こんにちは、小堀です。
前回(足三里が結核に効果をあげた例について(1))の続きを書いていきます。
中医学では結核を「肺癆」といいます。
発病の大きな原因として、正気の虚弱があり、
抵抗力が弱まるところに肺虫が侵入するものとされています。
正気が旺盛であれば感染しても発病しませんが
正気の不足があれば発病率はあがり、病の軽重も関係してきます。
これにはAIDSだけではなく貧困や食料難など、原因は多々ありそうです。
肺は潤を喜び燥を嫌います。
肺が病を受けると陰分が侵され、
陰虚肺燥の症状が現れるようになります。
すると水を主る腎に影響が波及したり
津から血を化生できなければ、心にも影響が及び
陰虚火旺となります。
また肺は清気を取り込み、脾は水穀の精微をつくることで
どちらも後天の気に関与しているため
互いに影響をうけ肺脾同病になります。
後期になると陰の損傷が陽に及んで
肺・脾・腎ともに損なわれて陰陽両虚に至ります。
足三里は、古来から長寿の灸・強壮の要穴とされていて、
松尾芭蕉の「おくの細道」でもでてきたりと有名です。
主治としては、健脾養胃・補中益気。
肺癆の治療は、肺だけではなく、
脾や腎も補うことが重要です。
「医学正伝」では、
一つは、則ちその虫を殺し、その根本を絶つ。
もう一つは、その虚を補い、その真元を復元させる。
という二大治則を示しています。
足三里へのお灸で肺の母である脾を補うことにより肺を助け、
また、脾胃の運化吸収力を高め後天を補うことで
先天の精を養うことができます。
そうすることで、免疫力の低下を防ぎ、
治療効果がでたのだと思われます。
極限状態での人間の生命力を感じずにはいれませんが、
ひとり、ひとりと元気になった方々の存在が、
他の患者さんの大きな希望となることで、
精神的な作用も大きいのではないかと想像します。
ただ、誰しもが足三里へお灸をすれば
健康になれる、というものではありません。
こちらの例では胃の気の弱りが根底としてあると考えられ、
同じように松尾芭蕉の時代でも
栄養がそれほど充実していた時代ではないことから
胃の気が不足していたと思われます。
現代の日本のように、栄養過多になりやすい環境の中で
同じようにすればいいというものではなく、
また個人の体質や病の軽重も異なりますので
それぞれの体における過不足を見極めなくてはいけません。
参考文献:
『臨床医学各論』 医歯薬出版株式会社
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『いかに弁証論治するか』東洋学術出版社
『中医病因病機学』東洋学術出版社
『温病学入門』東洋学術出版社
『中医内科学』 東洋学術出版社
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
小堀