桂枝
桂枝

張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百四十四章。
この章では、心窩痞硬して口渇がある場合の太陽病と陽明病について弁証しています。


二百四十四章

太陽病、寸緩關浮尺弱、其人發熱汗出、
復惡寒、不嘔、但心下痞者、此以醫下之也。
如其不下者、病人不惡寒而渇者、此轉屬陽明也。
小便數者、大便必鞕、不更衣十日、無所苦也。
渇欲飮水、少少與之、但以法救之。渇者、宜五苓散。方三十。

猪苓去皮 白朮 茯苓各十八銖 沢瀉一兩六銖 桂枝半兩、去皮
右五味、爲散、白飮和服方寸匕、日三服。

和訓:
太陽病、寸緩関浮尺弱に、其の人発熱して汗出で、
復た悪寒し、嘔せず、但だ心下痞するものは、此れ医之を下すを以てなり。
如し其の下さざるもの、病人悪寒せずして渇するものは、此れ陽明に転属するなり。
小便数なるものは、大便必ず鞕く、更衣せざること十日にして、苦しむ所なきなり。
渇して飲水を欲すれば、少少之を与え、但だ法を以て之を救え。
渇するものは、五苓散に宜し。方三十。

猪苓皮を去る 白朮 茯苓各十八銖 沢瀉一両六銖 桂枝半両、皮を去る
右五味、散と為し、白飲に和して方寸匕を服し、日に三服す。


太陽病、寸緩關浮尺弱
太陽病で寸口の脉が緩は衛陽不足、関上で浮を示しているのは心窩有熱、
尺中の弱は陰弱で営陰が弱く内を守れないことを表している。

其人發熱汗出、復惡寒、不嘔、但心下痞者、此以醫下之也
発熱、汗出、悪寒があれば太陽中風証で
嘔吐しないのは表に邪があることを示すが、
誤って下法を行えば邪気は内陥し、胸膈が痞塞して
心窩痞硬が出現する。

如其不下者、病人不惡寒而渇者、此轉屬陽明也
まだ下法を行っていないのに悪寒せず、
口渇がある場合、これは太陽病が陽明病に転属したためである。

小便數者、大便必鞕、不更衣十日、無所苦也
陽明病で大便が硬いときは、内で乾燥して結した場合と、
津が渇いた場合の二つが考えられるが、
小便の数が多く、腸内の津が渇いて便が硬いだけであれば
10日余も排便せず、潮熱はないが腹満痛で苦しんでいても絶対に攻下してはならない。

渇欲飮水、少少與之、但以法救之
このときに口が渇いて水が飲みたければ、
少しだけ与えて胃気を潤和すれば次第に治っていく。

渇者、宜五苓散
太陽病で誤って下法を行い水飲が内蓄し、
膀胱の気化が不利になって水・津が巡らず口渇する場合、
五苓散で利水・化気すれば口渇は自然に治る。

五苓散
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)七十章・七十一章

提要:
心窩痞硬して口渇がある場合の太陽病と陽明病について弁証している。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
太陽病で、患者の脈象は
寸緩、関浮、尺弱で、発熱して汗が出ている。
また悪寒はあるが嘔吐せず、
ただ心下が痞えて苦しいだけであるのは、
医者が攻下法を用いたからだ。
もし攻下法を用いていないのに、
患者は悪寒せずに口渇があるなら、病は陽明に転属している。
小便が頻数であれば、大便は必然的に硬くなり、
大便が十日余りも出ていなくても、大した苦痛を感じない。
口渇があって水を飲みたがれば、
患者に少量を飲ませればよく、必ず具体的な弁証にもとづいて
治療を進めねばならない。
例えば蓄水があって口渇する場合は、五苓散で治療すればよい。
処方を記載。第三十法。
猪苓皮を除く   白朮  茯苓各十八銖  沢瀉一両六銖  桂枝半両、皮を除く
右の五味は、散にして、方寸匕を重湯とよく混ぜて服用し、日に三回服用する。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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