及ぼすと考えられ、 ↑の作り方の③「火毒を取り除く (おそらく長時間冷やすようなことをするのでしょう)」が のちに加わったようです。 しかし、現代でも、ある漢方薬の一成分として 硫化水銀である丹砂は用いられているようです。 現代ではどのようにして用いられているのか、 どのようにして毒を取り除いているのか 気になりますね。 続きます。 参考文献 『道教の生命観と身体論』 『道教と中国思想』 雄山閣出版 『気 流れる身体』 『道教と不老長寿の医学』 平河出版社 『煉丹術の世界』 あじあブックス 興味がおありの方は、ぜひご一読ください。

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