下野です。
以前 宮村先生が
伊坂 幸太郎先生の『オーデュボンの祈り』を
紹介されておりましたが、
(記事はこちら→【書籍紹介】オーデュボンの祈り)
私も伊坂先生の本が好きで、
先日も『アイネクライネナハトムジーク』
という書籍を読みました。
伊坂先生らしい
伏線に満ちた小説で、
時間を忘れて1日中読んでいました。
ご興味のある方は、読んでみて下さい。
では『万病回春』の記事に参ります。
【原文】
盡力謀慮、労傷乎肝、應筋極也。
曲運神機、労傷平脾、應肉極也。
意外過思、労傷乎心、應脈極也。
預事而憂、労傷乎肺、應気極也。
矜持志節、労傷乎腎、應骨極也。
頭者、精神之府。頭傾視深、精神将脱也。
背者、胸中之府。背屈肩、腑将壊也。
腰者、腎之府。轉搖不能、腎将憊也。
骨者、髓之府。不能久立則振掉、骨将憊也。
膝者、筋之府。屈伸不能行則僂俯、筋将憊也。
一損、損於皮毛、皮聚而毛落也。
二損、損於血脈、血脈虛少、不能栄於臟腑也。
三損、損於肌肉、肌肉消瘦、飲食不能為肌膚也。
四損、損於筋、筋緩不能自収持也。
五損、損於骨、骨痿不能起於床也。
従上下者、骨痿不能起於床者、死也。
従下上者、皮聚而毛落者、死也。
肺主皮毛、損其気者、益其気也。
心主血脈、損其心者、調其栄衛也。
脾主肌肉、損其脾者、調其飲食、適其寒温也。
肝主筋、損其筋者、緩其中也。
腎主骨、損其骨者、益其精也。
憂愁思慮、則傷心也。
形寒飲冷、則傷肺也。
恚怒気逆、則傷肝也。
飲食労倦、則傷脾也。
坐濕入水、則傷腎也。
亢則害、承迺製也。
寒極則生熱也。
熱極則生寒也。
木極而似金也。
火極而似水也。
土極而似木也。
金極而似火也。
水極而似土也。
<第十五に続く>
【現代語訳・解説】
気力を尽くすと肝を労傷し、筋が絶する。
理に反して神気を運用すれば脾を労傷し、肌肉が絶する。
過度の思は心を労傷し、脈が絶する。
事に預かって憂えば肺を労傷し、気が絶する。
意志を矜持すれば腎を労傷し、骨が絶する。
頭は精明の府である。
頭部が垂れ下がり頭を挙げられず、
目が落ち込み輝きを失ったものは精神が衰退しているのである。
背は胸中の府である。
背が曲がって肩が下がっている場合は、
胸中の気が崩れているのである。
腰は腎の府である。
腰を動かせないようであれば、それは腎が疲れているのである。
骨は髄の府である。
長時間立っていられず、動作の際に震え
落ち着きがなければ、骨が疲れているのである。
膝は筋の府である。
曲げ伸ばしが出来ず、動作の際に身を曲げてうつむくようであれば
筋が疲れているのである。
一損は皮毛が損なわれ、皮膚は潤いを失い縮んで皺となり
毛髪が脱落する。
二損は血脈が損なわれ、血脈は虚少となり五臓六腑へ栄養をゆきわたらすことができなくなる。
三損は肌肉が損なわれ、飲食しても痩せていく。
四損は筋が損なわれ、筋が緩み自らの肉体を支えることが出来ない。
五損で骨が損なわれ、座ったり立ったりすることが出来なくなる。
これが損の病変であり、これと反対のものが至脈の病変となる。
上から下に伝わり、骨が痿え起き上がれなくなるもの、
下から上に伝わり、皮が聚まり毛の落ちるものは共に予後不良となる。
肺は皮毛を主る。肺の虚損には気を補うべきである。
心は血脈を主る。心の虚損にはその営衛を調節すべきである。
脾は肌肉を主る。脾の虚損には飲食を調え、かつ適度な温度の物を食すべきである。
肝は筋を主る。肝の虚損には肝を和らげ、中を緩める。
腎は骨を主る。腎の虚損には、精気を補うことが大切である。
憂愁思慮の過度は心を傷る。
身体が外からは寒冷によって、内からは冷飲によって
冷えてしまうと肺を傷る。
怒り、気が上逆したままであると肝を傷る。
暴飲暴食、過労は脾は傷る。
長い間、湿度の高い場所にいたり、
水に入ってしまうと腎を傷る。
盛んになると損なうが、
それ故に抑制がはたらく。
寒が極まると熱を生じ、
熱が極まると寒を生じる。
木が極まると金に似たり。
火が極まると水に似たり。
土が極まると木に似たり。
金が極まると火に似たり。
水が極まると土に似たり。
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「一損、二損」という言葉が出てくるが、
これは『難経』の第十四難にも出てくる
「損脈」とよばれる
健康人の脈数よりも
脈数が減損している脈状を意味しており、
『難経』では損病と書かれている。
一損、二損と順に書かれているのは、
皮毛、血脈、肌肉、筋、骨が順に損ずるという
状況を示しており、
これは損病が外から内、浅い所から深い所へと
伝変する様子を説明している。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『難経解説』 東洋学術出版社
『現代語訳◉黄帝内経素問 上巻』 東洋学術出版社
『現代語訳◉黄帝内経素問 下巻』 東洋学術出版社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
下野