こんにちは、大原です。
「先表攻裏」という言葉を聞いたことは
ありますでしょうか?
傷寒論の44条
(【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(中)四十四章・四十五章)には
「太陽病、外証未ダ解セズバ下スベカラザルナリ。
之ヲ下セバ逆トナル」
とあり、
「表証があるうちは、攻下してはならない」という
先表攻裏の原則について書かれています。
攻下とは表ではなく裏を攻めるものであり、
表邪が残っている内に
攻下法を用いることによって裏気が侵害されると、
表に残存する邪が裏の虚に乗じて
内陥してしまい、症状が重くなってしまいます。
条文90条〜92条にかけては、
この先表後裏の原則を踏まえて、
表と裏が同時に病邪に侵された場合について
述べられています。
<条文90>
先表後裏の原則によらず、
重篤な症状から先に治療するという
先急後緩の治療原則が優先する場合について。
(【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)九十章・九十一章)
表裏同病で、裏証が重篤な場合に、
先表攻裏の原則通りに発汗法を用いると
陽気を発散させてしまうことから
亡陽に陥ります。
このような場合は先表攻裏の原則にとらわれず、
重篤な裏を先に救うべきと書かれています。
参考:条文90条から該当箇所を抜粋
「・・・ 本先ニ之ヲ下ス。而ルニ反テ之ヲ下スハ逆タリ。
若シ先ニ之ヲ下セバ治逆タラズ。」
<条文91>
太陽病に対して瀉下剤を誤って用いた結果、
腎陽が衰退して清穀下痢という重篤な症状が
現れた場合について。
(【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)九十章・九十一章)
表証が解さず、かつ、誤治によって
腎陽が衰退してしまった場合には、
生命の根源である腎陽をまず回復させる必要があります。
先表後裏の原則通りに発汗法を行うのではなく、
急いで裏証の手当てをしなければなりません。
腎陽を回復させる場合、
身体を温め陽気を回復させるため、
四逆湯を用いるとされています。
<条文92>
太陽病の症状が出ているにもかかわらず、
沈脈を呈している場合。
(【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)九十二章・九十三章)
これは表裏両感と考えます。
表邪を解する治療を行ってしまうと
前条のように裏虚を呈してしまう可能性があり、
表の熱だけでなく、
裏の寒も同時に解する必要があります。
この場合、麻黄細辛附子湯を用いて
表裏双解を行うとされています。
次回に続きます。
参考文献:
『基礎中医学』 燎原
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
大原