先日の台風11号によって、
被災した。
“彼”と呼んでいたものが一日にして“彼”ではなくなり、
“あれ”と読んでいたものが“あれ”ではなくなった。
現場にたたずむと、
失われてものを眼にした喪失感と受け入れがたいショックに
自身を失いかけるが、
その混沌とした多くのものの中に
森の中に旭が差し込むような神々しさを覚える場所がある。
この矛盾するような感情はなんなんだろうか。
失われ、破壊され、
そこに現れた残酷な光景に対して
ああ、なんて美しいんだと感じ、
一定受け入れてしまっている部分がある。
自分でも理解に苦しむが、
それも含めて自然の偉大さなのであろうか。
ものを破壊する神々が暴れたあとには
荒野に降りる慈しみ包む神々がそこを見守るらしい。
やわらかく透明な慈しみを帯びる呼吸を感じる。
言葉にはなかなかならない。
自宅に帰宅中、とぼとぼ歩きながら
ふと、空を見上げると
あまり見たこともないような
美しい満月があった。