あけましておめでとうございます♪
本多です。
2015年、初めての記事となりますが、
昨年同様に、腹證奇覧の記事を掲載して参ります。

今回は、
風引湯についてです。


風引湯

風引湯
風引湯


右図の如く胸一ぱいにはり満ち、
動気奔馬の如く上がりて心を衝き、
肩息短気、乾嘔、若しくは喘息、
劇しきものは
直視(目を据え)・上竄(そらめづかい)・き(疒 + 契 )そう(疒 + 従)搐搦、
飲咽に下らざるもの、
何の病因を論ぜず一切に以って風引湯の證とすべし。
余は前に詳らかなり。
或、疑う「此の方を許多の石薬、既に熱をのぞくの方という。
何を以てか寒熱虚実を問わざる」と。
答えて曰く。
諸病寒熱の因を問わず、上って心肺に迫るものは、必ず熱煩を発す。
彼の厥陰の心中疼熱、
少陰の乾嘔煩、皆上部に迫るによるものをみるべし。
况んやその他をや。
その熱を除くを主とするもの多くして、
寒を退くるの意少なきもの、是がためなり。
既に以って急を救うことを得ば、
其の寒熱虚実、豈審弁せざることを得んや。
是れ志を同じくする者と論ずべくして、
道を異にする者と語るべからず。


【風引湯:組成】

大黃(だいおう)

大黄
大黄

タデ科のダイオウ属植物の根茎や根。
性味:苦・寒
帰経:脾・胃・大腸・肝・心包
主な薬効と応用:緩下・駆瘀血
①瀉熱通腸:
胃腸の実熱による、
便秘・腹痛・高熱・意識障害などに用いる。
方剤例⇒大承気湯

②清熱瀉火:
火熱上亢による、
目の充血・咽喉の腫痛・鼻出血など上部の火熱の症候に用いる。
方剤例⇒三黄瀉心湯

③行瘀破積:
血瘀による無月経や腹痛時に用いる。
方剤例⇒復元活血湯

④清火湿熱:
湿熱の黄疸時に用いる。
方剤例⇒茵蔯蒿湯

備考:生用すると瀉下の働きが強くなり、
酒を吹きかけ火で焙ると上部の火熱を清し活血化瘀の働きが強くなり、
酒とともに蒸すと瀉下の力が緩やかになり、
炒炭すると化瘀止血に働く。



乾薑(かんきょう)

乾薑
乾薑

ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
性味:大辛・大熱
帰経:心・肺・脾・胃
主な薬効と応用:解熱・鎮痛・鎮咳・抗炎症
①温中散寒:
脾胃虚寒で腹が冷えて痛む・腹鳴・
不消化下痢・嘔吐などの症候時に用いる。
方剤例→理中湯

②回陽通脈:
陽気衰微・陰寒内生による亡陽虚脱で、
四肢の冷え・脈が微弱などの症状時に用いる。
方剤例→四逆湯

③温肺化痰:
肺の寒陰による咳嗽・呼吸困難・
希薄な多量な痰・背部の冷感などの症候時に用いる。
方剤例→小青竜湯

備考:辛熱燥烈のため、陰虚内熱・妊婦には禁忌とする。



竜骨(りゅうこつ)

古代の大型哺乳動物の化石。
種々の原動物が知られ、
主なものにゾウ・サイ・ウマ・シカ・ウシ類のものがある。
性味:甘・渋・平
帰経:心・肝・腎
主な薬効と応用:
①鎮心安神:
心神不寧の動悸・健忘・不眠・多夢・驚きやすいなどの
症候時に用いる。
方剤例⇒桂枝加竜骨牡蠣湯

②平肝潜陽:
肝陰虚陽亢による頭のふらつき・めまいなどの症候時に用いる。
方剤例⇒鎮肝熄風湯

③収斂固脱:
陽虚の自汗に用いる。
方剤例⇒二加竜牡湯

④生肌斂瘡:
皮膚の潰瘍や外傷出血時に用いる。
備考:湿熱や実邪には使用してはならない。



桂枝(けいし)

桂枝
桂枝

クスノキ科の桂(ケイ)の樹皮。
性味:温・甘・辛
帰経:心・脾・肺・膀胱
主な薬効と応用:発汗・鎮痛・解熱
①温中補陽:
腎陽虚による四肢の冷え・
腰や膝が無力・頻尿・夜間尿などの症状に用いる。
方剤例⇒桂苓丸

②散寒止痛:
虚寒による腹痛・疝痛などに用いる。
方剤例⇒理陰煎

③温通経脈:
皮膚潰瘍・慢性炎症などに用いる。
方剤例⇒陽和湯



甘草(かんぞう)

甘草
甘草

マメ科のウラル甘草の根。
性味:平・甘
帰経:脾・肺・胃
主な薬効と応用
①補中益気:脾胃虚弱で元気がない・
無力感・食欲不振・泥状便などの症候に用いる。
方剤例⇒四君子湯

②潤肺・祛痰止咳:風寒の咳嗽時に用いる。
方剤例⇒三拗湯

③緩急止痛:腹痛・四肢の痙攣時などに用いる。
方剤例⇒芍薬甘草湯

④清熱解毒:咽喉の腫脹や疼痛などに用いる。
方剤例⇒甘草湯

⑤調和薬性:
性質の異なる薬物を調和させたり、偏性や毒性を軽減させる。

備考:生用すると涼性で清熱解毒に、密炙すると温性で補中益気に働く。



牡蠣(ぼれい)

牡蠣
牡蠣

イタボガキ科のマガキ、
イタボガキやその他同属動物の貝殻で、
通常は左側が利用される。
性味:鹹・渋・微寒
帰経:肝・胆・腎
主な薬効と応用:
①益陰潜陽:
熱病傷陰・虚風内動による四肢の引きつり・ふるえなどに用いる。
方剤例⇒二甲復脈湯

②収斂固脱:
自汗・盗汗時に用いる。
方剤例⇒牡蠣散

③軟堅散結:
瘰癧・痰核・肝腫・脾腫などの症候時に用いる。
方剤例⇒消瘰丸

④鎮驚安神:
心神不寧による驚きやすい・ビクビクする、
焦燥感・不眠・多夢・動悸などの症候に用いる。

備考:虚寒に用いてはならない。



石膏(せっこう)

石膏
石膏

含水硫酸カルシウム鉱石。
性味:辛・甘・大寒
帰経:肺・胃
主な薬効と応用:
①清気分実熱(清熱降火・除煩止渇):
外感熱病の気分証で高熱・口渇があり、
水分を欲する・汗が出る・脈が洪大などの症候時に用いる。
方剤例⇒白虎湯

②清肺熱:
肺熱の呼吸促迫・咳嗽・胸苦しい・口渇などの症候時に用いる。
方剤例⇒麻杏甘石湯

③清胃火:
胃火熾盛による頭痛・歯痛・頭痛時に用いる。
方剤例⇒清胃散

④生肌斂瘡:
創傷・潰瘍・熱傷などの肉芽新生が悪く・瘡口がふさがらないときに用いる。

備考:実熱以外では使用してはならず、胃寒食少には禁忌である。



寒水石(かんすいせき)

炭酸カルシウム塩類結晶の方解石を用いる。
性味:辛・鹹・大寒
帰経:肺・胃・腎
主な薬効と応用:
①清熱瀉火:
除煩止渇・涼血
暑温の気分証の高熱・強い口渇・
舌質が紅・舌苔が黄などの症候に用いる。
方剤例⇒三石湯

備考:実熱以外には用いない。



赤石脂(しゃくせきし)

酸化第二鉄を多量に含む雲母源の粘土塊。
カオリナイトを主成分とする。
性味:甘・酸・渋・温
帰経:腎・大腸
主な薬効と応用:
①渋腸止瀉:
脾虚寒の慢性下痢や血便時に用いる。
方剤例⇒桃花湯

②斂血止血:
月経過多・不正性器出血・血便時に用いる。
方剤例⇒赤石脂散

③生肌収口:
化膿症が潰破したのち創口が閉口しないときや、
湿疹などで滲出・びらんを呈するときに用いる。
方剤例⇒生肌散

備考:温性で収斂固脱するので、
下痢の初期や湿熱積滞には使用してはならない。



紫石英(しせきえい)
紫色の螢石の鉱石。
性味:甘・温
帰経:心・肝・腎・肺
主な薬効と応用:
①鎮心定驚:
心神不寧の動悸・不眠・驚きやすい等の症候に用いる。
方剤例⇒風引湯

②温腎養肝:
子宮虚冷の不妊・不正性器出血・帯下などに用いる。
方剤例⇒紫石英丸

③温肺下気:
肺寒の呼吸困難・咳嗽・多痰などの症候時に用いる。

備考:陰虚火旺・肺熱には用いてはならない。



滑石(かっせき)
加水ハロサイトを正品とする。
性味:甘・寒
帰経:肺・胃・膀胱
主な薬効と応用
①利水通淋・止瀉
湿熱蘊結による熱淋(尿路系炎症)・石淋(尿路結石)、
血淋(尿路系の炎症性出血)の排尿困難・排尿痛に用いる。
方剤例⇒八正算

②清熱解暑:
暑邪による初寝る・口渇・尿が濃い・下痢などの症候に用いる。
方剤例⇒六一散

③祛湿斂瘡:
湿疹・湿瘡(滲出の多い皮膚炎症)

備考:沢瀉・車前子と同様に通里小便や清泄湿熱の効能をもつ。



白石脂(はくせきし)
性味:甘・酸・渋・温
帰経:肺・大腸
主な薬効と応用:止血


【風引湯:効能】

清熱熄風鎮驚安神の効果がある。


参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像:
『腹証奇覧翼 二編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004922

画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。


本多

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