下野です。

今回も『万病回春』の記事になります。


【原文】
八裏者、微沈緩濇遅伏濡弱也。
微者、如有又如無也。
沈者、都無按有餘也。
遅緩、息間三度至也。
濡者、散止細仍虛也。
伏者、切骨沈相類也。
弱者、沈微指下圖也。
濇者、如刀軽削竹也。
遅寒緩結微為痞也。
濇因血少、沈気滞也。
伏為積聚、濡不足也。
弱則筋痿少精気也。

九道者、長短虛促結代牢動細也。
長者、流利通三部也。
短者、本部不及細也。
虛者、遅大無力軟也。
促者、來数急促歇也。
虛者、遅大無力軟也。
結者、時止而遅緩也。
代者、不還真可吁也。
牢者、如弦沈更実也。
動者、鼓動無定居也。
細者、雖有但如線也。
長、為陽毒三焦熱也。
短、気壅郁未得倡也。
促、陽気拘時兼滞也。
虛、為血少熱生驚也。
代、主気耗細気少也。
牢、気満急時主疼也。
結、主積気悶兼痛也。
動、是虛労血痢崩也。

六死者、雀啄、屋漏、彈石、解索、魚翔、蝦游也。
雀啄、連来三五啄也。
屋漏、半日一點落也。
彈石、硬来尋即散也。
解索搭指即散乱也。
魚翔、似有亦似無也。
蝦游、静中跳一躍也。


【現代語訳・解説】
八裏は、
微、沈、緩、濇、遅、伏、濡、弱である。
微はあるようで、ないような脈である。
沈は按ずれば触れることが出来る脈である。
遅緩は一息三至の脈である。
濡は散し、細は虚である。
伏は骨にせっし、沈の類である。
弱は沈微で指下に図る。
濇は刀で竹を削るような脈である。
遅は寒、緩は結、微は痞である。
濇は少血であり、沈は気滞である。
伏は積聚、濡は不足である。
弱は筋は萎え精気が少ない。

九道は、
長、短、虛、促、結、代、牢、動、細である。
長は気血がスムーズに流れていることを現している。
短は三部に満たない、脈形が短い脈である。
虚は遅大で力ない軟らかい脈である。
促は脈来は数で、急に止まる脈である。
結は時に止まり、遅緩である。
代は真に還らず。
牢は弦の様で、沈実である。
動は気血の衝動である。
細は糸筋のような脈である。
長は陽毒、三焦の熱である。
短は気の壅鬱である。
促は陽気が拘って、時に滞である。
虚は気血が少なく、熱、驚を生じる。
代は気耗で、細は気少ない。
牢は気が満急し、時に疼痛を主る。
結は積気を主り、悶と痛みを兼ねる。
動は虚労で、血痢と血崩である。

六死脈は
雀啄、屋漏、彈石、解索、魚翔、蝦游である。
雀啄は雀が物をつまむような脈である。
屋漏は屋根から雨が漏れるような脈である。
彈石は硬く来るが、按じると無力である。
解索はリズム、形状が乱れる脈である。
魚翔はあるかと思えば、消えてしまう脈である。
蝦游はほぼ動かず、たまに動する脈である。

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今回も脈の内容であり、
八裏、九道、死脈について書かれている。

脈においては
「胃の気」の盛衰有無
疾病・治療効果・予後を判断をする上で
重要となっており、
人の生死は胃気の有無で決まるとも言われている。

今回「死脈」という脈が出てきているが、
これは「怪脈や真臓脈、敗脈、絶脈」と言われ、
臓腑の気が衰滑して胃の気が絶した
病症において現れるとされている。
鍼灸学校の講義では
今回の「雀啄、屋漏、彈石、解索、魚翔、蝦游」に
「釜沸」を加えた「七死脈」として教わると思います。

死脈については記載のない書籍もあるので、
以下に説明を加えておきます。
◉雀啄脈
脈のうつ調子が不揃いで、雀が物をつまむような動作に似ている。
脾気の絶した脈とされる。

◉屋漏脈
極めて遅く、かつ無力な脈。
胃気営衛の絶する脈とされる。

◉彈石脈
石を指で弾くような、全く柔らかさのない脈で
腎気の絶とされる。

◉解索脈
疎らにうったり密にうったりと
散乱した脈であり、腎・命門の滅亡とされる。

◉魚翔脈
魚が水中を泳ぐような脈であり、
三陰の極寒、亡陽とされる。

◉蝦游脈
蝦が水底で突如としてうごめかし、
休んだかと思うと急に動く様子に似た脈であり、
大腸の気絶とされる。

◉釜沸脈
釜の中で沸くような脈で、
三陽の極熱、陰の枯渇とされる。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『基礎中医学』 燎原書店
『中医脉学と瀕湖脉学』 たにぐち書店
『中医学の基礎』 東洋学術出版社
『中医診断学ノート』 東洋学術出版社
『図解鍼灸脈診法 胃の気の脈診』 森ノ宮医療学園出版部

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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