「特別展 幽霊・妖怪画大全集」 大阪歴史博物館HPより
「特別展 幽霊・妖怪画大全集」 大阪歴史博物館HPより

こんにちは、為沢です。
4月20日より、大阪歴史博物館にて
「特別展 幽霊・妖怪画大全集」が開催されております。
画像に見えますのは、江戸時代の浮世絵師・歌川国芳の『相馬の古内裏』という
巨大な「がしゃどくろ」が描かれた大判作品です。
子どもの頃にこれを初めて見た時、凄く衝撃を受けた覚えがございます。
怖い画なんでしょうけど、江戸時代にこんな独創性ある画があったんや ということに
怖さよりも大変感銘を受けた作品です。
趣味で妖怪図鑑を持っていますが、これは是非実物を見てみたいと思います。
ボストン美術館展といい、今年の大阪の美術館はなかなか当たりが多い気がします。(個人的に 笑)
御興味のある方は是非。


ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)百十六章。
脉微数の者に、誤って灸を施し変証となった場合と
脉浮の者に、誤って灸を施し変証となった場合。
また、その自然治癒に至る脉証について。


弁太陽病脈証并治(中)百十六章

微數之脉、慎不可灸、因火爲邪、則爲煩逆、追虚遂實、血散脉中、
火氣雖微、内攻有力、焦骨傷筋、血難復也、
脉浮、宜以汁解、用火灸之、邪無從出、因火而盛、
病從腰以下、必重而痺、名火逆也。
欲自解者、必當先煩、煩乃有汗而解、何以知之、脉浮、故知汗出解。

和訓:
微数の脉は、慎んで灸すべからず。
火に因って邪を為せば、則ち煩逆を為し、虚を追い実を逐い、血脉中に散ず。
火気微かなりと雖も、内攻するに力あり、
骨を焦がして筋を傷り、血復し難きなり。脉浮は、宜しく汁を以て解すべし。
火を用い之を灸すれば、邪従い出ずることなく、
火に因りて盛んに、病腰従り以下必ず重くして痺れ、
火逆と名づくるなり。自ら解せんと欲するものは、必ず当に先ず煩すべし。
煩すれば乃ち汗ありて解す。何を以て之を知る。
脉浮、故に汗出でて解すと知る。


微數之脉、慎不可灸
微数の脉は一般には陰虚有熱のときにみられるから、灸を用いてはいけない。

因火爲邪、則爲煩逆
灸はすなわち火法であり、誤って用いると火邪となる。
仮にこの状態で誤って用いれば、火は熱を助け、上方の胸中を乱すので
落ち着かずイライラとする上逆が生じる。

追虚遂實、血散脉中
もともと陰が虚している者に、
追い討ちをかけるように火法を用いるとこれはますます虚してしまう。
また、もともと熱実の者に火法を用いると、ますます熱実が激しくなってしまう。
そして火邪が脉に入れば、血脈が正常に流れることができなくなってしまう。

火氣雖微、内攻有力、焦骨傷筋、血難復也
灸火は微弱のようであるが、裏に与える影響は大きく、
津血を消耗させたり、甚だしい場合には筋骨の損傷や、
陰血を正常に戻すのが難しくなったり、痿廃の変証に至る場合もある。

脉浮、宜以汁解、用火灸之、邪無從出、因火而盛
脉浮は病が表にあることを示すので、汗法で解いていけばよい。
この「解」は内の正気を表に通達させていくという意味がある。
しかし、この場合に火灸の方法を用いると、
その火力は外から内に向かって影響を与えてしまい、
邪の出るところがなくなるだけでなく、内ではますます火邪が盛んになってしまう。

病從腰以下、必重而痺、名火逆也
火は上方に昇る性質があるが、
このとき陽熱を一緒に上方へ持ち上げてしまうと
なかなか下方へ降りてこなくなる。
また、体表の津が汗にならなければ、内湿となり下方へ留まるから、
病人の腰から下が重く痺れたようになる。
「重」はひどく滞っている様子、「痺」はしびれている状態をいう。

欲自解者、必當先煩
自然に回復するには正気が回復し邪正闘争が起こるため
熱が発生し、一見煩悶する。

煩乃有汗而解
発汗と同時に邪が発散・排泄されて患者は回復する。

何以知之、脉浮、故知汗出解
発汗して邪が解けてくれば、脉浮となるため
回復していることが分かる。

提要:
脉微数の者に、誤って灸を施し変証となった場合と
脉浮の者に、誤って灸を施し変証となった場合。
また、その自然治癒に至る脉証について。

訳:
患者の脉象が微にして数の場合、決して灸法で治療してはいけない。
火熱は体内に作用して邪気を形成するので、重大な誤治をひきおこすもとになる。
すなわち、血気を更に虚させ、火熱を更に亢盛にし、ついには血液を脉中で散失させてしまう。
灸の火力は微々たるものであるが、体内を攻める力は
強大で、筋骨さえも傷つけ、回復困難な程度まで血液を消耗させる。
脉浮のものは、発汗法で治療すべきなのだが、誤って火灸で治療すれば、
邪気は出口を失い、かえって悪化し、患者は必ず腰より下が重だるく麻痺するようになるが
これを火逆証と呼ぶ。もし病状が自然によくなる場合には、
必ず先に心煩が現れ、心煩がおこったあと汗が出て病が癒える。
なぜわかるかと言うと、脉が浮なので、汗が出て治癒するとわかるのだ。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

2 コメント

  1. 歌川国芳が好きなのでこの展覧会気になっています。
    豪快でユーモラス、大胆で伸びやかな中にも作中の人物の着物の柄や色合わせなど細やかで美しい。
    何度でも見たい作家さんです。
    ただ、問題なのはHPを見たら幽霊画が何点かあったことです・・・。
    コワイモノ苦手でホラー映画などとても見られないので躊躇しとります。
    丸山応挙の幽霊画を見たことがあるのですが、掛け軸の中の人と目が合った瞬間、周囲の音と時間がすうっと消えました。
    知ってはいたものの実物はかなりの迫力で。
    行こうかどうしようか・・・うーむ。

    妖怪図鑑、なつかしい~。
    友達が持っていてよくみんなで一緒に見てました。
    子供ってこわいもの不思議なもの好きですよね。
    家に「日本のゆうれい話」「世界のこわい話」のシリーズがありました。
    こわい中にもほろりとしたり、幽霊にわけありでかわいそうに思ったりほのぼのとしたり、現代のストレートで殺伐としたものとはかなり違う、今思うといい本でした。

    • おコメさんへ

      歌川国芳良いですよね。
      おコメさんの仰る通り、豪快でユーモラスがあって僕も好きです!
      幽霊画ですが、実は魔除けの意味があるんですよ。
      陰気で怖いものがあると幽霊や災いが怖がって近寄らない縁起物みたいです。
      とは言っても、怖いものは怖いですが(笑)

      妖怪は、何か愛嬌があって面白いです。
      それぞれちゃんとストーリーがあって、そういうナリになっているんですよね。
      百鬼夜行があればホンマに見てみたいです(笑)

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