こんにちは、本多です。
今回は腹證奇覧に記載している、
大建中湯3の證の記事を掲載致します。
大建中湯3
図の如く、
腹常には平穏にして、
発する時は腹皮動いて波の打来るが如き者。
或は腹常には之を按すも状なく、
発する時は忽ち塊物遊走し、
上下往来して疼み、
事にふれて近づくべからず。
又、云う。
時として小さき嚢の如きもの忽ち去りて無きが如く、
又た来る時は痛み忍び難し。
腹中に在るかと思えば、忽ち背に廻り、
背に在るかと思えば、また腹中に来る。
此の三図の腹診を詳らかにして、
某々の病名に拘らず、
此の方を用いて治せざることなし。
【大建中湯:組成】
蜀椒(しょくしょう)
ミカン科のサンショウ属植物、
イヌザンショウなどの成熟した果実の果皮。
性味:辛・熱・小毒
帰経:脾・胃・腎
主な薬効と応用:
①散寒止痛:
中寒による激しい腹痛・冷え・嘔吐・摂食不能などの症候に用いる。
方剤例→大建中湯
②解毒駆虫:
回虫など腸内寄生虫による腹痛・嘔吐などの症候時に用いる。
方剤例→椒榧丸
備考:陰虚火旺には禁忌となる。
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乾姜(かんきょう)
ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
性味:大辛・大熱
帰経:心・肺・脾・胃
主な薬効と応用:解熱・鎮痛・鎮咳・抗炎症
①温中散寒:
脾胃虚寒で腹が冷えて痛む・腹鳴・
不消化下痢・嘔吐などの症候時に用いる。
方剤例→理中湯
②回陽通脈:
陽気衰微・陰寒内生による亡陽虚脱で、
四肢の冷え・脈が微弱などの症状時に用いる。
方剤例→四逆湯
③温肺化痰:
肺の寒陰による咳嗽・呼吸困難・
希薄な多量な痰・背部の冷感などの症候時に用いる。
方剤例→小青竜湯
備考:辛熱燥烈のため、陰虚内熱・妊婦には禁忌とする。
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人参(にんじん)
ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾
主な薬効と応用
①補気固脱:
大病・久病・大出血・激しい嘔吐などで
元気が虚衰して生じるショック状態時に用いる。
方剤例⇒独参湯
②補脾気:
脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振、
四肢無力・泥状~水様便などの症候時に用いる。
方剤例⇒四君子湯
③益肺気:
肺気虚による呼吸困難・咳嗽・息切れ(動くと増悪する)
・自汗などの症候時に用いる。
方剤例⇒人参胡桃湯
④生津止渇:
熱盛の気津両傷で高熱・口渇・多汗・
元気がない・脈が大で無力などの症候時に用いる。
方剤例⇒白虎加人参湯
⑤安神益智:
気血不足による心身不安の不眠・
動悸・健忘・不安感などの症候時に用いる。
方剤例⇒帰脾湯
備考:生化の源である脾気と一身の気を主る
肺気を充盈することにより一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。すべての大病・久病・大出血・大吐瀉による元気虚衰の
虚極欲脱・脈微欲脱に対して最も主要な薬物。
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膠飴(こうい)
糯米粉・粳米粉・小麦粉などに麦芽を加えて加工製精した飴糖。
性味:甘・微温
帰経:脾・胃・肺
主な薬効と応用:
①補虚建中・緩急止痛:
中気不足の虚寒腹痛の症状などに用いる。
方剤例→小建中湯
②潤肺止咳:
肺虚の慢性乾咳・呼吸困難・無痰などの症候時に用いる。
方剤例→大建中湯
備考:助湿生熱してしまうので、湿熱内鬱には用いてはならない。
【大建中湯:主治】
中焦陽虚・陰寒上逆に対して、
温中補虚・降逆止痛の効能がある。
参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会
画像:
『腹証奇覧 後編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004918
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本多