張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百五十七章と二百五十八章。
二百五十七章では、瘀血発熱の証治について。
二百五十八章では、下法の後に起こる変証について詳しく述べております。
二百五十七章
病人無表裏證、發熱七八日、
雖脉浮數者、可下之、假令已下、脉數不解、
合熱則消穀善飢、至六七日、不大便者、有瘀血、宜抵當湯。四十一。
和訓:
病人に表裏証なく、発熱すること七八日なれば、
脈浮数なるものと雖も、之を下すべし。
仮令已に下し、脉数解せず、熱を合すれば則ち穀を消し飢えることを善し
六七日に至り大便せざるものは、瘀血あり、抵当湯に宜し。四十一。
・病人無表裏證、發熱七八日、
雖脉浮數者、可下之、假令已下、脉數不解
病人に表証も裏証もなく発熱が7〜8日続いている。
この時、脈が浮数であっても下法を行ってもよい。
下法を行っても脈浮は治まっても熱の勢いが変わらない場合、
これは熱がすでに深く入り込んで気血の流れを妨げているのである。
・合熱則消穀善飢、至六七日、不大便者、有瘀血、宜抵當湯
下法を行ったあと、胃で血と熱が合わさり、
穀を消化する力が強くなって空腹感が高まる場合である。
これにより穀は瘀血により蘊熱・化燥され、
6〜7日経っても排便されないのである。
裏に瘀血があり、実熱を呈する場合は抵当湯で攻下するとよい。
提要:
瘀血発熱の証治について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
患者には[頭痛、項強、悪寒といった]表証も[譫語、腹満の]裏証もなく、
すでに七八日もの間発熱している状態なら、脈象が浮数であっても、
[表証がないからには、陽脈陽証は熱を主ることから]攻下法で治療してよい。
もし攻下法を用い[て陽明気分の熱が除かれ]た後も
脈数が改善しない場合[は血分に熱が残っており]、
[血分の]熱は胃に影響して水穀の消化を亢進させるので
よく腹が減り、六〜七日になっても依然と大便が出なければ
[血分の熱は腸に影響したからで]、[血分の熱と血が結合して]
瘀血ができていることが示唆され、抵当湯で治療する。第四十一法。
二百五十八章
若脉數不解、而下不止、必協熱便膿血也。
和訓:
若し脉数解せず、而して下ること止まざらば、
必ず協熱して膿血を便するなり。
・若脉數不解、而下不止、必協熱便膿血也
下法を行っても脈数が取れず、
熱邪が陽に伝わって下痢が止まらない場合、
瘀血が熱邪と合わさって消化を妨げ、
便に膿血が混じる変証が生じる。
提要:
前章に続き下法の後に起こる変証について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
もし脉の数象がとれず、そのうえ下痢も止まらなければ
やがて表熱と協同することによって膿血便を下痢するはずだ。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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為沢
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