五臓の色脉証候虚実の例 肝・心・脾
肝
肝は血を蔵して魂を舎す、
筋と爪と風とを主る、
東方の木に属し、
春に旺して其脉は弦なり、
外候は目にあり、その声は呼、
その臭は臊し、その味は酸し、
其液は泣、その色は青し、
其志は怒る、其経は足厥陰、
その府は膽、その変動は握、
その積は肥気、
杯のごとく左の脇の辺を覆ふ。
肝気盛なるときは目赤、
両の脇の下痛み小腹に引、
よく怒り、気逆するときんは頭眩き、
耳聾へず、額腫る、
宜しくこれを潟すべし。
不足するときんば目明ならず、
両の脇拘急、筋攣り、
太息することを得ず、爪甲枯て青く、
よく怒り恐れて人の捕えんとするがごとし、
宜しくこれを補ふべし。
心
心は脉を蔵して神を舎す、
血脉と暑とを主る、南方の君火に属し、
夏に属して其脉鉤のごとくにして洪なり、
外候は舌にあり、其声は笑、
その臭は焦、その味は苦し、
その液は汗、その色は赤し、
其志は喜ぶ、其経は手少陰、
その府は小腸、その変動は憂、
その積は伏梁、
臂の如くにして臍につらなる。
心気盛なるときんば胸内痛み脇支え満ち、
脇下痛み、膺背髆脾の間いたみ、
両臂の内痛み、喜んで笑って休ず、
宜しくこれを潟すべし。
不足するときんば胸腹大に、
脇下と腰背と相引て痛む、
怔沖、驚悸、恍惚、顔色少く、
舌本強り、善んで憂悲す、
宜しくこれを補ふべし、
脾
脾は営、一に曰、
智を蔵して意を舎す、
肌肉と労倦と湿とを主る、
中央の土に属し、
長夏に旺して其脉緩なり、
外候は唇口に在り、
其声は歌、その臭は香し、
其味は甘し、其液は涎、
その色は黄、その志は思、
その経は足太陰、その府は胃、
その変動は噦、その積は痞気、
胃管に在て覆大にして盤のごとし。
脾気盛なるときは腹痛み腹脹溲利せず、
身重く若だ飢、足痿て収らず、
行くときは善瘈り、脚下痛む、
宜しくこれを潟すべし。
不足するときんば、
怠惰して臥すことを嗜む、
四肢用られず、食少なく、
食化せず、呃逆、腹脹、腹鳴る、
宜しくこれを補ふべし。
(鍼灸重宝記より)