自分の子どもが死のふちにいた。
ある症状で病院に妻が連れて行ったが
時に意識がふっと落ちるとの事で
髄膜炎や脳の腫瘍などを疑われ
救急で専門病院に搬送された。
自分が仕事で近くにいない時にかぎって。
ひどい脱水で眼かはくぼみ痩せてまるで死人のような表情。
白目を向き意識レベルがさがる度にもうダメかと思った。
点滴も脱水がきつく血管がもろく何度行っても出来ず
覚悟した。
まだしゃべることも出来ない幼子だが、
数ヶ月の間でも僕は彼と多くの語らいをして来たので
もしもの場合は受け入れるつもりで覚悟を決めた。
そういう中で昨日もいつも通り
仕事場に立ち、
患者の治療にあたる。
いつダメだったという連絡があったもおかしくない状況で、
僕はそのことを考えるだけで頭が真っ白になり
ガクガクと足に力が入らなかった。
天を望めどもずしりと重く感じた。
しかし、現場に入ると
仕事には集中出来るのは何故だろう。
それどころか感覚はますます研ぎすまされた。
睡眠も食事も取れていない状況にも関わらず
感覚は鋭敏になる。
なんなのだろう。
一人になると絶望感とすぐにでも向かいたいと言う衝動が
湧き出る。
しかし、仕事は忙しくお断りする訳にはいかないので
治療室に入ると何故か集中出来るのだ。
日常のくせだろうか。
手に職とはいうものの
自分にとって鍼をもつ仕事とはこれほどまで己の深部まで
根付いているものなのかと驚かされる。
息子はカテーテルを入れる為に全身麻酔での処置となったが、
これも仕事で間に合わなかった。
彼を信じるしかなかった。
彼は息子であり
弟子だ。
谷から這い上がり
皆様の前で活躍出来る日が必ず来ることを
信じています。
鍼灸師 林玄一(2011.4.10)
みなさまへ。
一週間で大分元気になったので心配なさらないで下さい。
あの時の気持ちを忘れないように記してあった日記を公開いたしました。