こんにちは、大原です。
今回は太陽病から少陽病に
移行した場合についてです。
<条文 96条>
少陽病には小柴胡湯を用いる。
(【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(中)九十六章)
太陽経は表にあって陽気を外に開いて発散させ、
陽明経は裏にあって陽気を受納して閉じるのに対し、
少陽経は外と裏の中間にあって両方と連絡して
陽気を全身内外に送ります。
太陽病がなかなか治癒せず、
邪気と正気の闘争が表裏の中間でおこった場合、
「往来寒熱、胸脇苦満、
嘿々(モクモク)トシテ飲食ヲ欲サズ、心煩喜嘔ス。」
といった症状があらわれ、
太陽病が少陽病に移行したと考えます。
まず、「往来寒熱」は、邪正の闘争によるもので、
正気が勝ったり邪気が勝ったり
することでおこる症状です。
邪正が拮抗した状態にあるといえます。
「胸脇苦満」は、脇の下から側胸部を走行する
少陽経が邪を受け、経気の滞りが発生し、
重苦しさや痛みを感じるものです。
「嘿々トシテ飲食ヲ欲サズ」とは
少陽経の邪によって肝胆の疏泄作用が失調することで、
相克関係にある脾胃の働きを阻害し、
食欲不振を生じたものです。
鬱結した肝胆の気が湿熱を生じ、
心を侵したものを「心煩」といい、
この湿熱が胃に波及すると「喜嘔」がみられ、
二つを合わせ「心煩喜嘔ス」としています。
少陽病に対しては、
表証に対する発汗法や裏証に対する瀉下法は禁忌であり、
表裏の邪を清泄させる「和解法」が用いられます。
これには「小柴胡湯」を用いるとされています。
「小柴胡湯」の主薬は「柴胡」という生薬で、
少陽の気機を通達して
邪を外へ排する働き(疏邪外透)があります。
その他に含まれている生薬とその働きとして、
「黄芩」は少陽の鬱熱、胆火を清し、
「半夏・生姜」は和胃降逆・散結消痞に働き、
「人参」は扶正によって散邪を助け、
「大棗・炙甘草・生姜」は中焦を振奮して衛気を宣発し、
邪が裏へ侵入するのを防ぐ。
全体として、祛邪を主としながら
正気にも配慮して胃気を和すという働きになります。
(『中医臨床のための方剤学』より)
条文の後半には、少陽病の客証が出てきます。
以下にまとめます。
・「胸中煩シテ嘔吐セザル者」
→湿熱が胸中に滞った状態
・「渇スル者」
→胃の津液が損傷されている状態
・「腹中痛ム者」
→肝脾不和・血脈不利によって起こる
・「胸下痞鞭」
→邪気の結集
・「心下悸シ、小便不利ノ者」
→三焦水道の失調で水邪が停滞している状態
・「渇セズ外に微熱アル者」
→太陽の表邪が未だに解していない状態
・「咳スル者」
→寒邪により肺の宣散作用が失調した状態
これらの客証に対しては
生薬の配合を微妙に調整した加減法が
それぞれ述べられています。
続きます。
参考文献:
『基礎中医学』 燎原
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
大原