こんにちは、本多です。
今回は腹證奇覧に記載している、
槐実の證の記事を掲載致します。
槐実
図の如く、簾を横に巻きたる如く竪に筋ありて、其の筋は凸なり。
或は腹痛、或は陰嚢に引き痛む。世に疝気と号する者、
此の證至って多し。或は張痛、或は鼓痛し百薬を以って治せざるもの、
此の腹證に合するときは、右の方を以って治せざることなし。
或は大腹痛の百薬効なきもの、其の余、何病を問わず此の腹證に合するもの、
皆治せざること無し。
槐実の方
槐実(皮を去って百六十戔)
空心(すきはち)に服すること十五日、證に随って薬剤を投ず。
服し了りて、二丈余の細長きものを下せば全く癒ゆ。
余、遊歴中に、尾州名古屋、某に此の方を得る。
尤も数々用いて、数々効あり。妙剤と謂うべし。
槐実(かいじつ・槐角の処方用の名を槐実ともいう)
マメ科のエンジュの成熟果実。
性味:苦・寒
帰経:肝・大腸
主な薬効と応用:
①涼血止血:大腸火盛や湿熱欝結による血便・痔出血に用いる。
方剤例⇒※槐角丸
②清肝瀉火・明目:肝火上炎の頭痛・めまい・目の充血・イライラなどの症候時に用いる。
備考:生用すると清肝に働き、炒用すると止血作用がある。虚寒に用いてはならない。
※【槐角丸:組成】
槐角(かいかく)
上記参照
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防風(ぼうふう)
セリ科のボウフウの根および根茎。
帰経:辛・甘・微温
性味:肝・脾・膀胱
主な薬効と応用:
①散風解表:風寒表証の発熱・悪寒・頭痛・身体痛などの症候時に用いる。
方剤例⇒川芎茶調散
②勝湿止痛:風寒湿痺の関節痛・筋肉のひきつりに用いる。
方剤例⇒防風湯
③祛風止痛:破傷風など、外風による痙攣・ひきつりに用いる。
方剤例⇒玉真散
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当帰(とうき)
セリ科の根をいう。根頭部を帰頭、主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。
性味:甘・辛・苦・温
帰経:心・肝・脾
主な薬効と応用:
①補血調経:
血虚による顔色につやがない・頭のふらつき・眩暈・目がかすむ
月経不順・月経痛・心悸などの症候時に用いる。
方剤例⇒四物湯
②活血行気・止痛:気滞血瘀の疼痛や腹腔内腫瘤などに用いる。
方剤例⇒桃紅四物湯
③潤腸通便:腸燥便秘時に用いる。
方剤例⇒潤腸丸
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地楡(ちゆ)
バラ科のワレモコウの地下部。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・胃・大腸
主な効能の応用:
①凉血収渋止血:血熱による鼻出血・吐血・血尿などに用いる。
方剤例⇒地楡槐角丸
②消腫止血・生肌斂瘡:癰腫蒼毒などに用いる。
備考:炒炭すると止血、生用では外用に効果がある。
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黄芩(おうごん)
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。
内部が充実し、細い円錐形をしたものを条芩、桂芩、尖芩などと称し、
老根で内部が黒く空洞になってものを枯芩、
さらに片条に割れたものを片芩と称する。
性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆
主な効能と応用:
①清熱燥湿:湿温・暑温初期の湿熱欝阻気機による、
胸苦しい・腹が張る・悪心・嘔吐・尿が濃いなどの症候に用いる。
方剤例⇒黄芩滑石湯
②清熱瀉火・解毒・凉血:肺熱の咳嗽・呼吸促迫・黄痰などの症候時に用いる。
方剤例⇒清肺湯
③清熱安胎:妊娠中の蘊熱による下腹痛などに用いる。
方剤例⇒当帰散
主な薬効と応用:他薬の配合により様々な効用を示す。
柴胡と往来寒熱を除き、白芍と下痢を抑え、桑白皮と肺火を除き、
白朮と安胎に働き、山梔子と胸膈火熱を除き、荊芥・防風と肌表の熱を清解する。
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枳殻(きこく)
ダイダイ・イチャンレモンの成熟果実。
性味:苦・微寒
帰経:脾・胃・大腸
主な薬効と応用:
①破気消積:腸胃湿熱積滞による腹痛・便秘あるいは下痢・裏急後重などの症候時に用いる。
方剤例⇒枳実導滞丸
②化痰消痞:胸脇の痰飲で胸が痞えて苦しい・呼吸促迫などの症候時に用いる。
方剤例⇒通導散
備考:幼果で小さいものが枳実、成熟した大きな果実が枳殻となる。
効能はほぼ同じだが、枳実の方が猛烈な効き目となる。
【抵當湯・抵當丸:提要と主治】
清熱燥湿として作用し、
他に、清腸止血・疏風利気の効能がある。
参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会
画像:
『腹証奇覧 正編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004913
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本多