甘遂半夏湯

甘遂半夏湯
甘遂半夏湯

図の如く、心下の毒硬満して、
或は便閉、或は下痢すと雖も硬満已まず、
食すと雖も心下より下らず、
或は心下痛み、或は気急促迫、或は脚弱歩行を憂う。
譬えば、桂枝人参湯、或は朮防已去石膏加茯苓芒硝湯、
或は、枳朮湯、
或は、桂姜棗草黄辛附湯、
或は、調胃承気湯等の證に似て諸薬如何ともすべからざるもの。
此の方、謹んで考うべし。
旧に余、此の證の一患者あって、
此の證を誤り、前に云う表方を用いるも効を得ず。
昼夜困苦して以って漸く此の方を与え、二十余剤を以って、
数年の患人全く癒ゆ。其の後、此の證の者に逢うごとに、
数、効を得ること譬るものなし。
其の腹診の詳らかなることは口授あって存す。


甘遂

甘遂
甘遂

トウダイグサ科のドウダイグサ属植物の根。
性味:苦・寒・有毒
帰経:肺・脾・腎
主な薬効と応用:消腫散結・去痰
①瀉水除湿:陽実水腫による、
腹水・浮腫・口渇・尿量減少・便秘などの症候時に用いる。
方剤例⇒舟車丸

②逐痰滌飲:胸部の痰飲積聚(胸水)による、
呼吸困難・胸苦しい・胸肋部痛などに用いる。
方剤例⇒十棗湯

③消腫散結:皮膚の化膿症に用いる。

半夏

半夏
半夏

サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。
性味:辛・温・有毒
帰経:脾・胃
主な薬効と応用:鎮静・鎮咳・去痰
①燥湿化痰:
湿痰の咳嗽・多痰・胸苦しさ、或いは痰濁上擾による
眩暈・不眠・悪心などの症候時に用いる。
方剤例⇒二陳湯

②降逆止嘔:
胃寒・胃熱・胃虚による嘔吐時に用いる。
方剤例⇒胃寒による嘔吐→小半夏湯
胃熱による嘔吐→黄連橘皮竹筎半夏湯
胃虚による嘔吐→大半夏湯

③消痞散結:
痰熱による心窩部の痞えなどに用いる。
方剤例⇒半夏瀉心湯

芍薬

芍薬
芍薬

ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・脾
主な薬効と応用:鎮痛・鎮痙・収斂
①補血斂陰:
血虚による顔色につやがない・頭のふらつき・
めまい・目がかすむ四肢の痺れ、月経不順などの症候に用いる。
方剤例⇒四物湯

②柔肝止痛:
肝鬱気滞による胸脇部の張った痛み・
憂鬱感・イライラなどの症候時に用いる。
方剤例⇒四逆散

③平肝斂陰:
肝陰不足・肝陽上亢によるめまい・ふらつきなどの症状に用いる。
方剤例⇒鎮肝熄風湯

甘草

甘草
甘草

マメ科のウラル甘草の根。
性味:平・甘
帰経:脾・肺・胃
主な薬効と応用:去痰・鎮咳・抗炎症
①補中益気:
脾胃虚弱で元気がない・
無力感・食欲不振・泥状便などの症候に用いる。
方剤例⇒四君子湯

②潤肺・祛痰止咳:
風寒の咳嗽時に用いる。
方剤例⇒三拗湯

③緩急止痛:
腹痛・四肢の痙攣時などに用いる。
方剤例⇒芍薬甘草湯

④清熱解毒:
咽喉の腫脹や疼痛などに用いる。
方剤例⇒甘草湯

⑤調和薬性:
性質の異なる薬物を調和させたり、偏性や毒性を軽減させる。


【主治】
心下痞堅
口舌が乾燥・頭重・短気・身体の冷え・小便瀕数など


参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像:
『腹証奇覧 正編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004913

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

本多

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