こんにちは、為沢です。
たまに行く近所の銭湯をトレスしてみました。足伸ばして入る大浴場は格別です。
ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百四十四章・百四十五章。
百四十四章では病が少陽に伝わって、
熱が血室に侵入した場合の証治について。
百四十五章では熱入血室証が
自然に治っていく場合について詳しく述べております。
弁太陽病脈証并治(下)百四十四章
婦人中風、七八日續得寒熱、
發作有時、經水適斷者
此爲熱入血室、其血必結、
故使如瘧狀、發作有時、小柴胡湯主之。
柴胡半斤 黄芩三兩 人參三兩 半夏半斤、洗
甘草三兩 生薑三兩、切 大棗十二枚、擘
右七味、以水一斗二升、煮取六升、
去滓、再煎取三升、溫服一升、日三服。
和訓:
婦人の中風、七八日にして続いて
寒熱を得、発作するに時あり、
経水適断つものは、此れ熱血室に入ると為し、其の血必ず結し、
故に血必ず結し、故に瘧状の如く、
発作するに時あらしむ。小柴胡湯之を主る。
柴胡半斤 黄芩三両 人参三両 半夏半升、洗う
甘草三両 生薑三両、切 大棗十二個、擘
右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、
再び煎じて三升を取り、一升を温服し、一日に三服す。
・婦人中風、七八日續得寒熱
婦人が中風証に罹り、7〜8日経過した。
・發作有時、經水適斷者、
此爲熱入血室、其血必結、故使如瘧狀
寒熱往来を定期的にみる瘧疾のような症状が現れた。
これにより肝胆の気が鬱滞し、
熱邪が血室に侵入して血と結したのであるが
まだ完全に結したのではなく
停滞して循らないために月経が止まった。
・發作有時、小柴胡湯主之
このような場合は、小柴胡湯で枢解少陽を行って気を循らせれば
血も循って治っていくのである。
小柴胡湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(中)三十六章・三十七章
提要:
病が少陽に伝わって、熱が血室に侵入した場合の証治について。
訳:
婦人が中風に病に罹り、
七八日経って再び悪寒発熱が現れ、しかも一定の時間に出現する。
丁度この時に月経が止まるのは、熱邪が血室に入ったからで、
熱邪は必然的に血と互いに凝結し合う結果、瘧状のように、
悪寒発熱が定期的に出現するのだ。
小柴胡湯で治療すればよい。処方を記載。
柴胡半斤 黄芩三両 人参三両 半夏半升、洗う 甘草三両 生姜三両、切る 大棗十二個、裂く
右の七味を、一斗二升の水で、六升になるまで煮て、滓を除き、
三升になるまでさらに煎じ、一升を温服し、一日三回服用する。
百四十五章
婦人傷寒、發熱、経水適來、晝日讝語、
如見鬼狀者、此爲熱入血室、無犯胃氣、及上二焦、必自愈。
和訓:
婦人の傷寒、發熱し、経水適来り、昼日には明了、
暮れば則ち譫語し、鬼状を見るが如きものは、此れ熱血室に入ると為す。
胃気、及び上の二焦を犯すことなれば、必ず自ら愈ゆ。
・婦人傷寒、發熱、経水適來、晝日讝語、如見鬼狀者
婦人が傷寒にかかり発熱している。
その時丁度月経であったため、熱邪は虚に乗じて血室に侵入した。
昼間は陽は気を循らせ、夜間、陰は津を循らせる。
いま病は血分にあり、気分には直接病はないので
昼間は意識がはっきりしているが、
夜間は譫語を発し甚だしければ錯乱状態になる。
・此爲熱入血室、無犯胃氣、及上二焦、必自愈
もし月経が中断しなければ、熱が血室に侵入しても
邪は経血と一緒に体外へ出ていくので、自然に治っていく。
提要:
熱入血室証が自然に治っていく場合について。
訳:
婦女が傷寒の病に罹り、発熱し、その時丁度月経が始まったところ
日中は神志清明でったが、夕暮から譫語を発するようになり、
鬼に出会ったかのように
意識が朦朧としてくるのは、熱邪が血室に入ったからだ。
治療する場合には、胃気を損傷せず、また上中の二焦の気を損傷しないよう
注意すれば、病証は自然と治癒するはずだ。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢