こんにちは、為沢です。
↑こちら12月13日公開の「ゼロ・グラビティ」という映画です。
私、宇宙モノに目がありません。
予告編だけ見るとパニック映画のような恐い描写です。でも観ます(笑)
すみません、脱線しました。傷寒論の記事です。
ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百五十七章。
この章では、心下痞に胃中不和が出現した場合の証治について
詳しく述べております。
弁太陽病脈証并治(下)百五十七章
傷寒汗出解之後、胃中不和、心下痞鞕、乾噫食臭、
脇下有水氣、腹中雷鳴、下利者、生薑瀉心湯主之。
生薑四兩、切 甘草三兩、炙 人參三兩 乾薑一兩
黄芩三兩 半夏半升、洗 黄連一兩 大棗十二枚、擘
右八味、以水一斗、煮取六升、日三服。
附子瀉心湯、本云加附子、半夏瀉心湯、甘草瀉心湯、同体別名耳。
生薑瀉心湯、本云理中人参黄芩湯、去桂枝、朮、加黄連并瀉肝法。
和訓:
傷寒汗出で之を解して後、胃中和せず、心下痞鞕、食臭を乾噫し、
脇下に水気あり、腹中雷鳴、下利するものは、生薑瀉心湯之を主る。
生薑四両、切る 甘草三両、炙る 人参三両 乾薑一両
黄芩三両 半夏半升、洗う 黄連一両 大棗十二枚、擘く
右八味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再び煎じて三升を取り、
一升を温服し、日に三服す。附子瀉心湯、本に云う附子を加うと。半夏瀉心湯、甘草瀉心湯、同体別名のみ。
生薑瀉心湯、本に云う理中人参黄芩湯、桂枝、朮を去り、黄連を加え瀉肝の法を并すと。
・傷寒汗出解之後、胃中不和
傷寒で発汗したあと表は解け、
病は治癒したのであるが、その後、胃中不和が出現した。
・心下痞鞕、乾噫食臭
心下痞は押圧しても軟らかく痛まないが、
ここでいう硬いは胃中不和が原因して起こる症状に対してである。
胃中不和は病人の本来の体質が、
脾胃の健弱なので脾胃の気機昇降作用がスムーズに行われないのと、
発汗後体力がまだ回復しないために起こった症状である。
胃の受納作用が正常に働かず、
水穀を腐熟する力が弱いために水滞と食滞が同時に起こり
寒熱の昇降の気機が失調するので、心下痞鞕が出現したのである。
ここでいう心下痞鞕は、
心下痞と穢物などの食滞が心下部にあることを表現しているのであって、
決して結胸証の”痛・実”を指しているのではない。これは痞証である。
食滞、気逆により おくび、食臭が起こる。
水が気化せず脇下部に流れる。
水穀を分けられず腸間の間を走るので雷鳴下痢となる。
この場合は生薑瀉心湯で健脾和胃、散水消痞を行っていくとよい。
生薑瀉心湯
・生薑
基原:
ショウガ科のショウガの新鮮な根茎。
日本では、乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜を乾生姜という
こともあるので注意が必要である。
生薑は辛・微温で肺に入り
発散風寒・祛痰止咳に、
脾胃に入り
温中祛湿・化飲寛中に働くので
風温感冒の頭痛鼻塞・痰多咳嗽および水湿痞満に用いる。
また、逆気を散じ嘔吐を止めるため、
「姜は嘔家の聖薬たり」といわれ
風寒感冒・水湿停中を問わず
胃寒気逆による悪心嘔吐に非常に有効である。
・甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・
止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると
寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。
・人参
基原:
ウコギ科のオタネニンジンの根。
加工調整法の違いにより種々の異なった生薬名を有する。
人参は甘・微苦・微温で中和の性を稟け、
脾肺の気を補い、生化の源である
脾気と一身の気を主る
肺気の充盈することにより、
一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。
元気が充盈すると、益血生津し安神し智恵を増すので、
生津止渇・安神益智にも働く。
それゆえ、虚労内傷に対する第一の要薬であり、
気血津液の不足すべてに使用でき、
脾気虚の倦怠無力・食少吐瀉、
肺気不足の気短喘促・脈虚自汗、
心神不安の失眠多夢・驚悸健忘、
津液虧耗の口乾消渇などに有効である。
また、すべての大病・久病・大吐瀉による
元気虚衰の虚極欲脱・脈微欲絶に対し、もっとも主要な薬物である。
・乾薑
基原:
ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。
乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって
辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。
陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。
・黄芩
基原:
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根、
内部が充実し、
細かい円錐形をしたものを条芩、
枝芩、尖芩などと称し、
老根で内部が黒く空洞になったものを枯芩、
さらに片状に割れたものを片芩と称する。
黄芩は苦寒で、苦で燥湿し寒で清熱し、
肺・大腸・小腸・脾・胆経の湿熱を
清利し、
とくに肺・大腸の火の清泄に長じ肌表を行り、安胎にも働く。
それゆえ、熱病の煩熱不退・肺熱咳嗽・湿熱の痞満・
瀉痢腹痛・
黄疸・懐胎蘊熱の胎動不安などに常用する。
また瀉火解毒の効能をもつので、
熱積による吐衄下血あるいは
癰疽疔瘡・目赤腫痛にも有効である。
とくに上中二焦の湿熱火邪に適している。
・半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。
半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し、
逆気が下降すると
胃気が和して痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
また、適当な配合を行えば、
痰湿犯胃の咳喘・胃虚や胃熱の嘔吐・
痰湿入絡の痰核などにも使用できる。
このほか、行湿通腸するので老人虚秘にも効果がある。
生半夏を外用すると癰疽腫毒を消す。
・黄連
基原:
キンポウゲ科のオウレン、
及びその他同属植物の根をほとんど除いた根茎。
以上は日本産である。
中国産は同属の川連・味連、雅連・峨眉連、
野黄連・鳳眉連、雲連などに由来する。
黄連は大苦大寒で、寒で清熱し苦で燥湿し、
心・胃・肝・胆の実火を清瀉し、
胃腸積滞の湿熱を除き、
清心除煩・消痞・止痢に働き、
湿火欝結に対する主薬である。
それゆえ、心火熾盛の煩熱神昏・心煩不眠、
肝胆火昇の目赤腫痛・羞明流涙、
胃熱の清穀善飢、
腸胃湿熱の痞満嘔吐・腹痛泄瀉などの要薬である。
また、清熱泄火・解毒にも働くので、
疔毒癰腫・口舌潰瘍・湿瘡瘙痒および
迫血妄行の吐血衄血にも有効である。
・大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。
またはその品種の果実。
甘温で柔であり、
補脾和胃と養営安神に働くので、
脾胃虚弱の食少便溏や
営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。
また薬性緩和にも働き、
峻烈薬と同用して薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止する。
ここでは、脾胃を補うとともに
芍薬と協同して筋肉の緊張を緩和していく。
また、生薑との配合が多く、
生薑は大棗によって刺激性が緩和され、
大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、
大棗が営血を益して発汗による
傷労を防止し、
営衛を調和することができる。
提要:
心下痞に胃中不和が出現した場合の証治について。
訳:
傷寒の病に罹り、発汗を行って表証がとれたあと、胃中不和により、
心下部が痞満して硬くなり、曖気が出て不消化しの臭いがあり、脇下に水気があって、
腹中にゴロゴロと腸鳴が聞こえ、下痢があれば、生薑瀉心湯で治療する。処方を記載。
生薑四両、切る 甘草三両、炙る 人参三両 乾薑一両
黄芩三両 半夏半升、洗う 黄連一両 大棗十二個、裂く
右の八味を、一斗の水で、六升になるまで煮て、滓を除き、三升になるまで更に煎じ、
一升を温服し、一日に三回服用する。附子瀉心湯は、別本には附子を加えるとある。
半夏瀉心湯は、甘草瀉心湯と名称はちがうが同じ物である。
生薑瀉心湯は、別本では理中人参黄芩湯から、桂枝と朮を除いて、黄連を加え、瀉肝の方法を併用したものと記載している。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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為沢