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こんにちは下野です。
暗くて見辛いですが、
こちらはとある場所に現存する学生寮の写真で、
現在は当時を知る歴史的建造物として保存されております。
学校は今から600年以上前に設立され、
学生達は写真のような寮で生活を送り、
中には歴史にその名を残す偉人達も数多くいたようです。
建物の中は、勉強机・寝床・各自が書いたり、掘ったりした文字が当時のまま残され、
ここだけ時が止まったまま 今も学生が生活を送っているような
空気が流れておりました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ しばらく 時が経つのを忘れ、独特の空気をあじわいました。
では『難経』の記事に参ります。
【原文】
三十七難曰、五蔵之気、於何発起、通於何許、可暁以不。
然。
五蔵者、当上関於九竅也、故肺気通於鼻、鼻和則知香臭矣。
肝気通於目、目和則知黒白矣。
脾気通於口、口和則知穀味矣。
心気通於舌、舌和則知五味矣。
腎気通於耳、耳和則知五音矣。
五蔵不和、則九竅不通、六府不和、則留結為癰。
邪在六府、則陽脈不和、陽脈不和、
則気留之、気留之、則陽脈盛矣。
邪在五蔵、則陰脈不和、陰脈不和、
則血留之、血留之、則陰脈盛矣。
陰気太盛、則陽気不得相営也、故曰格。
陽気太盛、則陰気不得相営也、故曰関。
陰陽倶盛、不得相営也、故曰関格。
関格者、不得尽其命而死矣。
経言気独行於五蔵、不営於六府者、何也。
然。
夫気之所行也、如水之流、不得息也。
故陰脈営於五蔵、陽脈営於六府、如環無端、
莫知其紀、終而復始。
其不復溢、人気内温於蔵府、外濡於腠理。
【現代語訳】
五臓の気がどのように発起し、どこに通じているかを
明らかにすることは可能か。
答え。
五臓は、人体の頭・顔にある九竅と通じている。
肺気が鼻に通じているからこそ、その機能が正常に働き
気味の香臭を弁別することが出来る。
肝気が眼に通じているからこそ、その機能が正常に働き
色の白黒を見分けることが出来る。
脾気が口に通じているからこそ、その機能が正常に働き
飲食物の味を味わうことが出来る。
心気が舌に通じているからこそ、その機能が正常に働き
五味を弁別することが出来る。
腎気が耳に通じているからこそ、その機能が正常に働き
五音を聞き分けることが出来る。
五臓の機能が失調すると九竅が通じなくなり、
六腑の機能が失調すると気が滞り癰が出来る。
邪が六腑を侵すと陽脈が失調し、気が滞り、
結果 陽脈旺盛の現象が起き、
邪が五臓を侵すと陰脈が失調し、血が滞り、
結果 陰脈旺盛の現象が起きる。
陰気が盛んになりすぎると陽気が巡らなくなり、
このような状態を格と言い、
陽気が盛んになりすぎると陰気が巡らなくなり、
このような状態を関と言う。
もし陰・陽脈共に盛んになりすぎると、
陰陽が相互交流出来なくなり、この状態を関格と言う。
関格の現象が現れると、天命を全うすることが出来ず
死に至る。
医学経典には、気が五臓には運行するが
六腑には運行しないとあるが、どういったことなのか。
答え。
気の運行は水の流れと同様に、一刻も停止することはない。
陰脈は五臓を運行し、陽脈は六腑を運行する。
それは円い環を運行するように、止まる場所がなく
終わりも始まりもなく循環している。
気が溢れるようなことが無ければ、
気は内部では臓腑に働きこれを温養し、
外部では腠理を潤している。
【解説】
当難では、五臓と九竅の関係について論じている。
九竅とは、
・全身に9ヵ所ある孔:両眼、両鼻孔、口、両耳、前後二陰。
もしくは
・両眼、両耳、両鼻孔、口、舌、喉。
と考えられているが、
当難の場合では後者(下)の九竅として考えており、
五臓と九竅との関係は、
鼻:肺との関係が密接。
眼:肝との関係が密接。
口:脾との関係が密接。
舌:心との関係が密接。
耳:腎との関係が密接。
となり、五臓の機能が失調すると、
各器官(九竅)が閉塞する。
また、六腑の機能が失調する場合は、
六腑は陽で表を主っているので病変が発生すると
腫れものが体表に表れるといっている。
そして、病邪が侵す部分(臓か腑)・病の違いによって
脈搏上に反映されるとも記載されており、
邪が陽にあれば陽脈不和で陽脈旺盛、
陰にあれば同様に陰脈不和で陰脈旺盛となる。
この種の病は、重い段階になると
陰陽失調となり、勘だしければ死に至ると記されている。
また精気の営養する部位についても記しており、
精気が五臓には運行するが六腑には巡らないという
意味に関して説明している。
精気は五臓だけでなく、勿論 六腑にも巡っているのだが
五臓が精気の貯蔵地という大きなくくりの意味で
”経言気独行於五蔵、不営於六府者”といった記し方をしているだけとし、
答えの中で全体的な見方をとるようにと指摘している。
<参考文献>
『難経鉄鑑』 たにぐち書店
『難経解説』 東洋学術出版社
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『臓腑経絡学』 アルテミシア
『基礎中医学』 燎原書店
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。