どうも、新川です。

先日、名古屋へあてもなく立ち寄った際、
南極観測船『ふじ』を見学してきました。
1985年から名古屋港の埠頭に係留されているようですが、
いざ中に入ってみると、
当時の雰囲気そのままに保存されております。
そのためか、精巧な等身大の人形が各所に展示されており、
見学する人のほとんどが驚いておりました(笑)

南極観測船『ふじ』乗組員
南極観測船『ふじ』乗組員

調理器具なども、
当時のものが残っており、
パンの発酵器があったのには驚きでした。
過酷な任務の中で、
食事が数少ない休息の時間だったのではないでしょうか。

さて今回は、
痿論篇についてです。


今回は、痿論篇について綴って参ります。
本来ならここにまとめてある以上の内容がありますが、
なるべく分かりやすくするため、
一部を抜粋して表現させて頂いております。


【痿論篇 四十四】

「痿」とは肢体が萎弱し、各種身体機能が低下した状態を指す。

「痿証」とは、
肢体の筋肉が弛緩・弱化し、
病の進行とともに萎縮する病証を指す。

臨床症状として、
下肢の脱力感、手足の弱化、
皮膚・筋肉が痺れて感覚がなくなり、
皮膚は乾燥し光沢がなくなっていく。
重篤化すると、
手に物を持てず、足は身体を支えることができなくなり、
肘・腕・膝・足などの関節は脱臼したかのように力が入らなくなる。
続いて、筋肉は萎縮し、意識的にコントロールすることができなくなる・・・


黄帝が問う。
「五蔵はすべて人に痿病を起こさせるが、
これはどのような道理によるものか。」
岐伯が答える。
「肺は全身の皮毛を管理し、
心は全身の血脈を管理し、
肝は全身の筋膜を管理し、
脾は全身の肌肉を管理し、
腎は全身の骨髄を管理しています。

それゆえ肺蔵が熱を受けると、
津液が消耗し、肺葉が枯れ衰え、
皮毛も虚弱であぶない状態となり、
熱気が久しく去らないと※1痿躄、つまりあしなえの病となります。」
※1痿躄(いへき)
→「躄」とは、下肢が弱化して、歩行できない状態をいう。

黄帝がいう。
「痿症はどのようにして起こるのか。」
岐伯がいう。
肺は各蔵の長であり、また心蔵の蓋です。
失望するような事情があったり、
要求がかなえられなかったりしますと、
肺気が障害されて、病変が発生し、そのために肺が熱せられて肺葉が焦げます。

五蔵はすべて肺が熱して肺葉が焦げることによって
痿躄を生ずるというのは、この道理をいったものです。

悲哀が甚だしいと、心包絡が損傷され、心気が上下に通じなくなり、
陽気が内部で妄動し、病が発すると血が迫って心包の下が崩れ、
そのためにしばしば小便出血が見られます。
ですから『本病』には『大きな経脈が空虚になると、肌痺が起こり、最後には肺痿となる』
と書いてあるのです。

絶えず妄想をたくましくし、しかも思い通りにはならないで、
外では淫らな考えをあふれさせ、内では房事が過ぎますと、
宗筋が弛緩し、筋痿となったり、遺精や白帯の病となります。
それゆえ『下経』では、『筋痿は肝病によって発生し、房事過度による精気の消耗による』
と述べているのです。

水中の仕事に従事している人のように、普段から湿邪を感受していると、水湿が体内に留まります。
また湿地に居住していると、肌肉に湿邪が浸潤し、麻痺して肉痿となります。
それゆえ『下経』では『肉痿は久しく湿地に居住することによって起こる』
と述べているのです。

長距離を歩いて疲労し、しかも暑い季節ですと、のどが渇きます。
のどが渇くと陽気が内で盛んとなって熱気が内攻し、腎蔵に侵入します。
腎蔵は水に属する蔵ですが、いま水が火熱をおさえることができなくなれば、
骨は枯れて骨髄も空虚となり、ついには両足が身体を支持することもできなくなり、
病が発して骨痿となります。
それゆえ『下経』に『骨痿は大熱によって起こる』と述べているのです。」

黄帝がいう。
「五痿はどのようにして鑑別するのか。」
岐伯がいう。
「・肺蔵に熱があるものは、顔色が白くて毛髪が傷んでおります。
・心蔵に熱のあるものは、顔色が赤くて脈絡が充満しています。
・肝蔵に熱があるものは、顔色が青くて爪甲が枯燥しています。
・脾蔵に熱があるものは、顔色が黄色で肌肉が蠕動します。
・腎蔵に熱があるものは、顔色が黒くて歯牙が枯れてぐらぐらしています。」

黄帝がいう。
「あなたが述べた痿症は、
経を分けて治すことができるようであるが、
医論には『痿症を治すには、ただ陽明経を取るべきである。』
と書いてある。
これはどういうわけであろうか。」
岐伯がいう。
陽明経は五蔵六府を営養する源泉であって、宗筋を滋潤営養することができるものです。
宗筋は骨節を束ね関節を滑らかにすることを主るものです。
衝脈は十二経脈の源泉であって、筋肉や皮膚に滲透して灌漑し、
陽明経と宗筋で会合しています。
すべての陰経と陽経は宗筋に会合し、
さらに気街で再び会合しています。
そして陽明経はすべての経脈を統率して、帯脈に連属し、
督脈に連絡しているのです。
それゆえ陽明経脈が弱りますと、
宗筋が弛緩し、帯脈も引っぱることができなくなり、
両足が萎えて歩くことができなくなるのです。

黄帝がいう。
「結局どのように治療したらよいのか。」
岐伯がいう。
「滎穴を補益し、兪穴を通利するような方法を用いて、
虚実を調整し、その順逆を調和するようにします。
筋脈骨肉のいずれも、それぞれ四季ごとに〔人気が宿って〕
五蔵が盛んとなる月を選んで治療を進めれば、
病は必ずよくなるものです。」
黄帝がいう。
「よくわかった。」


黄帝問曰、五蔵使人痿、何也。
岐伯対曰、肺主身之皮毛、心主身之血脈、肝主身之筋膜、脾主身之肌肉、腎主身之骨髄。
故肺熱葉焦、則皮毛虚弱急薄。著則生痿躄也。
心気熱、則下脈厥而上、上則下脈虚。虚則生脈痿、枢折挈脛縦而不任地也。
肝気熱、則胆泄口苦、筋膜乾。筋膜乾、則筋急而攣、発為筋痿。
脾気熱、則胃乾而渇、肌肉不仁、発為肉痿。腎気熱、則腰脊不挙、骨枯而髄減、発為骨痿。

帝曰、何以得之。
岐伯曰、肺者、蔵之長也。為心之蓋也。有所失亡、所求不得、則発肺鳴、鳴則肺熱葉焦。
故曰、五蔵因肺熱葉焦、発為痿躄、此之謂也。悲哀太甚、則胞絡絶。胞絡絶、則陽気内動、発則心下崩、数溲血也。
故本病曰、大経空虚、発為肌痺、伝為脈痿。思想無窮、所願不得、意淫於外、入房太甚、宗筋弛縱、発為筋痿、及為白淫。
故下経曰、筋痿者、生於肝、使内也。有漸於湿、以水為事、若有所留、居処相湿、肌肉濡漬、痺而不仁、発為肉痿。
故下経曰、肉痿者、得之湿地也。有所遠行労倦、逢大熱而渇、渇則陽気内伐。内伐則熱舍於腎、腎者水蔵也。
今水不勝火、則骨枯而髄虚、故足不任身、発為骨痿。故下経曰、骨痿者、生於大熱也。

帝曰、何以別之。
岐伯曰、肺熱者、色白而毛敗。心熱者、色赤而絡脈溢。
肝熱者、色蒼而爪枯。脾熱者、色黄而肉蠕動。腎熱者、色黒而歯槁。

帝曰、如夫子言可矣。論言治痿者独取陽明、何也。
岐伯曰、陽明者、五蔵六府之海、主閏宗筋。宗筋主束骨而利機関也。
衝脈者、経脈之海也。主滲潅谿谷、与陽明合於宗筋。陰陽揔宗筋之会、会於気街。而陽明為之長。皆属於帯脈、而絡於督脈。
故陽明虚、則宗筋縦、帯脈不引。故足痿不用也。

帝曰、治之奈何。
岐伯曰、各補其滎、而通其兪、調其虚実、和其逆順。筋脈骨肉、各以其時受月、則病已矣。
帝曰、善。


参考文献:

『黄帝内経素問 中巻—現代語訳』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『臓腑経絡学』 アルテミシア
『素問ハンドブック』 医道の日本社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

新川

2 コメント

  1. こんにちは。

    昨年、名古屋に行った際「ふじ」の前まで行ったのですが、
    入場時間に間に合わず、乗れませんでした。(涙)

    名古屋城へ行った後、
    昼食に名古屋名物「ひつまぶし」を食べに、ある有名店に向かったのですが、
    予想以上に混んでいて、食べ終えて店を出るまで4時間もかかってしまいました。

    その後、「ふじ」が係留されている港に急いで行ったのですが、
    残念ながら間に合いませんでした。
    時間の段取りが悪すぎました・・・。(>_<)

    新川先生の記事を読ませて頂いたら、
    すごくおもしろそうなので自分の目で見たくなりました。

    今度は時間に余裕を持って行き、
    少しだけ、ドラマ『南極大陸』の気分に浸ってきたいと思います。(*^_^*)

    • こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      「ひつまぶし」屋さんの混雑は凄まじいですね。
      私も以前、某有名店に伺いましたが、
      平日にも関わらず、大混雑しておりました。
      しかし、店員さんの動きが素晴らしく、
      思ったより待ち時間を感じませんでした。

      名古屋には、
      美味しいもの、観光名所がいっぱいありますので、
      なかなか計画通りにはいきにくいかもしれませんよ(笑)

      また機会があれば、
      南極観測船「ふじ」、
      是非立ち寄って見て下さい☆

      新川

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