張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は
弁太陰病脈証并治 二百七十六章・二百七十七章。
二百七十六章では、太陰表証の脈とその治療原則について。
二百七十七章では、太陰虚寒証の重要な治則について。
それぞれ詳しく述べております。
二百七十六章
太陰病、脉浮者、可發汗、宜桂枝湯。方一。
桂枝三兩、去皮 芍藥三兩 甘草二兩、炙生薑三兩、切 大棗十二枚、擘
右五味、以水七升、煮取三升、去滓、溫服一升。
須臾、啜熱稀粥一升、以助藥力、溫覆取汗。
和訓:
太陰病、脉浮なるものは、発汗すべし。桂枝湯に宜し。
桂枝三両、皮を去る 芍薬 三両 甘草二両、炙る 生薑三両、切る 大棗十二枚、擘く
右五味、水七升を以て、煮て三升を取り、
滓を去り、一升を温服す。須臾、熱稀粥一升を啜り、以て薬力を助け、温覆して汗を取る。
・太陰病、脉浮者、可發汗、宜桂枝湯
太陰病は裏虚・陰寒であるから
脈は沈にして無力となるが、脈浮であれば陰病に陽脈が出現しているので
太陰経の表証で外症が解けて治っていく脈証である。
中焦の陽が回復しているのが分かる。
脾と肺は同じ太陰に属している。
脾は肌肉を主り、肺は皮毛を主るから桂枝湯を与えてやることにより
わずかに発汗させて肌表より解いて自ら回復させるのを助けてあげる。
提要:
太陰表証の脈とその治療原則について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
太陰病に罹って、脈が浮である場合は、
発汗法で治療してよく、桂枝湯が適している。処方を記載。第一法。
桂枝三両、皮を除く 芍薬三両 甘草二両、炙る
生薑三両、切る 大棗十二個、裂く
右の五味を、七升の水で、三升になるまで煮て、滓を除き、一升を温服する。
しばらくして熱くて稀い粥を一升ほど啜り、
これで薬力を助け、また温かく覆って汗をかかせる。
二百七十七章
自利不渇者、屬太陰、以其藏有寒故也、當溫之。宜服四逆輩。二。
和訓:
自利して渇せざるものは、太陰に属し、其の蔵に寒あるを以ての故なり。
当に之を温むべし。宜しく四逆の輩を服すべし。二。
・自利不渇者、屬太陰、以其藏有寒故也、當溫之。宜服四逆輩
脾虚で運化作用が充分に行われず、
水寒が内に盛んになれば下痢となる。
太陰病は湿土の病で、湿気が過度に侵入したものであるから
中焦が燥化することはないので、口は渇かない。
「四逆輩」は理中湯、四逆湯、附子湯、真武湯と同じ類の補温剤であり
太陰病虚寒証の変証を主治する。
提要:
太陰虚寒証の重要な治則について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
自利して口渇がない場合は、太陰病に属し、脾の蔵に寒があるので
温法で治療せねばならず、四逆湯の処方を服用させるとよい。第二法。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:為沢 画
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是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢