大棗
大棗

張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百四十五章と二百四十六章。
二百四十五章では過汗出により傷津し、硬便となった場合の証治について。
二百四十六章では陰虚有熱の脈証について詳しく述べております。


二百四十五章

脉陽微而出少者、爲自和也。
汗出多者、爲太過。陽脉實、因發其汗出多者、亦爲太過。
太過者、爲陽絶於裏、亡津液、大便因鞕也。

和訓:
脉陽微にして汗出ずること少なきものは、自ら和すと為すなり。
汗出ずること多きものは、太過と為す。
陽脉美に、其の汗を発するに因りて出ずること多きものも、
亦太過と為す。太過は、陽裏に於て絶すと為し、
津液を亡し、大便因って鞕きなり。


脉陽微而出少者、爲自和也
脉陽微というのは浮緩の脉のことであり、
微に対して実というので緩弱の脉である。

汗出多者、爲太過
太陽中風証で脉が浮緩を示し、汗出が少なければ脉と症状が一致しているが
多汗出であれば脉と症状が一致していない。これを太過という。

陽脉實、因發其汗出多者、亦爲太過
太陽傷寒証で脉が浮緊(陽脉の実)を示していれば
本来無汗であるが、そのとき多く汗出させるのも太過である。

太過者、爲陽絶於裏、亡津液、大便因鞕也
太過というのは津液の損傷が甚だしく
胃中が乾燥し、陽熱が独り盛んになっている状態であるから、
大便は硬くなる。このことから症状の軽重を知ることができる。
燥尿であるかどうか詳しく調べ、潤下或いは攻下して
治療するかを判断すればよい。

提要:
過汗出により傷津し、硬便となった場合の証治について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
浮取して脉象が微弱であり、汗が少し出ていれば、
人体は自然に調和がとれた状態にあるが、汗が多く出るなら、太過の状態である。
脉が浮にして有力で、発汗法を用いたために
汗が多く出ている場合も、太過の状態である。
いわゆる太過とは、裏に於て陽熱が亢盛となった状態で、
これにより津液は損傷し、その結果、大便は硬くなる。


二百四十六章

脉浮而芤、浮爲陽、芤爲陰、浮芤相搏、胃氣生熱、其陽則絶。

和訓:
脉浮にして芤、浮は陽と為し、芤は陰と為し、浮芤相搏ち、胃気熱を生ずれば、其の陽則ち絶す。


脉浮而芤、浮爲陽、芤爲陰、浮芤相搏、胃氣生熱、其陽則絶
芤脉は外実内虚の脉証で、津血が虚していることを現す。
浮脉は陽脉で熱を現す。つまり「脉浮而芤」は陰虚有熱の脉証である。
浮芤が同時に現れるのは、陽熱が盛んで津血が癒えず虚し、
その熱が胃腑に及んで津が枯渇し、陽熱が独り盛んであることを示す。
従って大便は硬く、その他の症状も推察することができる。

提要:
陰虚有熱の脈証について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
脉象が浮で芤ならば、浮は陽熱が盛んなことを、
芤は陰血が虚していることを表し、
浮脉と芤脉が同時にみられるなら、胃腸の気が化熱しており、
陽邪は必ず亢盛で内部に隔絶された状態にある。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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