芍薬甘草湯

芍薬甘草湯
芍薬甘草湯

図の如く、腹底引張るものあり、又拘わるものあり。
指頭を以って軽く按して之を知る。
拘わるものは拘攣にして、引っ張るものは急迫なり。
芍薬は拘攣を治し、甘草は急迫を治す。
或は腰脚に攣り、或は手足に攣り痛むものに此の證多し。
又、或は世に云う積聚なるものにも此の證多し。
何病を問わず拘攣急迫するものは此方を用うべし。
積聚と号するものには、鶴丸、或は三黄丸・解毒丸の類を審かにして兼用すべし。
腰脚手足攣り痛むものには、平水丸、或は礬黄丸の類、證に随いて兼用すべし。
然れども腰脚手足攣るものには間、十棗湯の證あり。
十棗湯は掣痛の準拠とし、礬黄丸の悪腫を準拠とす。
病名に眩せず、その證を審かにして誤失すること勿れ。


炙甘草(しゃかんぞう)

甘草
甘草

マメ科のウラル甘草の根。
性味:平・甘
帰経:脾・肺・胃
主な薬効と応用:去痰・鎮咳・抗炎症
①補中益気:脾胃虚弱で元気がない・
無力感・食欲不振・泥状便などの症候に用いる。
方剤例⇒四君子湯
②潤肺・祛痰止咳:風寒の咳嗽時に用いる。
方剤例⇒三拗湯
③緩急止痛:腹痛・四肢の痙攣時などに用いる。
方剤例⇒芍薬甘草湯
④清熱解毒:咽喉の腫脹や疼痛などに用いる。
方剤例⇒甘草湯
⑤調和薬性:性質の異なる薬物を調和させたり、偏性や毒性を軽減させる。

白芍(びゃくしゃく)

芍薬
芍薬

ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・脾
主な薬効と応用:鎮痛・鎮痙・収斂
①補血斂陰:血虚による顔色につやがない・
頭のふらつき・めまい・目がかすむ四肢の痺れ
月経不順などの症候に用いる。
方剤例⇒四物湯
②柔肝止痛:肝鬱気滞による胸脇部の張った痛み・
憂鬱感・イライラなどの症候時に用いる。
方剤例⇒四逆散
③平肝斂陰:肝陰不足・肝陽上亢によるめまい・ふらつきなどの症状に用いる。
方剤例⇒鎮肝熄風湯

【主治】
調和肝脾剤の代表として用いられ、
主に肝気鬱血による脾胃への横逆、
あるいは脾虚不運で肝陰が不足して疏泄が失調した脾虚肝乗による、
胸脇脹痛・腹痛・腹満・悪心・嘔吐・下痢などの、
肝胃不和・肝脾不和の症候があるときに用いる。

芍薬甘草湯では
白芍は肝血を補い
炙甘草は脾気を補い、
合わせて滋陰平肝・緩急止痛の効果となる。


参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像:
『腹証奇覧 正編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004913

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

本多

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here