生死を候ふは臍の下三寸関元の穴を
手さきにて押してみるに力なく、
空虚にして指を動かし見るに中くぼにて
立に溝あり指の陥るやうなるは死す。
此穴は天の一元の気をうけ始る所、
すなはち一身の大極と云所なり、
経に曰く臍下腎間の気は
乃ち人の生命十二経の根本なり、
三焦は則ち元気の別便とあり、
此の三焦の根本よりはじまり
又三焦より終るしかれば死する者
かならず三焦の部一元の気なきゆへなり、
其一元の気をよくうかがひ有無をしるときは、
生死を弁へ知るなり、
さて胸の下堅く石をなづる如くなるは
かならず死す。
此外腹心の伝受あれども
医の秘密なれば猥にあらはさず。
又見脉にて生死をしるべし、
見脉よき人は床につき、
不食すと云うとも本復すべし、
見脉も腹もあしきはかならず死す。
(鍼灸重宝記)