又経穴にかかわらずして病の処在を刺す、
これを散針といふ、
徐氏又これを天応穴と云う、
今の針科多くは此れ散針の一法のみ、
たとえ経穴を考えて刺す者あれど迎随の理をしらず、
故に針其経に中るといえども迎えてうばい、
随てすくうの義なし、
又長針を以てふかく刺すゆえ、
経脉をつらぬきとおして、
針むなしく臓腑に入て損傷をなす、
古人の禁ずるところ也、慎むべし。
もろもろの経脉みな外に有って針裏に入る其用なし、
其穴によって針入こと二分、あるいは二分半、
あるいは三分おのおの分あり、
故に昔は周身三百六十穴、
針も亦三百六十本ありて
其経を刺すにその針をもってす。
それ針を刺す者よく知れ、
みだりに深く刺して損ぜざるを損じ、
傷らざるに傷れを成すべからず。
~『鍼灸重宝記』より~