修行生の大原です。
東洋医学では、内臓を単なる人体の構成部分ととらえず、
経脈とならぶ人体の生理的、病理的現象や、
精神活動の中心となるものとしてとらえます。
この考え方は、古代中国から理論的に体系づけられ、
「蔵象学」として発展し、今日に至っています。
東洋医学における五臓六腑
(肝・心・脾・肺・腎、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)は、
西洋医学で示される各内臓と若干異なります。
特に、「三焦」とは、西洋医学で置き換えられる
臓器・器官は一体何なのか、
未だによく分かっていません。
「三焦」について書かれた文献を
いくつか抜粋します。
三焦は、特定の器官を指すのではなく、
飲食物を消化吸収し、これから得られた
気血津液を全身に配布し、
水分代謝を円滑に行わせる一連の機能を指す。
上焦・中焦・下焦に分けられる。
(医道の日本社『東洋医学概論』より)
三焦は、外は皮毛に内は臓腑に連なり、
臓腑器官を包み込み間隙を出入りし、
全身にくまなく分布した膜状の組織で、
衛気・津液の通道である。
形状を特定しがたいところから「名ありて形なし」と言われる。
(燎原『基礎中医学』より)
以上より、三焦とは、津液などの人体の基礎物質の
運搬に大きく関わり、さらに人体のかなりの部分を
占めていることがいえると思います。
ですが、人体において「これが三焦」というような、
三焦に相当する器官・組織は何か、
イメージが掴みにくいかと思います。
しかし、古代から「三焦」という腑が
定義づけられ、その経絡も存在する以上、
それは漠然としたものではなく、
人体を構成する重要な器官で、
かつ具体的に存在するものであると
推測するのが自然ではないでしょうか。
最近、読んだ文献中に、三焦について
具体的に書かれた箇所がありましたので抜粋します。
三焦の働きは、リンパ管系と密接なる関係を有し、
中焦は主として膵臓を中心として上腹部のリンパ管系がこれに属し、
下焦は主として乳び槽を中心として乳び管と下腹及び腰部以下
脚部に至る全リンパ管系がこれに属し、
上焦は主として胸管を中心として胸郭以上の全リンパ管系が
これに属することになる。
かくて、上中下のリンパ管系の滞りなき循環こそは、
身体諸器官の調節にとりて重大なる関係を有するのである。
(医道の日本社『鍼灸治療基礎学』より)
「三焦」とは何なのか、諸説あるかと思いますが、
その作用や全身に分布することなどから、
上述のようにリンパ系が一番それに
相当する器官だといえるのではないでしょうか。
三焦は、腎・肺・脾臓によって作られた
「元気」の通り道でもあります。
また、「焦」という字から、
人体の熱源(エネルギー)であるという説も
あります。
古人は、人体の器官や組織を分けて考えず、
「三焦」として生体を大きく捉えることで
その作用を的確に表現しているのだと思いました。
東洋医学における重要な考え方として
発展してきた蔵象学の深さを感じます。
参考文献:
『基礎中医学』 燎原
『臓腑経絡学』 アルテミシア
『東洋医学概論』 医道の日本社
『鍼灸治療基礎学』 医道の日本社
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
大原