【原文】
七十六難曰、何謂補瀉。
当補之時、何所取気。
当瀉之時、何所置気。
然。
当補之時、従衛取気、
当瀉之時、従栄置気。
其陽気不足、陰気有余、
当先補其陽、而後瀉其陰。
陰気不足、陽気有余、
当先補其陰、而後瀉其陽。
栄衛通行。此其要也。
【現代語訳】
補瀉とは何を言うのか。
補う時はどこから気を取り、
瀉す時はどこから気を散じれば良いのか。
答え。
補う時は浅く刺して衛気を取り、
瀉す時は深く刺して営気を散ずる。
陽気が不足し、陰気が有余であれば、
まずその陽を補い、その後に陰を瀉す。
陰気が不足し、陽気が有余であれば、
まずその陰を補い、その後に陽を瀉す。
栄衛の気が協調して流れるようにすることが、
刺鍼の重要な原則となる。
【解説】
当難では、補瀉の方法とその手順を論じている。
病に虚実の区別があり、
その治療方法には補瀉がある。
虚は補い、実は瀉すのは原則であり、
その手順は
先に虚を補い、その後に実を瀉す
ことである。
当難では
補は衛から、瀉は営からと記述されているが、
『難経解説』(東洋学術出版社)では
補は衛からとは、
すなわち浅く鍼を留め、得気の後に鍼を内に入れて
流散している気を脈中に収める
とされており、
反対に実は営からとは、
鍼を深く留め、得気の後に鍼を外に引き上げ
脈中の気を外に放散させる
とされている。
『黄帝内経霊枢』終始篇には
「陰盛而陽虚、先補其陽、後写其陰而和之。
陰虚而陽盛、先補其陰、後写其陽而和之。」
(「陰脈が旺盛で陽脈が虚弱の病証は、
先に陽脈を補い、後に陰脈を瀉して
陰の有余と陽の不足を調和する。
陰脈が虚弱で陽脈が旺盛の病証は、
先に陰脈を補い、後に陽脈を瀉して
陰の不足と陽の有余を調和する。」)
と述べられている。
<参考文献>
『難経鉄鑑』 たにぐち書店
『難経解説』 東洋学術出版社
『現代語訳◉黄帝内経霊枢 上巻』 東洋学術出版社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
下野