下野です。

今回も『万病回春』の記事ですが、
前回に引き続き脈診の内容となっております。


【原文】
左手属陽、右手属陰也。
関前属陽、関後属陰也。
汗多亡陽、下多亡陰也。
諸陰為寒、諸陽為熱也。

人迎者、左手関前一分是也。
気口者、右手関前一分是也。
人迎以候天之六気、
風寒暑湿燥火之外感也。
人迎、浮盛則傷風也。
緊盛、則傷寒也。
虛弱、則傷暑也。
沈細、則傷湿也。
虛数、則傷熱也。

気口、以候人之七情、
喜怒憂思悲恐驚之內傷也。
喜者、則脈散也。
怒者、則脈激也。
憂者、則脈濇也。
思者、則脈結也。
悲者、則脈緊也。
恐者、則脈沈也。
驚者、則脈動也。

人迎、脈緊盛大於気口一倍、
為外感風與寒、皆属於表、為陽也、腑也。
気口、脈大於人迎一倍、
脈緊盛為傷食、為労倦、皆属於裏、為陰也、臟也。
人迎気口俱緊盛、此為夾食傷寒、為內傷外感也。
男子久病、気口充於人迎者、有胃気也。
女子久病、人迎充於気口者、有胃気也。
病雖重可治、反此者逆。

外因者、六淫之邪也。
内因者、七情之気也。
不内外因者、飲食労倦跌撲也。


【現代語訳・解説】
左手は陽に属し、右手は陰に属す。
関上より前は陽に属し、後ろは陰に属す。
汗多きは陽を亡い、激しい下痢は陰を亡う。
陽経はすべて熱証であり、陰経はすべて寒証である。

人迎は左手関上の前一分であり、
気口は右手関上の前一分である。
人迎は天の六気である
風・寒・暑・湿・燥・火の外感をうかがう。
人迎が浮盛であれば傷風であり、
緊盛であれば傷寒、
虚弱であれば傷暑、
沈細であれば傷湿、
虚数であれば傷熱となる。

気口は人の七情である
喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の内傷をうかがう。
喜ぶ者は脈は散じ、
怒る者は激し、
憂うる者は濇し、
思う者は結し、
悲しむ者は緊、
恐るる者は沈、
驚く者は動じず。

人迎の脈が緊盛で、
気口の脈より大であれば外感である。
風・寒は表に属し、陽であり腑である。
気口の脈が緊盛で、
人迎の脈より大であれば傷食、労倦である。
裏に属し、陰であり臓である。
人迎、気口共に緊盛ならば、
食を夾んでの傷寒であり、内傷外感である。
男子の慢性病の場合、
気口が人迎より充実していれば胃の気あり。
女子の慢性病の場合、
人迎が気口より充実していれば胃の気あり。
病が重いと言えども治せる。
これに反する場合は逆証となる。

外因は六淫の邪である。
内因は七情である。
不内外因は飲食、労倦、外傷である。

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ここでは気口、人迎の部位の違いにより
外感病、内傷病の見極め方が書いていあります。
ただ、『難経』の記事の時から書いておりますが、
これは学術の面であって、
臨床ではここに記載されている事が
100%当てはまるとは言いきれないと思います。

東洋医学では脈診だけではなく、
四診合参を常に心掛けなくてはなりません。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『基礎中医学』 燎原書店
『難経解説』 東洋学術出版社
『中医病因病機学』 東洋学術出版社
『中医診断学ノート』 東洋学術出版社
『現代語訳◉黄帝内経素問 上巻』 東洋学術出版社
『現代語訳◉黄帝内経素問 中巻』 東洋学術出版社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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