2013.1.8. 東京駅
2013.1.8. 東京駅

こんにちは、為沢です。

東京への往診で、利用する東京駅です。
年末にイルミネーションをやってたらしいですが、
人が混みすぎて中止になっちゃったみたいです。
でも、イルミネーションが無くても十分絵になる駅なので、記念にパチリ☆

この後、ブラブラ散歩してたわけですが
やっぱり東京の街はデカい。毎回その規模に圧倒されます。
しかし、上方の人間としては東京に変な対抗意識もあるわけで
負けてたまるかと思い、今年は奮起して頑張ります。宜しく御願いします。


ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)百三章と百四章。
百三章では、少陽証と陽明証が同時に現れた場合の証治について。
百四章では、大柴胡湯証に誤って
丸薬で攻下した場合の治法について述べております。


弁太陽病脈証并治(中)百三章

太陽病、過経十余日、反二三下之、後四五日、
柴胡証仍在者、先与小柴胡。
嘔不止、心下急、一伝、嘔止小安。
鬱鬱微煩者、為未解也、与大柴胡湯、
下之則愈。
方五十三。

柴胡半斤 黄芩三兩芍藥三兩半夏三兩、洗
生薑五兩、切 枳実四枚、炙 大棗十二枚、擘
右七味、以水一斗二升、煮取六升、
去滓再煎、溫服一升、日三服。
一方加大黄二兩。若不加、恐不爲大柴胡湯。

和訓:
太陽病、過経十余日、反って二三之を下し、後四五日に、
柴胡の証仍在るものは、先ず小柴胡を与う。
嘔不止まず、心下急し、一つに伝う、嘔止み小し安んずと。
鬱鬱として微か煩するものは、未だ解せずと為しなり。
大柴胡湯を与え、之を下せば則ち愈ゆ。方五十三。
柴胡半斤 黄芩三両 芍藥三兩 半夏半升、洗う
生薑五両、切る 枳実四枚、炙る 大棗十二枚、擘く
右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り再び煎じ、一升を温服し、日に三服す。
一方は大黄二兩を加う。若し加えずんば、恐らくは大柴胡湯と為さざらん。


太陽病、過経十余日、反二三下之、
後四五日、柴胡証仍在者、先与小柴胡

「過経」とは、邪気がある一経を離れ、別の一経に入ることで
ここでは、病は太陽経を経て少陽経に内伝し、今は柴胡湯証が現れているので
少陽を和解していけばよい。
しかし今これに反して2〜3度下法を用いたあとでも
まだ柴胡湯証であれば、まず小柴胡湯証で少陽枢の気機を調える必要がある。
この「先」というのは、柴胡湯証があれば
まずこの少陽から着手していけばよいという意味である。

嘔不止、心下急、一伝、嘔止小安。
鬱鬱微煩者、為未解也、与大柴胡湯、下之則愈

誤って下法を何度も行い病が裏に入り、
邪が陽明の熱・燥となったために、嘔吐が止まらず、
心窩に食物がつまって苦しく、気分が撃つ鬱鬱としてイライラする等の
少陽証が取れないばかりか、陽明裏実証が現れた。
病が少陽と陽明の二経にまたがったので
小柴胡湯だけを用いて全てを解いていくのは無理である。
従って大柴胡湯で二経を同時に治療し、熱を下して治す。

大柴胡湯
方義

柴胡
柴胡

柴胡
基原:セリ科のミシマサイコ、またはその種の根。
日本や韓国で栽培利用されているのは本種である。
柴胡は苦微辛・微寒で芳香を有し、軽清上昇して宣透疏達し、
少陽半表半裏の邪を疏散して透表泄熱し、清陽の気を昇挙し、
かつ肝気を疏泄して欝結を解除する。
それゆえ、邪在少陽の往来寒熱に対する主薬であり、
肝気欝結の胸脇脹痛・婦女月経不調や
清陽下陥の久瀉脱肛などにも常用する。

黄芩
黄芩

黄芩
基原:
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根、内部が充実し、
細かい円錐形をしたものを条芩、枝芩、尖芩などと称し、
老根で内部が黒く空洞になったものを枯芩、
さらに片状に割れたものを片芩と称する。
黄芩は苦寒で、苦で燥湿し寒で清熱し、
肺・大腸・小腸・脾・胆経の湿熱を
清利し、とくに肺・大腸の火の清泄に長じ
肌表を行り、安胎にも働く。
それゆえ、熱病の煩熱不退・肺熱咳嗽・湿熱の痞満・瀉痢腹痛・
黄疸・懐胎蘊熱の胎動不安などに常用する。
また瀉火解毒の効能をもつので、
熱積による吐衄下血あるいは
癰疽疔瘡・目赤腫痛にも有効である。
とくに上中二焦の湿熱火邪に適している。

芍薬
芍薬

芍藥
基原:
ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
芍薬には<神農本草経>では赤白の区別がされておらず
宋の<図経本草>ではじめて
金芍薬(白芍)と木芍薬(赤芍)が分けられた。
白芍は補益に働き赤芍は通瀉に働く。桂枝湯では白芍を用いる。

白芍は苦酸・微寒で、
酸で収斂し苦涼で泄熱し、
補血斂陰・柔肝止痛・平肝の効能を持ち諸痛に対する良薬である。
ここでは白芍を用いる。
白芍は血虚の面色無華・頭暈目眩・
月経不調・痛経などには補血調経し、
肝鬱不舒による肝失柔和の胸脇疼痛・
四肢拘孿および肝脾不和による
腹中孿急作痛・瀉痢腹痛には柔肝止痛し、
肝陰不足・肝陽偏亢による頭暈目眩・
肢体麻木には斂陰平肝し、
営陰不固の虚汗不止には斂陰止汗する。
利小便・通血痺にも働く。

半夏
半夏

半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。
半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し、逆気が下降すると
胃気が和して痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、
痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
また、適当な配合を行えば、
痰湿犯胃の咳喘・胃虚や胃熱の嘔吐・
痰湿入絡の痰核などにも使用できる。
このほか、行湿通腸するので
老人虚秘にも効果がある。
生半夏を外用すると癰疽腫毒を消す。

生薑
生薑

生薑
基原:
ショウガ科のショウガの新鮮な根茎。
日本では、乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜を乾生姜と
いうこともあるので注意が必要である。
生薑は辛・微温で肺に入り発散風寒・祛痰止咳に、
脾胃に入り温中祛湿・化飲寛中に働くので
風温感冒の頭痛鼻塞・痰多咳嗽および水湿痞満に用いる。
また、逆気を散じ嘔吐を止めるため、
「姜は嘔家の聖薬たり」といわれ風寒感冒・水湿停中を問わず
胃寒気逆による悪心嘔吐に非常に有効である。

枳実
枳実

枳実
基原:
ミカン科のダイダイ、
イチャンレモン、カラタチなどの幼果。
枳実は苦寒で下降し、
気鋭力猛で破気消積・化痰除痞に働き、
脾胃の気分薬である。
積滞内停・気機受阻による
痞満脹痛・便秘・瀉痢後重には、
気血痰食を問わず用いる。
薬力が猛烈であることから、
「衝墻倒壁の功あり」
「消痰癖、祛停水、破結胸、通便閉、
これにあらざれば能わざるなり」といわれている。

大棗
大棗

大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。
またはその品種の果実。
甘温で柔であり、補脾和胃と養営安神に働くので、
脾胃虚弱の食少便溏や
営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。
また薬性緩和にも働き、
峻烈薬と同用して薬力を緩和にし、
脾胃損傷を防止する。
ここでは、脾胃を補うとともに
芍薬と協同して筋肉の緊張を緩和していく。
また、生薑との配合が多く、
生薑は大棗によって刺激性が緩和され、
大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、
大棗が営血を益して発汗による
傷労を防止し、営衛を調和することができる。

提要:
少陽証と陽明証が同時に現れた場合の証治について。

訳:
最初は太陽病であったが、
表邪が他の経に伝入して十日余り経った時、
医者が誤って再三にわたり攻下法で治療し、
そしてさらに四五日が経った。
この時点では柴胡証があれば、
まず小柴胡湯を服用させればよい。
もし頻々と嘔吐し、心下部がきつくつっぱって不快で、
別本には、嘔吐が止んで少し楽になるとある。
しかも軽度の抑鬱気分やイライラがあるなら、
病証はまだ除かれていないことを示唆しており、
大柴胡湯を与えて、攻下すれば治癒する。
処方を記載。第五十三法。
柴胡半斤 黄芩三両 芍藥三兩 半夏半分、洗 生薑五両、切る
枳実四個、炙る 大棗十二個、裂く
右の七味を、一斗三升の水で、六升になるまで煮て、
滓を除いてから〔三升になるまで〕さらに煎じ、
一回に一升を、一日三回温服する。一方には大黄二両を加えるものがある。
もし加えなければ、大柴胡湯にはならないだろう。


弁太陽病脈証并治(中)百四章

傷寒十三日不解、胸脇満而嘔、
日晡所發潮熱、己而微利。
此本柴胡証、下之以不得利、全反利者、
知医丸藥下之、此非其治也。
潮熱者、実也、先宣服小柴胡湯以解外、
後以柴胡加芒硝湯主之。五十四。

柴胡二兩、十六銖 黄芩一兩人参一両甘草一両、炙
生薑一両、切 半夏
二十銖、本云五枚、洗大棗四枚、擘芒硝二兩
右八味、以水四升、煮取二升、
去滓、内芒消、更煮微沸、分溫再服、不解更乍。

臣億等謹按、金匱玉函方中無芒硝。
別一方云、以水七升、下芒硝二合、大黄四両、

桑螵蛸五枚、煮取一升半、服五合、微下即愈。
本云、柴胡再服以解其外、余二升加芒硝大黄桑螵蛸也。

和訓:
傷寒十三日にして解せず、胸脇満して嘔し、
日晡所に潮熱を発し、己りて微かに利す。
此れ本柴胡の証、之を下して利を得ざるを以て、
今反って利する者は、医丸藥を以て
之を下したりと知り、此れ其の治にあらざるなり。
潮熱は、実なり。先ず宣しく小柴胡湯を服し以て外を解すべし。
後に柴胡加芒硝湯を以て之を主る。五十四。
柴胡二兩十六銖 黄芩一兩 人参一両 甘草一両、炙る
生薑一兩、切る 半夏二十銖、本に云う五枚と、洗う
大棗四枚、擘く 芒硝二兩

右八味、水四升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、
芒硝を内れ、更に煮て微かに沸し、分かち溫め再服し、解せざるば更に作れ。
臣億ら謹んで按ずるに、金匱玉函方中に芒消なし。
別に一方に云う、水七升を以て、芒硝二合、大黄四両、
桑螵蛸五枚を下ろし、煮て一升半を取り、五合を服し、微かに下ろせば即ち愈ゆと。
本に云う、柴胡再び服し以て其の外を解し、余りの二升に芒硝大黄桑螵蛸を加うるなりと。


本章は三段階に分けて読むと分かりやすい。

傷寒十三日不解、胸脇満而嘔、日晡所發潮熱
傷寒にかかり十三日経過。
「胸脇満而嘔」から、少陽病であることが分かる。
「日晡所」とは午後から夕方にかけて、
午後15時〜午後17時ころの時間帯。
「潮熱」は、おおかた午後に熱が上昇する熱型をいう。
潮熱は陽明病特有の熱型であるので、
少陽に陽明の内実証を兼ね備えたものである。

己而微利。此本柴胡証、下之以不得利、
全反利者、知医丸藥下之、此非其治也

上の①で述べた証に裏熱を兼ねると、
大便に秘結ということが出てくる。
今反って下痢するということは、
誤って熱薬である丸薬を用いたためで
熱邪を流せず反って薬力が内に停滞し、
そのため下痢が止まらないという現象が起こる。
「微利」とは微しく下痢する意であり、
微利があって病が解けない状態でも
柴胡湯証が依然として存在する。

潮熱者、実也、先宣服小柴胡湯以解外、後以柴胡加芒硝湯主之
少陽の邪が未だ解けない場合は、
先ず小柴胡湯をもって少陽を解き
そして後に柴胡加芒硝湯を用いて裏実である潮熱を治す。


柴胡加芒硝湯
方義

柴胡『中医臨床のための中薬学』より
柴胡『中医臨床のための中薬学』より

柴胡
基原:セリ科のミシマサイコ、またはその種の根。
日本や韓国で栽培利用されているのは本種である。
柴胡は苦微辛・微寒で芳香を有し、軽清上昇して宣透疏達し、
少陽半表半裏の邪を疏散して透表泄熱し、清陽の気を昇挙し、
かつ肝気を疏泄して欝結を解除する。
それゆえ、邪在少陽の往来寒熱に対する主薬であり、
肝気欝結の胸脇脹痛・婦女月経不調や
清陽下陥の久瀉脱肛などにも常用する。

黄芩『中医臨床のための中薬学』より
黄芩『中医臨床のための中薬学』より

黄芩
基原:
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根、内部が充実し、
細かい円錐形をしたものを条芩、枝芩、尖芩などと称し、
老根で内部が黒く空洞になったものを枯芩、
さらに片状に割れたものを片芩と称する。
黄芩は苦寒で、苦で燥湿し寒で清熱し、
肺・大腸・小腸・脾・胆経の湿熱を
清利し、とくに肺・大腸の火の清泄に長じ
肌表を行り、安胎にも働く。
それゆえ、熱病の煩熱不退・肺熱咳嗽・湿熱の痞満・瀉痢腹痛・
黄疸・懐胎蘊熱の胎動不安などに常用する。
また瀉火解毒の効能をもつので、
熱積による吐衄下血あるいは
癰疽疔瘡・目赤腫痛にも有効である。
とくに上中二焦の湿熱火邪に適している。

人参
人参

人参
基原:
ウコギ科のオタネニンジンの根。
加工調整法の違いにより種々の異なった生薬名を有する。
人参は甘・微苦・微温で中和の性を稟け、
脾肺の気を補い、生化の源である
脾気と一身の気を主る肺気の充盈することにより、
一身の気を旺盛にし、大補元気の効能をもつ。
元気が充盈すると、益血生津し安神し智恵を増すので、
生津止渇・安神益智にも働く。
それゆえ、虚労内傷に対する第一の要薬であり、
気血津液の不足すべてに使用でき、
脾気虚の倦怠無力・食少吐瀉、
肺気不足の気短喘促・脈虚自汗、
心神不安の失眠多夢・驚悸健忘、
津液虧耗の口乾消渇などに有効である。
また、すべての大病・久病・大吐瀉による
元気虚衰の虚極欲脱・脈微欲絶に対し、
もっとも主要な薬物である。

甘草
甘草

甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。

生薑『中医臨床のための中薬学』より
生薑『中医臨床のための中薬学』より

生薑
基原:
ショウガ科のショウガの新鮮な根茎。
日本では、乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜を乾生姜ということもあるので注意が必要である。
生薑は辛・微温で肺に入り発散風寒・祛痰止咳に、
脾胃に入り温中祛湿・化飲寛中に働くので
風温感冒の頭痛鼻塞・痰多咳嗽および水湿痞満に用いる。
また、逆気を散じ嘔吐を止めるため、
「姜は嘔家の聖薬たり」といわれ風寒感冒・水湿停中を問わず
胃寒気逆による悪心嘔吐に非常に有効である。

半夏
半夏

半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。
半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し、逆気が下降すると
胃気が和して痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
また、適当な配合を行えば、痰湿犯胃の咳喘・胃虚や胃熱の嘔吐・
痰湿入絡の痰核などにも使用できる。
このほか、行湿通腸するので老人虚秘にも効果がある。
生半夏を外用すると癰疽腫毒を消す。

大棗
大棗

大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。またはその品種の果実。
甘温で柔であり、補脾和胃と養営安神に働くので、
脾胃虚弱の食少便溏や
営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。
また薬性緩和にも働き、
峻烈薬と同用して薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止する。
ここでは、脾胃を補うとともに
芍薬と協同して筋肉の緊張を緩和していく。
また、生薑との配合が多く、
生薑は大棗によって刺激性が緩和され、
大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、大棗が営血を益して発汗による
傷労を防止し、営衛を調和することができる。

芒硝
基原:天然の含水硫酸ナトリウムNa2 SO4・10H2O
または風化消Na2SO4・2H2O。
なお古来の芒硝は結晶硫酸マグネシウム MgSO4・7H2Oである。
芒硝は鹹渋・寒で、鹹で軟堅し苦で降下し寒で清熱し、
瀉熱通便・潤燥軟堅の効能をもち、胃腸三焦の実熱を蕩滌し燥屎を除去する。
それゆえ、実熱積聚の大便燥結・譫語発狂などを呈する陽明腑実証や、
陽明の熱が水飲と結した結胸に適する。外用すると清熱消腫に働き、
癰腫瘡毒・目赤喉腫口瘡などに有効である。

提要:
大柴胡湯証に誤って丸薬で攻下した場合の治法について。

訳:
傷寒の病に罹って十三日経つが
病は治癒せず、胸脇が腸満して嘔吐し、
毎日午後三時から五時前後にかけて潮熱が出て、
また軽度の下痢がみられる。
これはもともと柴胡湯証であったものを、
下痢していないという理由で攻下法を用いた結果、
今は誤治による下痢がおこっているのである。
医者が丸薬を用いて攻下した結果であると理解されるが、これは治療の誤りである。
潮熱が出現するのは、体内に実邪があるからだ。
まず小柴胡湯を服用させて外来の邪気を解除し、
しかるのちに今度は柴胡加芒硝湯で治療を行えばよい。第五十四法。
柴胡二兩十六銖 黄芩一兩 人参一両 甘草一両、炙る
生薑一兩、切る 半夏二十銖、別本には五個とある、洗う
大棗四枚、裂く 芒硝二兩
右の八味〔の芒硝以外〕を、四升の水で、二升になるまで煮て、
滓を除き、芒硝を入れて、少し煮たたせたあと、二回に分けて溫服する。
病気がよくならなければもう一度作って服用せよ。

臣億らが謹んで考えるには、金匱玉函に収載の処方には芒硝はない。
また別の書物には、七升の水で芒硝二合、大黄四両、
桑螵蛸五個を一升半になるまで煮て、五合を服用し、少し下痢すれば治癒するとある。
別本には、柴胡湯を二回服用して外表の邪を解し、
残りの一回分である二升に芒硝大黄桑螵蛸を加えるとある。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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