病人を仰きに臥さして足をのべさせ、
両手を股のわきに付させ、
男は左、女は右の乳下を手の平にて押え、
病人の心をしづめ、
息五六呼ほどして其手をおろし、
上脘より押へてしづかに左右をうかがひ見る。
男は左、女は右を先にみるに、
心よきは虚なり、押えて痛むは実なり、
軽く押えていたむは邪表にあり、
おもく押へて痛むは邪裏にあり。
臍より胸の間すきて臍より下ふくれて
押えごたえあるは腎精の実にてよし、
胸の下ふくれ臍下すきたるは腎の虚なり、
臍の上下なれあふて何のさわりもなく
押えごたへあるは無病の人なり。
或は堅くあるひは猥りにやわらかにして、
木の枝などを袋に入れてさぐるやうなるは
たとひくるしみなしといふとも病あり、
左右の立筋はりてあるは性気の虚なり。
(鍼灸重宝記)