こんにちは、大原です。
前回は「膀胱蓄水証」(傷寒論71〜74条)について
述べてました。
今回は、「虚煩(きょはん)症」
についてです。(76条〜80条)
虚煩とは、太陽病の治療の後、
傷寒の一部が残って
胸郭に内陥した場合におこる症状で、
鬱熱の症状を呈するものです。
傷寒の邪が、表から裏に入る場合は、
胸が表に最も近いことから、
邪はまず胸郭に内陥すると考えるようです。
この場合、「梔子豉湯(しししとう)」を用いて、
胸中の鬱熱を清し、
心煩をとるのが良いとしています。(76条)
(【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)七十六章)
●参考 <梔子豉湯(しししとう)の組成・方意>
組成:山梔子9g、淡豆豉9g
方意:山梔子は清熱泄火して三焦を通利し、
淡豆豉は宣鬱達表し熱邪を体表から除く。
つまり、清泄と宣透により胸郭の鬱熱を解除する。
(『中医臨床のための方剤学』より)
また、煩熱して、さらに
胸が塞がったような感じがする場合には、
同様に「梔子豉湯」を用いるのが良いとしています。(77条)
(【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)七十七章・七十八章)
これは、病理機序が前条の虚煩の場合と同じだからです。
さらに、「身熱去らず、心中結痛する」
ようになった場合でも
「梔子豉湯」を用いるのが良い
としています。(78条)
(【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)七十七章・七十八章)
これは、症状は一段と重くなっていますが、
病理機序としては内陥した鬱熱によって、
気の流通だけでなく
血の流通をも阻害し、
その瘀血によって起こると考えます。
前条と同じ原因である
内陥した邪熱を取り除くことを目的に、
同じ方剤を用いるということです。
では、胸郭に内陥した邪熱以外の原因に
よる症状がみられる場合は、
どのような方剤を用いるべきでしょうか。
「少気」(呼吸する力が弱く、息切れしている状態)が
みられる場合は、甘草を加えた
「梔子甘草豉湯」を用いて
補気の作用を加えます。(76条 後半)
(【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)七十六章)
「腹満」(胃の動きが邪によって阻害されている状態)が
みられる場合は、
「梔子厚朴湯」を用いて
胃気の働きを改善させる作用を加えます。(79条)
(ただし、昇散の作用をもつ
「梔子豉湯」の一つの生薬である「豆豉」は
無用であるため除くとしています。)
(【古医書】傷寒論: 弁陽明病脈証并治 百七十九章・百八十章)
脾胃の消化力が弱まり下痢がみられる場合、
「梔子乾姜湯」を用いて
乾姜で温浦して下痢を止めます。(80条)
(【古医書】傷寒論: 弁陽明病脈証并治 百七十九章・百八十章)
次回に続きます。
参考文献:
『基礎中医学』 燎原
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
大原