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【お知らせ】年末年始の鍼灸治療
明けましておめでとうございます。
為沢です。家にある観葉植物のモンステラを描いてみました。
新年早々少し怖い絵ですが、今年もどうぞ宜しくお願いします(笑)
では、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百三十三章。
傷津により渇いて便が秘結した場合 それを排便させる方法について詳しく述べております。
二百三十三章
陽明病、自汗出、若發汗、
小便自利者、此爲津液内竭、雖鞕不可攻之。
當須自欲大便、宜蜜煎導而通之。
若土瓜根乃與大猪膽汁、皆可爲導。二十。
食蜜七合
右一味、於銅器内微火煎、當須凝如飴状、
攪之勿令焦著、欲可丸、倂手捻作挺、
令頭鋭、大如指、長二寸許。當熱時急作、冷則鞕。
以内穀道中、以手急抱、欲大便時乃去之。
疑非仲景意、已試甚良。
又大猪膽一枚、瀉汁、和少許法醋、
以灌穀道内、如一食頃、當大便出宿食惡物、甚効。
和訓:
陽明病、自汗出で、若しくは発汗し、
小便自ら利するものは、此れ津液内に竭くと為し、
鞕しと雖も之を攻むべからず。
当に自ら大便せんと欲するを須つべし。
宜しく蜜煎にて導きて之を通ずべし。
若しくは土瓜根乃び大猪胆汁、皆導と為すべし。二十。
食蜜七合
右一味、銅器内に於て、微火にて煎じ、当に飴状の如く凝するを須べし。
之を攪して焦げ著かしむること勿れ。
丸とすべしと欲すれば、手を併せて捻り挺を作り、
頭をして鋭ならしめ、大きさ指の如く、長さ二寸許り。
当に熱き時に急いで作るべし。冷ゆれば則ち鞕し。
以て穀道中に内れ、手を以て急いで抱え、大便欲する時乃ち之を去る。
疑うらくは仲景の意に非ざらん。已に試みて甚だ良し。
又大猪胆一枚、汁を瀉ぎ、少し許りの法醋に和し、
以て穀道内に灌ぎ、一食頃の如くすれば、
当に大便して宿食悪者を出だすべし。甚だ効く。
・陽明病、自汗出、若發汗、
小便自利者、此爲津液内竭、雖鞕不可攻之
陽明病は本来自汗出であるが、
仮に発汗させ更に小便がよく出る場合、津液は竭いて傷ついている。
潮熱、譫語、腹満痛等の燥実を現す症状がみられないことから
本証の硬便は熱結により生じたものでないことがわかる。
これは内の津液が竭いたことにより起こる症状であるから、
原文に「雖鞕不可攻之」と述べている。
・當須自欲大便、宜蜜煎導而通之
この場合は、外より治療していく。
蜂蜜を煎じて座薬として用いるのだが、
そのときは便意が起こるのを待って肛門より挿入する。
それにより潤導させて通じていくのである。
・若土瓜根乃與大猪膽汁、皆可爲導
津傷で有熱の場合は、土瓜根或いは豚の胆汁を前記と同じ方法で行うと
清熱・通便させることができる。
蜂蜜
基原:ミツバチ科のミツバチ、ヨーロッパミツバチ、
トウヨウミツバチなどが、巣に集めた花蜜。
蜂蜜は滋潤性を持ち、潤燥滑腸に働くほか、
生用すると凉性で清熱潤肺し、熟用(火を通した煉蜜)すると
温性で補中・緩急止痛し、甘味で解毒し薬性を調和する。
それゆえ、津虚の大便燥結・肺虚津虧の口乾燥咳・脾胃虚弱の神倦食少や
心腹作痛などに用いる。
このほか、「烏頭毒を解す」「百薬を和す」ともいわれる。
提要:
傷津により渇いて便が秘結した場合 それを排便させる方法について。
訳:
陽明病に罹り、自汗が出ていたり、
或いはすでに発汗法を施した後、なおも患者の小便がよく出ていれば、
この場合は体内の津液が竭きているので、
大便が硬く結していても攻下法を施すことはできない。
患者が便意を感ずるまで待ち、蜜煎法を用いて大便を導き出すとよい。
或いは土瓜根法で導便しても大猪胆汁で灌腸してもよいが、
いずれもよい導便法である。第二十法。
食用蜂蜜七合
右の一味を、銅器の内に入れ、微火にかけて加熱し、
水飴状になるのを待つが、攪拌しながら焦がさぬよう注意する。
丸薬を作るには、両手で捻って棒状にし、
頭をとがらせ、太さは指くらい、長さは二寸ぐらいにする。
熱いうちに急いで作らねばならず、冷えると硬くなる。
これを腸内に入れ、急いで手で押さえ、大便が出そうになったら手を放す。
これは恐らく仲景の処方ではないだろうが、試した所では効果は非常によい。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢