こんにちは為沢です。
こちらは心落ち着く動画を と思いまして載せてみました。
ここからは張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百二十一章。
二百二十一章では、陽明経表証を誤治しておこる、
三つの熱証になった場合の証治について詳しく述べております。
二百二十一章
陽明病、脉浮而緊、咽燥、口苦、腹滿而喘、
發熱、汗出、不惡寒、反惡熱、身重。
若發汗則燥、心憒憒、反讝語。
若加溫鍼、必怵愓煩躁不得眠。
若下之、則胃中空虚、客氣動膈、
心中懊憹、舌上胎者、梔子豉湯主之。方十一。
肥梔子十四枚、擘 香豉四合、綿裹
右二味、以水四升、煮梔子、取二升半、去滓、
内豉、更煮取一升半、去滓、分二服。溫進一服、得快吐者、止後服。
和訓:
陽明病、脉浮にして緊、咽燥き口苦く、腹満して喘し、
発熱して、汗出で、悪寒せず反って悪熱し、身重し。
若し発汗せば則ち燥し、心憒憒として、反って譫語す。
若し温鍼を加えば、必ず怵愓煩躁して眠るを得ず。
若し之を下さば、則ち胃中空虚に、客気膈を動かし、
心中懊憹し、舌上に胎する者は、梔子豉湯之を主る。方十一。
肥梔子十四枚、擘く 香豉四合、綿で裹む
右二味、水四升を以て、梔子を煮て二升半を取り、滓を去り、
豉を内れ、更に煮て一升半を取り、滓を去り、二服に分かつ。温めて一服を進め、快吐を得るものは、後服を止む。
・陽明病、脉浮而緊、咽燥、口苦、
腹滿而喘、發熱、汗出、不惡寒、反惡熱、身重
陽明熱証は陽明経の熱邪が気分にあり、
それが激しくなって表裏に散満している状態をいう。
熱邪が裏に満ち、気機の昇降を阻害されているので
脉緊を示し、腹満而喘を現している。
熱邪が上焦を侵し、津を傷つけるので
咽が乾燥し、口が苦くなっている。
表にも熱があるから脉浮を示し、発熱して汗出するので
寒気はないが熱気は嫌っている。
そして熱気が激しいために正気が傷つけられるので
身体が重いのである。このときの治則は熱を清して、
気を益していかなければならない。
①若發汗則燥、心憒憒、反讝語
発汗法を行うと必ず津は傷ついて熱はさらに激しくなり、
神が乱れて意識が朦朧とし譫語を発するようになる。
②若加溫鍼、必怵愓煩躁不得眠
温鍼(灸頭鍼)を行うと、さらに熱邪を助長して
些細なことにも驚いたり恐れたりし、気分がイライラして(煩躁)
夜が眠れなくなる等、精神障害が起こる。
③若下之、則胃中空虚、客氣動膈、心中懊憹、舌上胎者、梔子豉湯主之
誤って下法を行うと、胃中が空虚になり
熱邪が上焦を犯し、胸膈に鬱滞して阻がり、
気分がイライラして(心中懊憹)、舌苔などの虚・煩・熱・鬱の病症が生じる。
これら①②③の場合は梔子豉湯で清熱・解鬱・除煩を行えばよい。
・
梔子豉湯
・山梔子(さんしし)
基原:
アカネ科のクチナシ、
またはその他同属植物の成熟果実。
球形に近いものを山梔子、
細長いものを水梔子として区別する。
山梔子は苦寒で清降し緩除に下行し、
心・肺・三焦の火を清して利小便し
気分に入って瀉火除煩・泄熱利湿するとともに、
血分に入り凉血止血・解毒に働く。
熱病の熱蘊胸膈による心煩懊憹、
熱欝血分による吐衄下血・瘡癰熱毒、
湿熱蘊結による淋閉黄疸などの要薬である。
・
・
・香豉(こうし)
基原:マメ科のダイズの成熟種子を蒸して発酵加工したもの。
香豉は辛苦甘で疎散宣透の性質をもち、
表邪を宣透し鬱熱を宣散し、解表して傷陰しない。
外感表証の発熱・頭痛・無汗や、
邪熱内擾胸中の心胸煩悶・虚煩不眠に適する。
ただし、宣散には働くが、清熱の効能はもっていない。
提要:
陽明経表証を誤治しておこる、
三つの熱証になった場合の証治について。
訳:
陽明病に罹り、脉象では浮で緊、
咽喉部が乾燥して口は苦く、腹部は脹満して息が喘ぎ、
発熱して、汗が出、悪寒せずに悪熱し、身体が重だるい状態となった。
もしこれを発汗法で治療すると患者は煩燥し、
ひどくイライラして落ち着かず、そして譫語を発する。
もし温鍼療法で治療すると、おどおどして煩躁し眠れない。
もし攻下法で治療すると、胃中は空虚になり、
邪気は胸膈を障害するので患者は心中懊憹する。
舌に苔が生えていれば、熱は身体上部にある。梔子豉湯で治療する。処方を記載。第十一法。
肥梔子十四個、裂く 香豉四合、布で包む
右の二味は、四升の水で、梔子を煮て二升半にしてから、
滓を除き、香豉を入れ、一升半になるまでさらに煮て、滓を除き、二回に分けて服用する。
温かいうちにはじめの一服を飲んで、嘔吐してすっきりすれば、二服目は服用しない。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢