張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百五十二章と二百五十三章と二百五十四章。
二百五十二章では、陽明腑証で陰の精気が枯渇しようといている場合は
すぐに攻下法を行わなければならないこと。
二百五十三章では、陽明熱が極まって、陰液が枯渇しようとしている場合は
すぐに攻下法を行わなければならないこと。
二百五十四章では、発汗法の後、陽明腑実証が現れた場合は
すぐに攻下法を行わなければならないこと。
三つの攻下法により陰を守る証について詳しく述べております。
二百五十二章章
傷寒六七日、目中不了了、晴不和、無表裏證、
大便難、身微熱者、此爲實也、急下之、宜大承氣湯。方三十六。
和訓:
傷寒六七日、目中了了たらず、晴和せず、表裏証なく、
大便難く、身微かに熱するものは、此れ実と為すなり、
急いで之を下せ。大承気湯に宜し。三十六。
・傷寒六七日
傷寒6〜7日目、表邪は裏に内伝し陽明病となる時期である。
・目中不了了
両眼がかすんでよく見えないこと。
・晴不和
眼球の動きが鈍くてぎこちないこと。
傷寒6〜7日目、病人が突然目がみえなくなり
そのひとみが暗く濁って神がなくなるのは、
燥熱が深く入り込んで津血を消耗させている。
”五臓六腑皆上がって目に注ぐ”『黄帝内経』
とあるように、目がスッキリ見えないのは
真陰が枯渇している証で大変重い症状である。
・無表裏證、大便難、身微熱者、此爲實也、急下之、宜大承氣湯
頭痛、悪寒などの表証がなく、潮熱、譫語という裏証もない。
排便が困難で、身体に少し微熱がある。
一見、あまり急いで治さなくてもよいように見えるが
内では燥熱が実証を呈し、陰・精が枯渇しようとしているのであるから
大承気湯ですぐに下法を行い、陰を守らなければならない。
提要:
陽明腑証で陰の精気が枯渇しようといている場合は
すぐに攻下法を行わなければならない
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
傷寒の病に罹って六七日になり、両眼はかすんではっきり見えず、
眼球の動きも鈍く、その他には表証も裏証もなく、
大便が出にくく、身体に軽微な発熱がある場合は、これは裏実の状態である。
急いで攻下法で治療しあければならず、大承気湯が適当である。第三十六法。
二百五十三章
陽明病、發熱汗多者、急下之、宜大承氣湯。三十七。
和訓:
陽明病、発熱して汗多きものは、急いで之を下せ。大承気湯に宜し。三十七。
・陽明病、發熱汗多者、急下之、宜大承氣湯
陽明病は本来、高熱を発し多汗出となる。
ここでは多汗が甚だしく大汗をかき、津液が外に大量に出ている。
これは燥熱の程度がすでに甚だしくなっていることを示すのに
充分な症状であり、もう少し経過すれば陰液が暴脱しり変証が現れる。
大承気湯を用いてすぐ燥熱を除いて
陰を守っていかなければならない。
提要:
陽明熱が極まって、陰液が枯渇しようとしている場合は
すぐに攻下法を行わなければならない
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
陽明病に罹り、発熱して多量の汗が出ている場合は、
急いで燥熱を下すことにより、汗と共に津液が外に出て行くのを
防がねばならず、大承気湯を用いるとよい。第三十七法。
二百五十四章
發汗不解、腹滿痛者、急下之、宜大承氣湯。三十八。
和訓:
発熱して不解せず、腹満して痛むものは、急いで之を下せ。大承気湯に宜し。三十八。
・發汗不解、腹滿痛者、急下之、宜大承氣湯
発汗法を施してもまだ病が解けず、陽明腑実証が現れた場合、
すぐに大承気湯で邪の勢いを治め、陰液が枯渇する危機を救う必要がある。
大承気湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁陽明病脈証并治 二百三十八章・二百三十九章
提要:
発汗法の後、陽明腑実証が現れた場合は
すぐに攻下法を行わなければならない
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
発熱した後も病は治癒せず、急に腹部が膨満してきて痛む場合は、
速やかに攻下法で治療せねばならず、大承気湯を用いるのが適当である。第三十八法。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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為沢
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