こんにちは、本多です。
今回は腹證奇覧に記載している、
大黄黄連瀉心湯の證の記事を掲載致します。
大黄黄連瀉心湯
図の如く心下痞、之を按せば軟。
又、心下痞気不足の者。
余、此の方を数々用い、数々効ありて云う。
本文に「心下痞、之を按せば軟。
其の脈、関上浮なる者と云云」と。
或る説に云う、
「其の字上にうけて読むときは、関上は即ち関元なり」と。
余、此の説を是として後、病者を診察する毎に、
此を考えて全きを得る者を左に記す。
臍下より凡そ二寸下、
ひそかを指を下して腹脉の浮脈を考うるに、
動に非ず、悸に非ずして、
指頭に自ら浮脈を覚ゆるもの、是なり。
学ぶ者、謹んで其の脈を察して、
以って此の指を定極することを知るべし。
又、云う。
本文に心気不足と云う者、世に多し。
俗に云う「善く物忘れして冒する者。甚だしきものは健忘」と号する、是なり。
此の方を用いて治を奏すること挙げて数へ難し。
一書に云う。
心下痞硬、嘔吐吃逆、或は嚏する者、此方大に効あり。
又、云う。
心腹攪痛(かきまぜ痛む)し、
諸薬効なくして死せんと欲するものに即効あり。
余、数々経験す。
大黄黄連瀉心湯の方
大黄(一戔二分)黄連(六分)
右二味、水六分を以って熱湯にて振出し用う。
【大黄黄連瀉心湯:組成】
大黄(だいおう)
タデ科のダイオウ属植物の根茎や根。
性味:苦・寒
帰経:脾・胃・大腸・肝・心包
主な薬効と応用:緩下・駆瘀血
①瀉熱通腸:胃腸の実熱による、
便秘・腹痛・高熱・意識障害などに用いる。
方剤例⇒大承気湯
②清熱瀉火:火熱上亢による、
目の充血・咽喉の腫痛・鼻出血など上部の火熱の症候に用いる。
方剤例⇒三黄瀉心湯
③行瘀破積:血瘀による無月経や腹痛時に用いる。
方剤例⇒復元活血湯
④清火湿熱:湿熱の黄疸時に用いる。
方剤例⇒茵蔯蒿湯
備考:生用すると瀉下の働きが強くなり、
酒を吹きかけ火で焙ると上部の火熱を清し
活血化瘀の働きが強くなり、
酒とともに蒸すと瀉下の力が緩やかになり、
炒炭すると化瘀止血に働く。
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黄連(おうれん)
キンポウゲ科のオウレン属の根茎。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・肝・胆・胃・大腸
主な薬効と応用:健胃・利胆・鎮痙
①清熱燥湿:大腸湿熱の下痢・裏急後重などに用いる。
方剤例⇒芍薬湯
②清熱瀉火:熱入心包の高熱・意識障害・うわごと、
煩燥などの症候時に用いる。
方剤例⇒牛黄清心丸
③清熱解毒:熱毒による高熱・煩燥・目の充血・腫痛・
咽喉腫痛・皮下出血・嘔吐などの症候に用いる。
方剤例⇒黄蓮解毒湯
備考:苦寒のため、多量を用いると胃を損傷する。
湿熱や実火でないものや脾胃虚寒には禁忌である。
【大黄黄連瀉心湯:主治】
熱邪が心下に陥入し、
気の痞結したものを通す。
軽揚泄熱の効果がある。
参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会
画像:
『腹証奇覧 後編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004918
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本多