大原です。
これまで述べてきました通り、
太陽病には大きく分けて
太陽中風証と太陽傷寒証があり、
太陽傷寒証に対しては麻黄湯を用いて
発汗させることで表の邪を取り除き、
営衛の調整を行います。
では、発汗法を用いたのに
発汗せず熱が籠もってしまった場合は
どうすべきでしょうか?
この傷寒でかつ内熱のある状態を
「外寒内熱」といいます。
これに麻黄湯を用いると
外の寒邪には有効かも知れませんが、
内熱は残ってしまうことになります。
(ちなみにこの内熱は、少陽の気機を阻滞し、
心神を襲うと煩燥という症状が現れるそうです。)
この場合、表裏を同時に邪を解する
大青竜湯が有効であるとされています。
(傷寒⇒辛温発散、内熱⇒清裏)
次に、体質として水分が過剰な人が
太陽傷寒病にかかった場合についてです。
水分が過剰とは、
「心下に水気あり」、胃内に水飲が停滞している
という状態で、脾肺の虚寒がみられるとされています。
この場合、単に解表しても
肺気の宣発が阻滞されているので
邪を解することができません。
また、表の風寒の邪を除かなければ、
水飲の産生は止まりません。
すなわち、上述の大青竜湯と同様に、
表と裏を同時に考えなければなりません。
この場合、小青竜湯が有効であるとされ、
表の寒邪と裏の飲邪を
同時に除くとされています。
さて、大青竜湯と小青竜湯は、
どちらも麻黄湯の加減方です。
それらの組成は、以下の通りです。
(組成については『中医臨床のための方剤学』より抜粋)
●麻黄湯 :麻黄9g、桂枝6g、杏仁9g、炙甘草3g (参考)
●大青竜湯:麻黄18g、桂枝6g、杏仁6g、炙甘草6g、生姜9g、大棗4g、石膏12g
⇒麻黄を倍にして発汗力を強め、石膏の辛寒作用で少陽に滞った熱を漏らして少陽気機を開通させる。
また、桂枝と生姜による辛温と辛寒が配合され、寒熱が相殺されて発散力が強まる。
●小青竜湯:麻黄9g、桂枝6g、炙甘草6g、半夏9g、細辛3g、乾姜3g、五味子3g、白芍9g
⇒乾姜や細辛は、水道を通して水飲を除く。
辛散の細辛と酸収の五味子は同量で「一散一収」といわれ、
辛散が過度になるのを防ぎつつ、酸収により邪を引き留めるのを防ぐ。
二つの方剤は、麻黄湯を軸に、
その症状に対して効果をもつ生薬が適宜加減され、
五蔵六腑への作用について、「一散一収」など
生薬どうしの相対する働きも
考慮された配合がなされています。
次回に続きます。
参考文献:
『基礎中医学』 燎原
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
大原