【鍼灸重宝記】四知之論 病證を見たつる法 聖
それ五臓内にて五声を出す、
歌哭呼笑呻これなり、
五音は唇舌牙歯喉に出る、
宮商角微羽これなり、
しかれば病人の声を聞いて腹中の病をしる、
たとへば哭は肺の病としる、
清涕たれ鼻ひるは肺に風寒ありとしり、
歌ってよだれ多きは脾の病としる、
怒りさけびて泪おおきは肝の病なり、
唾おほく呻くは腎の虚なり、
喜んで笑ひたわこといふは心のやまひ、
声かろきは気のよはき也、
こえの重く濁るは風のいたみ、
声出ざるは肺の病なり、
声の急なるは神の衰へなり、
声ふさがるは痰のしはざなり、
声ふるふは冷なり、
声むせぶは気の不順なり、
あえぐは気のいそがはしき也、
あくび多きは気のつかへたるなり、
此の如く病人の声を聞て病をしるを聞といひ聖といふ。
(鍼灸重宝記より)