張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 百八十一章と百八十二章。
百八十一章では太陽病に誤った治療を行い、陽明腑実証が出現した場合について。
百八十二章では陽明病で現れる外症について詳しく述べております。
百八十一章
問曰、何緣得陽明病。
答曰、太陽病、若發汗、若下、若利小便、此亡津液、胃中乾燥、因轉屬陽明。
不更衣、内實大便難者、此名陽明也。
和訓:
問いて曰く、何に縁りて陽明病を得るかと。
答えて曰く、太陽病、若しくは汗を発し、若しくは下し、若しくは小便を利し、
此れ津液を亡し、胃中乾燥し、因りて陽明に転属す。
更衣せず、内実し、大便難なるものは、此れ陽明と名づくるなりと。
・問曰、何緣得陽明病。
答曰、太陽病、若發汗、若下、若利小便、此亡津液、胃中乾燥、因轉屬陽明
太陽病で経に従って発汗、或いは誤下、利尿治療などを行ったことにより、
津液が著しく傷つき、胃中が乾燥、津と相済することができず、
邪熱の内陥が起こり、内でそれらがともに合わさって食滞が生じ、陽明病となった。
・不更衣、内實大便難者、此名陽明也
古人はトイレに行く際、必ず更衣を行っていたのでトイレに行くことを更衣という。
なので、不更衣は不大便という意味になる。
腑気が通じず、大便が硬いという陽明内実証が出現したため
大便が出にくい状態になった。
提要:
太陽病に誤った治療を行い、陽明腑実証が出現した場合について。
訳:
問い。どうして陽明病がおこるのでしょうか。
答え。太陽病に罹った時に、或いは発汗、或いは攻下、或いは利尿による治療を受けた結果、
津液が消耗し、胃腸中は乾燥し、すると邪気は陽明に転入して来る。
それで大便秘結するので更衣せず、内に実邪を有するので大便燥結し、
大便乾燥して大便難という症状がみられるが、これらはすべて陽明病と言うのである。
百八十二章
問曰、陽明病外證云何。答曰、身熱、汗自出、不惡寒、反惡熱也。
和訓:
問いて曰く、陽明病の外証は如何と。
答えて曰く、身熱し、汗自ら出で、悪寒せず、反って悪熱するなりと。
・問曰、陽明病外證云何。答曰、身熱、汗自出、不惡寒、反惡熱也。
陽明病は裏で熱盛になったものであるから、
太陽病表証の発熱・悪寒とその病理は同じではない。
陽明病で出現する身熱は、外表に熱蒸したために起こる。
自汗出は津が裏熱に迫られて外へ溢れたために起こる。
表証ではないので悪寒はないが、
裏熱が甚だしいために、反対に熱を嫌うようになる。
これは陽明病特有の熱型であり、
その熱の勢いや昂ぶりは太陽病や少陽病のそれとは比べものにならない。
提要:
陽明病で現れる外症について。
訳:
問い。陽明病の証候で、外に現れるものにはどんなものがあるでしょうか。
答え。身体の発熱、自然に汗が出る、悪寒がない、かえって暑がるなどである。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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為沢