下野です。
新年の一回目に
【養生訓】いつも適量を食べること。
という内容を書きましたが、
今回の『万病回春』の記事も
飲食の話が出て参ります。
脾胃を健やかに保つことが
どれだけ大切な事かを
改めて認識させられます。
では『万病回春』に参ります。
【原文】
五味者、辛、甘、苦、酸、鹹也。
多食辛、則筋急而爪枯也。
多食甘、則骨痛而髮落也。
多食苦、則皮槁而髮抜也。
多食酸、則肉胝●而唇揭也。
多食鹹、則脈凝注而変色也。
酒者、気厚上升陽也。
肉者、味厚下降陰也。
味之薄者、為陰中之陽、
味薄則通、酸苦平鹹是也。
味之厚者、為陰中之陰、
味厚則泄、酸苦鹹寒是也。
気之薄者、為陽中之陰、
気薄則発泄、辛甘淡平寒涼是也。
気之厚者、為陽中之陽、
気厚則発熱、辛甘温熱是也。
軽清成象。味薄茶之類。
本乎天者、親上也。
重濁成形。味厚、大黃之類。
本乎地者、親下也。各従其類。
気味辛甘、発散為陽也。
気味酸苦、湧泄為陰也。
清陽発腠理、清之清者也。
清肺以助天真。
清陽実四肢、清之濁者也。
栄華腠理。
濁陰歸六腑、濁之濁者也。
堅強骨髄。
濁陰走五臟、濁之清者也。
栄養於神。
<第十九に続く>
【現代語訳・解説】
五味とは、辛、甘、苦、酸、鹹である。
※鹹:塩辛い
辛味を多く食すと、
筋は緊張して引き攣り、爪は枯槁するようになる。
甘味を多く食すと、
骨に痛みを感じ、頭髪も落ちる。
苦味を多く食すと、
皮膚は枯槁して産毛が抜けるようになる。
酸味を多く食すと、
肌肉が厚く皺をつくり、口唇もめくれ上がるようになる。
鹹味を多く食すと、
血脈は凝滞し、色沢も変化してしまう。
酒は気厚く上升し、陽である。
肉は味厚く下降し、陰である。
味の薄いものは陰中の陽であり、
経路を疎通させる。
酸、苦、平、鹹がこれに当たる。
味の厚いものは陰中の陰であり、
泄瀉を引き起こす。
酸、苦、鹹、寒がこれに当たる。
気の薄いものは陽中の陰であり、
能く外に向かって発泄する。
辛、甘、淡、平、寒、涼がこれに当たる。
気の厚いものは陽中の陽であり、
能く熱を生じる。
辛、甘、温、熱がこれに当たる。
軽く清めるは象をなす。 味薄きは茶の類である。
天に本づくは、上を親しくする。
重く濁るは形をなす。 味厚きは大黃の類である。
地に本づくは下を下しやすくする。各その類に従う。
気味の辛甘は発散であり、陽である。
気味酸苦は湧泄し、陰である。
清陽は腠理に発し、清の清なるものである。
肺を清くし以て天真を助く。
清陽は四肢を実し、清の濁なる者である。
腠理を栄華する。
濁陰は六腑に帰し、濁の濁なる者である。
骨髄を堅強にする。
濁陰は五臟に走る、濁の清なる者である。
神に栄養する。
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ここでは
飲食による疾病・症状に関して説明している。
そもそも飲食は
生命活動を維持する為の
物質的源であり、
健康を保つ為の必要条件と
東洋医学でも位置づけている。
飲食物は脾胃に入り、
そこで栄養を吸収、運化するため、
飢えや過食、偏食があれば、
脾胃を損傷し、
ここから様々な疾病が発生する
と考えている。
したがって飲食の異常は
疾病・症状を生み出す重要な原因である。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『現代語訳◉黄帝内経素問 上巻』 東洋学術出版社
『現代語訳◉黄帝内経素問 下巻』 東洋学術出版社
『中医病因病機学』 東洋学術出版社
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