こんにちは、本多です。
今回の記事は腹證奇覧に記載している、
抵當湯・抵當丸の證の記事を掲載致します。
抵當湯或抵當丸
図の如く、腹中軟満にして者あり。雞子殻の如きもの、
水中に浮かびてあるが如く、之を按ずれば則ち沈み、手を去るに随って浮ぶ。
或は之を按じて傍へ去り、その数は或は一・二、或は五・六。
其の人の面顔唇手足、共に青白色に透き通る如くして沢なし。
或は黄色なる容は労瘵の如し。
小便不利、大便は硬きも反って易し。
其の色黒く、或は塊物の臍下臍傍、或は陰門、或は陰茎辺、
或は小腹、或は腹中来去遊走のもの、
又、本文の如く腹は満せざるに其の人「我は満す」と言う者に用う。
【抵當湯・抵當丸:組成】
水蛭(すいてつ)
ヒルド科のウマビル、チャイロビル、チスイビルなどの全虫体。
性味:鹹・苦・平
帰経:肝
主な薬効と応用:
①破血逐瘀・消癥:血瘀による無月経・腹腔内腫瘤などに用いる。
方剤例⇒大黄䗪虫丸
備考:生きた水蛭を外用し吸血させると、癰腫・丹毒に有効。
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虻虫(ぼうちゅう)
アブ科の昆虫、またはその他同属昆虫の雌の全虫体。
性味:苦・微寒・有毒
帰経:肝
主な薬効と応用:
①破血逐瘀・消癥:血瘀による無月経・腹腔内腫瘤などに用いる。
方剤例⇒大黄通経丸
備考:打撲損傷の腫脹・疼痛時に用いる。
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桃仁(とうにん)
バラ科のモモ、ノモモなどの成熟種子。
性味:苦・甘・大腸
帰経:心・肝・大腸
主な薬効と応用:
①破瘀行血:血瘀による無月経・
月経痛・下腹部の腫瘤などの症候時に用いる。
方剤例⇒桃紅四物湯
②潤腸通便:腸燥便秘時に用いる。
方剤例⇒五仁丸
備考:血分に偏し破瘀生新に優れる。
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大黄(だいおう)
タデ科のダイオウ属植物の根茎や根。
性味:苦・寒
帰経:脾・胃・大腸・肝・心包
主な薬効と応用:緩下・駆瘀血
①瀉熱通腸:胃腸の実熱による、
便秘・腹痛・高熱・意識障害などに用いる。
方剤例⇒大承気湯
②清熱瀉火:火熱上亢による、
目の充血・咽喉の腫痛・鼻出血など上部の火熱の症候に用いる。
方剤例⇒三黄瀉心湯
③行瘀破積:血瘀による無月経や腹痛時に用いる。
方剤例⇒復元活血湯
④清火湿熱:湿熱の黄疸時に用いる。
方剤例⇒茵蔯蒿湯
備考:生用すると瀉下の働きが強くなり、
酒を吹きかけ火で焙ると上部の火熱を清し活血化瘀の働きが強くなり、
酒とともに蒸すと瀉下の力が緩やかになり、
炒炭すると化瘀止血に働く。
【抵當湯・抵當丸:提要と主治】
太陽病に罹って六七日が経つが、未だ表証があり、
脈は微・沈であるので、かえって結胸証は出現せず
患者は狂躁不穏の状態となるは、下焦に邪熱があるからだ。
この場合は、水蓄と瘀血の違いはあるが、少腹は硬く膨満するはず。
小便が通利する場合は、下血薬を用いれば癒える。
こういうことがおこるのは、太陽病の邪熱が太陽経を伝って下行し、
裏で邪熱が瘀滞凝結するからである。
傷寒論: 弁太陽病脈証并治(中)百二十四章
↑こちらに抵當湯の記事を記載しておりますので、
ご参照下さい。
参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会
画像:
『腹証奇覧 正編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004913
是非参考文献を読んでみて下さい。
本多