こんにちは、為沢です。
美術館好きの患者さんに「最近なんか良いのやってませんか?」と聞きましたら
「今、大阪国際美術館で”何とか”っていう外国人の写真家さんの展示会してますよ」
ということで調べてみたら、アンドレアス・グルスキー氏という
ドイツ人の写真家さんの展示会がやってるみたいです。
作品見てみると、面白い構図の作品が多いので御勉強に見に行ってみようかと思います。
ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百六十八章。
誤治により傷津・熱盛になった場合の証治について詳しく述べております。
弁太陽病脈証并治(下)百六十八章
傷寒若吐若下後、七八日不解、熱結在裏、表裏倶熱、
時時惡風、大渇、舌上乾燥而煩、
欲飮水數升者、白虎加人参湯主之。方三十。
知母六兩 石膏一斤、砕 甘草二兩、炙 人参二兩 粳米六合
右五味、以水一斗、煮米熟湯成、去滓、溫服一升、日三服。
此方立夏後、立秋前乃可服、立秋後不可服。
正月二月三月尚凜冷、亦不可与服之、与之則嘔利而腹痛。
諸亡血虚家、亦不可与、得之則腹痛利者、但可溫之、当愈。
和訓:
傷寒若しくは吐し若しくは下して後、七八日解せず、熱結して裏に在り、
表裏倶に熱し、時時悪風し、大いに渇し、舌上乾燥して煩し、
水数升を飲まんと欲するものは、白虎加人参湯之を主る。方三十。
知母六両 石膏一斤、砕く 甘草二両、炙る 人参二両 粳米六合
右五味、水一斗を以て、米を煮て熟して湯成れば、滓を去り、一升を温服し、一日に三服す。
此の方立夏の後、立秋の前は乃ち服すべきも、立秋の後は服すべからず。
正月二月三月尚凜冷にして、亦之を与服すべからず、之を与うれば則ち嘔利して腹痛す。
諸の亡血虚家も亦与うべからず、之を得て則ち腹痛して利するものは、但だ之を温むべし。当に愈ゆべし。
・傷寒若吐若下後、七八日不解、熱結在裏
傷寒証で誤って吐法・下法を行った結果、
気・津がどちらも傷つき、7〜8日経過しても解けない場合、
邪は必ず転化して裏に内伝し、陽明裏熱証を呈するようになる。
・表裏倶熱、時時惡風、大渇、
舌上乾燥而煩、欲飮水數升者、白虎加人参湯主之
熱が内に結し、外まで蒸れ出るから、
表裏どちらも熱があり、蒸れ出て汗出し、
表気が固まらないので、常に風に当たるのを嫌う。
裏では熱により胃の津液がひどく傷つくので大渇が生じ、
舌が乾燥して、気分がイライラするから、水を大量に飲みたがるのである。
これらの症状は陽明経に邪が蔓延して、
胃の津気を損傷させたために起こった症状である。
従って白虎加人参湯で清熱・益気・生津を行えばよい。
白虎加人参湯
・知母(ちも)
基原:
ユリ科のハナスゲの根茎。
知母は苦寒で質柔性潤であり、
上は肺熱を清して瀉火し
下は腎火を瀉して滋陰し、中は胃火を瀉して煩渇を除き、
清熱瀉火と滋陰潤燥の効能をもつので、
燥熱傷陰には虚実を問わず使用できる。
熱病の煩渇・消渇・肺熱咳嗽・
陰虚燥咳・骨蒸潮熱などに適し、
滋陰降火・潤燥潤腸の効能があるため、
陰虚の二便不利にも用いる。
・石膏
基原:
含水硫酸カルシウム鉱石。
組成はほぼCaSO4・2H2Oである。
石膏は辛甘・大寒で、肺・胃の二経に入り、
甘寒で生津し、辛で透発し、
大寒で清熱し清熱瀉火するとともに散熱し、
外は肌表の熱を透発し内は肺胃の熱を清し、
退熱生津により除煩止渇するので、
肺胃二経の気分実熱による高熱汗出・煩渇引飲・脈象洪大、
肺熱の気急鼻扇・上気喘咳、
胃火熾盛の頭痛・歯齦腫痛
口舌生瘡などに、非常に有効である。
・甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、
補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・
緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。
・人参
基原:
ウコギ科のオタネニンジンの根。
加工調整法の違いにより種々の異なった生薬名を有する。
人参は甘・微苦・微温で中和の性を稟け、
脾肺の気を補い、生化の源である
脾気と
一身の気を主る肺気の充盈することにより、
一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。
元気が充盈すると、益血生津し安神し智恵を増すので、
生津止渇・安神益智にも働く。
それゆえ、虚労内傷に対する第一の要薬であり、
気血津液の不足すべてに使用でき、脾気虚の倦怠無力・食少吐瀉、
肺気不足の気短喘促・脈虚自汗、心神不安の失眠多夢・驚悸健忘、
津液虧耗の口乾消渇などに有効である。
また、すべての大病・久病・大吐瀉による
元気虚衰の虚極欲脱・脈微欲絶に対し、もっとも主要な薬物である。
・粳米(こうべい)
基原:
イネ科イネの種子。玄米。
粳米の性味は平、甘で帰経は脾、胃である。
和胃護津に働き、清熱薬による傷胃を防止すると共に、
石膏との配合で甘寒生津に働く。
提要:
誤治により傷津・熱盛になった場合の証治について。
訳:
傷寒の病を吐かせたり下したりしたが、七八病日になってもまだ治癒せず
かえって熱邪が裏に凝結し、表裏ともに熱して、時々悪風があり、
口渇は極めて強く、舌表面が乾燥していてイライラし、
水を多く飲みたがる場合は、白虎加人参湯で治療する。処方を記載。第三十法。
知母六両 石膏一斤、砕く 甘草二両、炙る 人参二両 粳米六合
右の五味を、一斗の水で、米粒がやわらかくなるまでよく煮て、
湯の状態になれば滓を除き、一回に一升を、一日に三回温服する。
この処方は立夏よりあと、立秋の前まで服用してよいが、立秋以降は服用してはならない。
正月、二月、三月はまだ寒ざむとしているので、やはり服用させてはならず、
服用させると嘔吐下痢して腹痛が起こる。亡血その他正気が虚している人にも与えてはならず、
服用して腹痛下痢する場合は、温めてやるだけで、治るはずだ。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢