こんにちは、為沢です。
画像に見えるビルは梅田にあるスカイビルといいます。
以前、グランフロント大阪を描いた時と対比した構図で写真を撮ってみました。
ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百四十二章と百四十三章。
百四十二章では、太陽と少陽の併病で、経脈まで影響が及んだ場合は
鍼で調節を行うべきであると述べており、
百四十三章では、熱が血室に入り、邪が経を犯した場合の証治について詳しく述べております。
弁太陽病脈証并治(下)百四十二章
太陽與少陽倂病、頭項強痛、或眩冒、
時如結胸、心下痞鞕者、當刺大椎第一間、
肺兪、肝兪、愼不可發汗。
發汗則讝語、脉弦。五日讝語不止、當刺期門。
和訓:
太陽と少陽の併病、頭項強痛し、或いは眩冒し、
時に結胸の如く、心下痞鞭するものは、当に大椎第一間、
肺兪、肝兪を刺すべし。慎んで発汗すべからず。発汗すれば則ち譫語し、脉弦なり。
五日にして譫語止まらざれば、当に期門を刺すべし。
・太陽與少陽倂病
併病というのは、太陽病が少陽に内伝し、
且つ太陽病の症状がまだ残っている場合を太陽と少陽の併病という。
・頭項強痛、或眩冒、時如結胸、心下痞鞕者
頭項の強い痛み、或いは眩暈、時々結胸証のように心窩部が硬く膨満する。
これらの症状は邪が太陽と少陽の二経にまたがったために起こっている症状である。
・當刺大椎第一間
大椎は七陽経が会する経穴で、これを鍼して太陽と少陽の邪を瀉していく。
・肺兪、肝兪、愼不可發汗
肺兪に鍼をすると肺気を通し、
外では皮毛を調えると同時に太陽の気を巡らせていく。
肝と胆は表裏関係にあり、肝兪に鍼を用いて少陽の邪を瀉していく。
病が少陽にも及んでいるので発汗法を行ってはいけない。
・發汗則讝語、脉弦
もし発汗させてしまうと
傷津、胃燥、相火がますます激しくなるため、譫語や脉弦が現れる。
・五日讝語不止、當刺期門
5日経過しても譫語が止まない場合は、
肝募穴の期門穴に鍼を用いて肝木が鬱滞しているのを瀉し
肝火熱を元に戻す。それによりこの急証を治療していく。
提要:
太陽と少陽の併病で、経脈まで影響が及んだ場合は
鍼で調節を行うべきであると述べている。
訳:
太陽病証が癒えないうちに少陽証がさらに出現し、
頭痛して項部がこわばり、或いはめまいし、しばしば結胸証のようになって、
心下の部位が痞えて硬く緊満する場合は、
大椎、肺兪、肝兪などの穴位に刺鍼すべきで、決して発汗させてはならない。
もし誤って発汗させると、患者は譫語を発し、脉は弦となる。
もし第五日になってもまだ譫語が止まらなければ、その場合は期門に刺鍼せねばならない。
百四十三章
婦人中風、發熱惡寒、經水適來、得之七八日、熱除而脉遲身凉。
胸脇下滿、如結胸狀、讝語者、此爲熱入血室也。當刺期門、隨其實而取之。
和訓:
婦人の中風、発熱悪寒し、経水適来り、之を得て七八日、熱除りて脉遅に身凉し。
胸脇下満して、結胸の如く、譫語するものは、此れ熱血室に入ると為すなり。
当に期門を刺し、其の実に随いて之を取るべし。
・婦人中風、發熱惡寒、經水適來
婦人が太陽中風証にかかり、発熱悪寒の表証が現れているときに月経となった。
・得之七八日、熱除而脉遲身凉
その状態が7〜8日も長く続いたので
病に抵抗する力が弱まった結果、血室が空虚になり
表邪がこの虚に乗じて血室に内陥→邪熱となり内にこもり→血脈が影響を受け→
外表の発熱は除かれるが「身凉」の症状が出現するようになり、
血室は血を蔵す肝と密接に関連しているため、邪熱が血室に侵入すると
血瘀が生じて脈は「遅脈」を呈する。
・胸脇下滿、如結胸狀、讝語者、此爲熱入血室也
また肝の疏泄も阻害されて肝気鬱結を生じるので、
結胸のときのような胸脇下の満痛が現れる。
邪熱が血室に侵入すると、結果血熱が生じ心に上擾すると神明が乱されて
病人は譫言を発するようになる。
・當刺期門、隨其實而取之
ここで張中景は、肝経の墓穴である期門に鍼を刺して
肝胆の邪熱を瀉せば、血室の熱も自然に寛解すると言っている。
提要:
熱が血室に入り、邪が経を犯した場合の証治について。
訳:
婦女が中風に罹り、発熱悪寒がある。
丁度、その時に月経が始まったが、病に罹って七八日経ち、
発熱はすでにおさまり、脈は遅で身体は涼しく爽快となった。
しかし胸脇より下の部位が膨満して、結胸証の症状によく似ており、
また譫語の証も出現している。これは熱邪が血室に侵入したからで、
期門に刺鍼するとよい。なぜなら体内に実邪がある状態なので、この治療法が選択される。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
『東洋医学講座・取穴篇』 自然社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢