こんにちは、為沢です。
画像は甘草という生薬の絵です。
傷寒論や他の記事に使われる生薬の絵を描いてるんですが
記事中では絵のサイズが小さく表示されます。
この子に陽の目を見せてあげたいなと思い
自己紹介?の意を込めて、この度大きめに掲載させて頂きました。
また違う生薬の絵も描いていくので今後も宜しくお願いします_(._.)_
ここからは張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百三十七章。
この章では、陽明病蓄血証の証治について詳しく述べております。
二百三十七章
陽明證、其人喜志者、必有蓄血。
所以然者、本有久瘀血、故令喜忘、屎雖鞕、
大便反易、其色必黑、宜抵當湯下之。方二十四。
水蛭熬 蝱蟲去翅足、熬、各三十箇 大黄三兩、酒洗 桃仁二十箇、去皮尖及兩人者
右四味、以水五升、煮取三升、去滓、溫服一升、不下更服。
和訓:
陽明証、其の人喜志するものは、必ず蓄血あり。
然る所以のものは、本久瘀血あり、故に喜忘せしむ。
屎鞕しと雖も、大便反って易く、其の色必ず黒きものは、
宜しく抵当湯にて之を下すべし。方二十四。
水蛭熬る 虻虫翅足を去る、熬る、各三十箇
大黄三両、酒で洗う 桃仁二十箇、皮尖及び両人のものを去る
右四味、水五升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服し、下らざれば更に服せ。
・陽明證、其人喜志者、必有蓄血。本有久瘀血、故令喜忘
陽明病の蓄血証は瘀血が以前から太陽にあり、
さらに陽明病の熱邪を感受して発病した場合をいう。
心は血脈を主る。
以前から瘀血があり、心気が伸び伸びできず
塞がり易くなり思う様に心が働いていない。
このような時に濁熱が加わり、上方の清陽をかき乱し
神智を昏乱させるので、よく物忘れをする。
太陽の蓄血証は、邪熱が強く心に上擾するので
「発狂」(抵当湯)症状を呈するのが特徴である。
(こちらを参照→弁太陽病脈証并治(中)百二十四章)
陽明の蓄血証では、熱よりも慢性の瘀血が主なので
「喜忘(健忘と同義)」という緩慢な症状を呈する。
・屎雖鞕、大便反易、其色必黑、宜抵當湯下之
陽明は燥を主る。血は全身を栄養し潤すので
便は乾燥して硬いといえども、排便は比較的よく出る。
瘀血により色は黒い。
これは蓄血の証であるので抵当湯を用いて瘀血を下す。
太陽の蓄血証を弁証するのに小便の利か不利をみる。
(こちらを参照→弁太陽病脈証并治(中)百二十五章)
陽明の蓄血証を弁証するには、
大便が黒いか黒くないか、便が出やすいかをみる。
抵當湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(中)百二十三章・百二十四章
提要:
陽明病蓄血証の証治について。
訳:
陽明の証があり、患者に健忘がある場合は、必ず蓄血がある。
なぜかというと、その患者にはもともと瘀血があり、
これが患者に健忘をおこさせている。大便は乾燥して硬くなっていても、
かえって排便は容易で、しかも大便の色が必ず黒ずんでいる。
この場合は抵当湯で瘀血を攻下すればよい。処方を記載。第二十四法。
水蛭焙る 虻虫羽と足を除く、焙る、各三十匹 大黄三両、酒で洗う 桃仁二十個、皮尖および両人のものを除く
右四味を、五升の水で、三升になるまで煮て、滓を除き、一升を温服し、下痢しなければさらに服用する。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢