画材屋にて
画材屋にて

こんにちは、為沢です。
画像は、月1回くらい行く画材屋にて。
足りなくなった色を補充しに買いに来たりします。
趣味の話ですみません。


ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百四十九章。
この章では、柴胡湯証に誤って下法を行ったあと、
三通りの病証が出現したことと、
その治法について詳しく述べております。


弁太陽病脈証并治(下)百四十九章

傷寒五六日、嘔而發熱者、柴胡湯證具、而以他藥下之、
柴胡證仍在者、復與柴胡湯、
此雖已下之、不爲逆、必蒸蒸而振、却發熱汗出而解、
若心下滿而鞭痛者、此爲結胸也、大陥胸湯主之、
但滿而不痛者、此爲痞、柴胡不中與之、宜半夏瀉心湯。
半夏半升、洗 黄芩 乾薑 人參 甘草炙、各三兩 黄連一兩 大棗十二枚、擘
右七味、以水一斗、煮取六升、去滓、

再煎取三升、溫服一升、日三服。須大陥胸湯者、方用前第二法。

和訓:
傷寒五六日嘔して発熱するものは、
柴胡湯証具わり、而るに他薬を以て之を下し、

柴胡証仍在るものは、復た柴胡湯を与う。
此れ已に之を下したりと雖も、
逆と為さず、必ず蒸蒸として振い、

却って発熱し汗出でて解す。
若し心下満して鞭痛するものは、此れ結胸を為すなり。

大陥胸湯之を主る。但だ満して痛まざるものは、
此れ痞と為し、柴胡は之を与うるに中らず、半夏瀉心湯に宜し。
半夏半升、洗う 黄芩  乾薑 人参 甘草炙る、各三両 黄連一両 大棗十二枚、擘く
右七味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、
再び煎じて三升を取り、一升を温服し、一日に三服す。
大陥胸湯を須いるもの、方は前の第二法を用う。


傷寒五六日、嘔而發熱者、柴胡湯證具、而以他藥下之
傷寒5〜6日頃、一般に病は少陽に内伝する。
「嘔而發熱」は小柴胡湯の主証であるので、
小柴胡湯で和解少陽を行えばよい。

しかし誤って他薬で下法を行い、以下の病証が出現する。

柴胡證仍在者、復與柴胡湯
誤下のあとでも柴胡湯証が残る場合で、
誤下でも変化が残らなかったのだから、

治療は小柴胡湯を用いて枢の働きを高め、
少陽の邪を解いていけばよい。

此雖已下之、不爲逆、必蒸蒸而振、却發熱汗出而解
誤下によって、正気が傷つき邪に抵抗する力が不足すれば、
正気は薬力の助けを得ながら、邪気を表に致らせ追いだしていく。
この時、戦汗が起こり病は治っていく。

若心下滿而鞭痛者、此爲結胸也、大陥胸湯主之
誤下のあと熱邪が内陥して、心窩の水飲と衝突・結合して
大陥胸証となる場合で、心窩硬満して
押圧すれば痛むほどの症状が見られれば、

大陥胸湯を用いて瀉熱・開結・逐水を行っていけばよい。

但滿而不痛者、此爲痞、
柴胡不中與之、宜半夏瀉心湯

誤下のため、少陽の熱邪が内陥したため、
中焦が虚し気機の昇降が失調して、しかも裏に実邪が無い場合
それは邪が中焦の気機を滞らせたからであり、
心窩満があるが押圧しても痛まないという症状が現れる。
治療は半夏瀉心湯で中焦に寒熱が
阻結し痞閉しているのを除き、

上逆により嘔吐しているのを治し、
胃気を益して中焦を安定させていくのである。

小柴胡湯

こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(中)三十六章・三十七章

 

大陥胸湯

こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百三十二章・百三十三章・百三十四章

 

半夏瀉心湯

 

半夏
半夏

半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。

半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し、
逆気が下降すると
胃気が和して痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、
痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、

痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
また、適当な配合を行えば、痰湿犯胃の咳喘・
胃虚や胃熱の嘔吐・
痰湿入絡の痰核などにも使用できる。
このほか、行湿通腸するので老人虚秘にも効果がある。
生半夏を外用すると癰疽腫毒を消す。

 

黄芩
黄芩

黄芩
基原:
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根、
内部が充実し、
細かい円錐形をしたものを
条芩、枝芩、尖芩などと称し、

老根で内部が黒く空洞になったものを枯芩、
さらに片状に割れたものを片芩と称する。

黄芩は苦寒で、苦で燥湿し寒で清熱し、
肺・大腸・小腸・脾・胆経の湿熱を
清利し、
とくに肺・大腸の火の
清泄に長じ肌表を行り、安胎にも働く。

それゆえ、熱病の煩熱不退・肺熱咳嗽・湿熱の痞満・瀉痢腹痛・
黄疸・懐胎蘊熱の胎動不安などに常用する。
また瀉火解毒の効能をもつので、
熱積による吐衄下血あるいは
癰疽疔瘡・目赤腫痛にも有効である。

とくに上中二焦の湿熱火邪に適している。

 

乾薑
乾薑

乾薑
基原:
ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。

乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって
辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。

陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・
吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、

風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。

 

人参
人参

人参
基原:
ウコギ科のオタネニンジンの根。

加工調整法の違いにより種々の異なった生薬名を有する。


人参は甘・微苦・微温で中和の性を稟け、

脾肺の気を補い、生化の源である
脾気と一身の気を主る肺気の充盈することにより、


一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。

元気が充盈すると、益血生津し安神し
智恵を増すので、
生津止渇・安神益智にも働く。


それゆえ、虚労内傷に対する第一の要薬であり、

気血津液の不足すべてに使用でき、脾気虚の倦怠無力・食少吐瀉、

肺気不足の気短喘促・脈虚自汗、心神不安の失眠多夢・驚悸健忘、

津液虧耗の口乾消渇などに有効である。

また、すべての大病・久病・大吐瀉による

元気虚衰の虚極欲脱・脈微欲絶に対し、もっとも主要な薬物である。


 

甘草
甘草

甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。

甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、
補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・
緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。

そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると

寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。

 

黄連
黄連

黄連
基原:
キンポウゲ科のオウレン、

及びその他同属植物の根をほとんど除いた根茎。
以上は日本産である。


中国産は同属の川連・味連、
雅連・峨眉連、野黄連・鳳眉連、
雲連などに由来する。

黄連は大苦大寒で、寒で清熱し苦で燥湿し、
心・胃・肝・胆の実火を清瀉し、
胃腸積滞の湿熱を除き、
清心除煩・消痞・止痢に働き、
湿火欝結に対する主薬である。

それゆえ、心火熾盛の煩熱神昏・心煩不眠、
肝胆火昇の目赤腫痛・羞明流涙、

胃熱の清穀善飢、腸胃湿熱の痞満嘔吐・腹痛泄瀉などの要薬である。
また、清熱泄火・解毒にも働くので、
疔毒癰腫・口舌潰瘍・湿瘡瘙痒および
迫血妄行の吐血衄血にも有効である。

 

大棗
大棗

大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。
またはその品種の果実。


甘温で柔であり、
補脾和胃と養営安神に働くので、
脾胃虚弱の食少便溏や
営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。
また薬性緩和にも働き、
峻烈薬と同用して薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止する。
ここでは、脾胃を補うとともに
芍薬と協同して筋肉の緊張を緩和していく。
また、生薑との配合が多く、
生薑は大棗によって刺激性が緩和され、
大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、
大棗が営血を益して発汗による
傷労を防止し、
営衛を調和することができる。

提要:
柴胡湯証に誤って下法を行ったあと、
三通りの病証が出現したことと、その治法について

訳:
傷寒に罹って五六日が経ち、嘔吐して発熱があれば、
柴胡湯証はすでに備わっているのに、
医者が誤って他の薬を使って攻下してしまった。

しかしそれでもなお柴胡湯証があれば、
また柴胡湯で治療すればよい。

これは已に攻下してしまったとはいえ、
重大な誤治ではない。

柴胡湯を服用するとそのあと
必ずまず悪寒戦慄が現れ、
その後に発熱し汗が出て病は癒える。

もし心下部が膨満して硬く、そして痛むなら、
結胸証なので、大陥胸湯で治療せねばならない。

もし心下部がただ膨満して
不快なだけで痛まなければ、痞証であり、

柴胡湯は適応せず、半夏瀉心湯で治療するのがよい。処方を記載。
半夏半斤、洗う  黄芩 乾薑 人参 甘草炙る、各三両  黄連一両 大棗十二個、裂く
右の七味を、一斗の水で、六升になるまで煮て、滓を除き、
三升になるまでさらに煎じ、一回に一升を、一日に三回服用する。大陥胸湯が必要な場合は、前途の第二法の処方を用いる。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

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是非参考文献を読んでみて下さい。

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